花日和 Hana-biyori

泣血哀慟して作る歌

最近はじめて読んだので覚えておきたいなと思ったのは、

”泣血哀慟(きゅうけつあいどう)して”

ということばです。血の涙を流すような激しい慟哭、悲哀を感じます。まったくもって盛大に悲しんでいますね。

「はじめての万葉集」(あすなろ書房)のなかにあったもので、柿本人麻呂が妻を亡くしたときに作ったという歌の詞書(ことばがき※)の一文です。本では「~妻死にし後に、泣血哀慟(きゅうけつあいどう)して作る歌」とあります。
※詞書…そのうたにまつわる事情や、どのような状況でうたわれたものか、説明したもの。

ちなみにその短歌はこちら。

「秋山の 黄葉を茂み 惑ひぬる 妹を求めむ 山道知らずも」
(あきやまの もみじをしげみ まどいぬる いもをもとめん やまぢしらずも)

【意訳】
〈黄葉の山に迷い込んでしまったように、(亡くなってしまった)妻をさがそうとしても、秋山の黄葉がたくさんちり積もっているので、道がわからない。〉

やっぱり、妻をなくした男の困惑と、ひたひたとした哀しみが伝わってきます。

実は奈良に2人の妻がいたという人麻呂ですが、そのうちの一人が亡くなったときに作った歌だそうです。この妻はあまり公にできないほうの妻だったらしく、なかなか会えない相手だけに、「血の涙を流すほどに、激しい悲しみにくれたという意でしょうか」と本では解説しています。

ほんとうに、前後不覚の哀しみがにじみ出ている言葉で、妙に感心してしまいました。

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