たからもの 作・絵:ユリ・シュルヴィッツ / 訳:安藤 紀子出版社:偕成社 |
〈あらすじ〉
アイザックという貧しい男が、「都へゆき、宮殿の橋のしたで、たからものをさがしなさい」という夢のお告げに従って都へ旅する。宮殿で警護の隊長に事情を話すと、「私も夢を信じるなら、アイザックという男の家のかまどのしたで宝物をさがすだろうな」と笑われた。ふたたび家にもどり、かまどの下を掘ってみると、はたして宝物が現れた。感謝をこめて建てた"祈りの家"の壁には「ちかくにあるものをみつけるために、とおくまでたびをしなければならないこともある」と刻み付け、隊長にはまたとないルビーを贈るのだった。
〈感想〉
語り口は淡々としているのに、いつのまにか引き込まれて妙な面白さを感じた。
善良だが貧しいおとこを、神様が試した一件、という感じ。
男は三度目のお告げに従って遠い都に向かう。向かう途中の苦労などは文章では一切触れていないが、森を抜け、山をこえ、おおかたを歩いたのだから大変な労力だ。そこまでして都についたのに、男は警護を押しのけてまでたからものを探しはしない。しかしそれで良かったのだと後々気づく。
夢のおつげは「さがしなさい」と言っているだけだ。どこを掘れだの指示はしていない。無理に警護を押しのけようとすれば、隊長に声をかけられる前につまみだされてお終いだったはず。
それに、警護の隊長に笑われてふてくされて諦めたなら、自分のうちに戻っても何もしなかっただろう。しかし、隊長に「アイザック」と名乗ったわけではないとしたら、これこそ!と再び信ずるに足る情報を得たということになる。
アイザックの心が逡巡するところは一切書かず、淡々と「こうした」と書いているところがいいんだと思う。盲信していたのか、半信半疑だったのか読み手にはわからないところが、この先どうなるんだろう?と引き込ませる技なんじゃないだろうか。
最後にアイザックがちゃんと教会を作ってお礼をして、幸せにくらしました、というのも、この男の善良なことが良く分かり、正直者が信じて報われた話になっている。
息子は自分で読んだと言っていたけれど、そんなに気に入った様子ではなかった。
・その他借りた本
めっちゃくちゃのおおさわぎ 作:コルネイ・チュコフスキー / 絵:フランチェスカ・ヤールブソヴァ / 訳:田中 潔出版社:偕成社 |
これは、息子が自分から読んでいて、楽しそうだったけど一度読めば十分だったみたい。
ほんとうに、めっちゃくっちゃのおおさわぎの内容だった。