花日和 Hana-biyori

感じない人の感情を書くこと

遠方に一人で暮らす母は、「ニトリには売っていない」ような寝心地のよいベッドを購入し、次にソファーを買うと言っている。しかしその前に、友人の紹介で40万円もする「太陽光で足を温めて治癒する装置」とやらを買いたいと言う。足が治るなら何でもするという母の弱みにつけ込んだ仕業としか思えず、今度ばかりは何とか阻止したいところだ。

***

『アーモンド』(ソン・ウォンピョン作/矢島暁子 訳/祥伝社)は、アレキシサイミア、いわゆる「失感情症」の少年の話。原注によれば、「1970年に初めて報告された情緒的障害だ」という。

「児童期に情緒発達の段階をきちんと経ることができなかったり、深刻なトラウマにを負った場合、あるいは先天的に扁桃体が小さい場合に発生すると知られている。」
「この物語では、医学的知見に基づき、作家の想像力も加味してアレキシサイミアを描いている。」
とのことだ。

”人としての感情がわからない人”の視点で描かれているので、作家に想像力があってもそれを正確に(見えるように)描き出すのはたいそう難しいだろう、と思いながら読んでいる。

主人公の少年は、生まれつき生き辛さを抱えているのに、その人生には遥か上をいく過酷なことが降りかかる。その降りかかりに対する少年の対応・情緒は、しんとしているけれど、何も感じていないわけじゃない。残念だったり痛かったり困ったり、ということは感じているのだ。たぶん。

しかしもしかすると、私の勝手な感応なんだろうか、てなことも思ったりする。さじ加減は、やっぱり難しそう。
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