なので、平野啓一郎の『本の読み方〜スロー・リーディングの実践』(PHP文芸文庫)を読んで救われたような気持ちになりました。
世に言う「速読術」を思いっきり否定していて、作家の立場からもゆっくり、情感やテクニカルな部分も味わって読むことを説いています。
速読の本は私も一冊読んだことがありますが、確かにビジネス書や実用書ならともかく、小説や物語はそんなふうにして読めないと諦めていました。むしろ速読したらもったいないですね。
速読はいわゆる「流し見」であり、時間をかけて作品を紡ぎ出した作家の立場からすると冗談じゃないでしょう。もちろん、早く読んでちゃんと味わえる人もいると思いますが。
この本でいちばん面白く読んだのは、第3部の「古今のテキストを読む」でした。第1部はアンチ速読とゆっくり読むことの意味やメリット、第2部ではどう読むべきかの具体的な指南、第3部はそれらを踏まえて実際の文学作品を引用し読み解くというもの。
自殺幇助を扱った『高瀬舟』の読み解きで知ったことを、いま読んでいる短編集の『レンブラントの帽子』に当てはめて再読したら凄く分かることが色々出てきて倍楽しめた気がします。
ほかにも『こころ』の現代にも通じる苦悩、『伊豆の踊り子』では川端康成も文章間違えていた(結果的には悪い表現ではないが)部分があると自分で反省していたと知り意外でした。
また『金閣寺』『蛇にピアス』、自著である『葬送』などに関する読み方解説も勉強になった気がします。
この本でいちばん面白く読んだのは、第3部の「古今のテキストを読む」でした。第1部はアンチ速読とゆっくり読むことの意味やメリット、第2部ではどう読むべきかの具体的な指南、第3部はそれらを踏まえて実際の文学作品を引用し読み解くというもの。
自殺幇助を扱った『高瀬舟』の読み解きで知ったことを、いま読んでいる短編集の『レンブラントの帽子』に当てはめて再読したら凄く分かることが色々出てきて倍楽しめた気がします。
ほかにも『こころ』の現代にも通じる苦悩、『伊豆の踊り子』では川端康成も文章間違えていた(結果的には悪い表現ではないが)部分があると自分で反省していたと知り意外でした。
また『金閣寺』『蛇にピアス』、自著である『葬送』などに関する読み方解説も勉強になった気がします。
「印象的な比喩というのは重層的である」というのも初めて知り良かったです。
さいしょ意味が分からなかったのですが、比喩は単一の例えよりも、全体を通して貫かれるイメージを具体的なものを用いることによって「ただの散文ではないもの」になるといったことで興味深かったです。
確かにこれを意識して読むと『葬送』はより絢爛な感じがするような。そしてまさに全編通して比喩であろうカミュの『橋』の解説もありました。
作家の立場だからこその技術的な作品の構築方法を教えられた気がします。諸々読んで良かった一冊でした。