花日和 Hana-biyori

脳内ポイズンベリー

「脳内ポイズンベリー」の映画CMが面白そうだったので、原作マンガを1巻無料お試し(電子版)で読んだら、面白すぎて2~5巻購入してしまいました。(5巻完結)

30歳になったばかりの女性、櫻井いちこの頭の中で繰り広げられる「脳内会議」が面白さの要です。ぐるぐる考えすぎる癖のある人はもれなく共感するんじゃないかなー。
人間の葛藤を描くのに、「善と悪」という単純な分け方じゃなく、「理性(議長)」「記憶(記録係)」「ネガティブ」「ポジティブ」「瞬間の感情」という5つの思考が分かりやすいキャラで擬人化されて、吉田だの池田だの、ちゃんと名前まであります。彼らが繰り広げる脳内会議は、遭遇する展開によってそれぞれの立場の優劣に波があり、会話も流れもテンポが良くて、長いセリフもどんどん読まされてしまいました。

そして「記憶」は、しばしば自分で勝手に修正するもので、人間同士の誤解や分からなさ加減がストーリーを動かしていて、そのたびに脳内会議がワーワー紛糾するのが面白くて、おなか抱えて笑ってしまいました。特に1巻は笑った。1巻で私は、いちこがアラサーを負い目にしすぎて話をしないのがめんどくさいヤツだなーとは思ったのですが、巻が進むごとに共感するようにはなりました。自分で勝手に会議して結論だすとかね、ちょっとおかしいけど、脳内会議ありきの話なので。

人間いろんな感情があって、でも多重人格というわけじゃなく、一時の感情は若いアーティストな彼を「大好き!」と騒ぐけど、相手の都合に振り回されるのを不快に思う意識もあるし、傷つきたくなくて「勘違いするな!」と自分を戒めるネガティブさや勘違いの思いやりとか、すべてが同じタイミングで繰り出されているんだわと改めて気付かされました。
あと、ふつう嫌な思い出のことをトラウマとか心の傷とか言うけれど、ここでは「記憶」の記録帳につけられた「暗黒付箋」と言われていて面白かったです。

恋愛の展開自体は、わざとありがちなものにしているんだと思う。若い彼と大人の編集者との間で揺れる、それは特にいちこがビッチというワケじゃなくて、誰でもそういう展開になったら迷いは生じるよなあと。どっちがいい人悪い人という決めつけもなくて、いちこ自体もバリバリキャリアをとるほうでもなく、結婚できればしたほうが良くて、だんなさんに料理を作るのが好きな女性だったりもする。でも仕事だってプライド持ってやっている。そういう人の方が多いのじゃないかと思います。分かりやすいキャラを出しつつ人として安易に型にハメていないのも、読みやすさの一因だと思いました。

作者の水城せとなさんの毎巻のあとがきもよかった。恋愛ものというより「脳内会議」によって描こうとしていたことは「人間というもの」「自分というもの」「他者とのつながり」なんだなあと感じました。
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