花日和 Hana-biyori

ギリシア神話はツッコミどころ満載

地域文庫の読書会のため、『ギリシア神話』(石井桃子編・訳/のら書店)を読むことになりました。色々なお話の原典や語源になっていることが改めてわかり、あらすじと感想をメモしておきたくなりました。

***

「プロメテウスの火」

プロメテウスは巨人であるタイタン族のひとり。だが一族なかでも賢く、神々の父ゼウスと共に争い好きのタイタン族たちと戦い、その力を封じる。プロメテウスは大地の土と水から人間をつくり、ゼウスが愚かな人間を「この世から根絶やしにしてしまおう」と言ったとき懇願してやめさせ、家を作るなどの知恵や火(ゼウスから盗んだ火の花)を与えて他の動物より強くさせた。

それがゼウスの逆鱗に触れ、コーカサス山脈の大岩に鎖で繋がれる。何百年ものあいだ太陽に焼かれ、ハゲタカに肝臓を引き裂かれ食われるが、肝臓はまた新しくできるので苦しみ続けた。しかしゼウスの王座が危うくなったとき秘策を教えたため、英雄ヘラクレスが差し向けられハゲタカは殺され鎖が絶ち切られ、プロメテウスはふたたび自由の身となる。

≪感想≫
人間は愚かで悪いことをするものたちなので、「この世から、根だやしにしてしまおう」は、神は何をやってもいいんだという典型のお言葉で驚いた。ハゲタカは別に殺さんでも良いだろと。ハゲタカにとっては自動的に餌が生成されてラッキーみたいなもんだ。もしハゲタカが生きていたら、あとでプロメテウスはハゲタカに復讐しただろうか。

神よりも賢者ぶりが目立ち人間の味方として描かれるプロメテウスは、ある意味(人間にとって)一番神っぽい。しかしこのかたも火を盗んでいるから大概だ。

――――

「パンドラの箱」

この世に「苦しみ」をもたらしたといわれる「パンドラの箱」は、「パンドラが開けちゃった箱」のことだとわかった。

プロメテウスは火を盗んだことで神の怒りにふれることが分かっていたため、「神からの贈り物は受け取ってはならない」と弟エピメテウスに注意してから遠い旅に出た。残されたエピメテウスは神からパンドラという美しい少女を贈られ、受け取ってしまう。パンドラと楽しく暮らしたエピメテウスは後日、さらに神から「けっして開けてはならない箱」を受け取る。エピメテウスの留守中に、パンドラが箱をほんの少し開けてしまい、羽の生えた生き物が飛び出し、人間は病気や老いや争いなど、この世の苦しみを味わうようになる。

この辺り、イブのリンゴのように「女が災いをもたらす元凶」と言いたい勢力に利用されてきた面があるのではと思ってしまった。でも、パンドラの箱に残っていた「希望」をこの世に出したのもパンドラだった。このくだりは知らなかったので、世に流通しやすいのはホントにネガティブな情報だけねえと思った次第。

―――

「デューカリオンとピュラ」

神が人間を根絶やしにしようと大洪水を起こし、この世をリセットしたとき、いい人たちだったので二人を残した。二人が何かのお告げにしたがって神殿に後ろ向きでに石を投げると人間に変わっていた。こうして人間がまた、地上に住むようになった。

≪感想≫
人間をリセットするときに他の動物たちもだいぶ犠牲になっていたようだけどそれはいいのか。

――――――

「アポロンとダフネ」

“アポロンのかんむり”は、月桂樹の冠のことらしい。

小さな愛の神エロスは、大蛇退治後でご機嫌な太陽の神アポロンに小さな矢をからかわれ、あるいたずらをする。川の神ペネイオスの娘で水の精ダフネに鉛の矢を、アポロンに金の矢を射て、アポロンがダフネを好きになるよう仕向けたのだった。しかしダフネは得体の知れない恐れを抱き、アポロンの呼び掛けに答えず父に助けを求めると、父はダフネを木に変える。アポロンはこの木を大事にして、木の葉で作った冠をいつもかぶっていた。この木は今でもギリシャにたくさんあって、人々は「アポロンのかんむり」と呼んでいるという。

≪感想≫
先に「エロスとプシュケ」を読んでしまったので、エロスがいたずらっ子としてだけ出てくるのが不思議。しかしエロスとはそういうものなのかもしれん。それにしても、川の神親子のメンタルがよくわからない。恋情より恐れで、助けてと言われたら木に変えるってなんやねんと。もともと水の精なので木でも構わないのかもしれないが、展開が雑過ぎないか。娘をアポロンのものにするくらいなら木にしちゃったほうがいいということだろうか。

これは後で調べたら、ダフネに射た鉛の矢は相手を嫌うものだったらしい。「なんだかわからないおそれ」みたいに書いてあったので分かりづらかった。木にされたのはダフネが頼んだからで、父の意志よりダフネの意志が強かったことが納得いった。しかしそもそも全てエロスのいたずらであり、一番の被害者はダフネではなかろうか。アポロンと恋仲になれる可能性もあったのに木になっちゃうんだもんな。

―――

「アポロンとヘルメス」

ゼウスとマイアのあいだに生まれたヘルメスは、まだ赤ん坊ながら亀の甲羅で竪琴をつくる。ある日ヘルメスは兄アポロンの牧場から50頭の雌牛を盗み、兄から問い詰められるがしらを切る。弟を裁いてもらうため二人でゼウスのもとを訪れるが、ヘルメスがしらばっくれながら竪琴を弾くと、あまりの音色の美しさに兄はヘルメスを許す。喜んだヘルメスは兄に竪琴を贈り、兄は代わりにカドゥケウス(眠りと夢、富と幸せを支配する神の杖)を贈り、牛飼いの役目を弟に授ける。ヘルメスは牛たちを牧場にもどし、仲直りした兄弟は仲の良い友だちになったという。

≪感想≫
何でいきなり牛を50頭も盗んだのよ、と疑問しかない。ヘルメスは犯人がばれないように隠蔽工作していたものの、目撃者はいるしすぐばれているので兄が来るのは想定内だったのでは。むしろわざと兄の気を引き仲良し兄弟になりたかったんでは?と、結末をみると思ってしまう。あと、神は美人とか美しい音色とか、美しいものに弱いらしい。
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