花日和 Hana-biyori

怒りをコントロール

『「高ストレス社員ゼロ」の職場をつくる本』石井 香里 著/カナリアコミュニケーションズ(発行:2016.01.10)


50人以上を雇用する会社に義務化された「ストレスチェック」について学ぶ本で、会社の総務・人事などの管理部門の人が読む教科書的な本…というだけかと思いましたが、「怒り」をコントロールするという「アンガーマネジメント」の部分が目からウロコの面白さでした。

最近「~は、こうすべき!」みたいな論争がしょっちゅう巻き起こっていて、世の中の人がやけに怒って何かを批判してばっかりいるなあと思っていましたが、そういうワケだったのか!と分かりました。

アンガーマネジメントとは

「怒らないようにすることではなく、怒りの感情をコントロールするための心理教育・トレーニング。怒る必要のないことは怒らないようにし、怒る必要があることは相手や場を考えて上手に怒るようにすること。そして人間関係を円滑に、ストレスない職場を実現しようというものです。

アンガーマネジメントが注目される理由

これがけっこう納得したのですが、背景として言えることは「価値観の多様化」だとの指摘です。

「企業においても就業ニーズや雇用形態に対する考え方、勤労観や昇進思考などが多様化し始めている。終身雇用制が当たり前でなくなり、会社とはこうあるべき、仕事とはこういうもの、部下は上司の言うことに従うべき、男は仕事をするもの、というような、かつては共通の価値観であったものが通用しなくなりました。」

とした上で、

自由な考え方、人それぞれの生き方が受け入れられるようになった時代だからこそ、自分と他人との価値観の違いの狭間でイライラしてしまうことが増えるのです。


このイライラを職場で爆発させると、職場の雰囲気悪化、周囲の信頼を失いパワハラで訴えられる、失職するなどの事態に陥ります。うーん怖いですね。本人がそこまで行かなくても、生産性は落ちるし周囲をウツにしたり、良いことはありません。

自分が信じていることは、他人にとっても真実とは限らない

最近、若者が電車の優先席を高齢者に譲らず、文句を言ってきた高齢者の男性をスマホで撮って動画をネットにアップした事件がありました。この若者は、以前席を譲ろうとしたら「年寄り扱いするな」と怒られて、親切なことをした自分がバカをみた、だからもう二度と譲らないとして、居丈高に怒ってくる高齢者を嘲笑うように動画を撮っていました。

この若者は「老人は席を譲られたら感謝して座るべき」と思っているし、高齢者は「優先席では年寄りに席を譲るべき」と思っています。どちらも正しいです。ネットではどっちが悪いかという論争が起きていました。

この本も、例として「時間は守るべき」という概念が皆にあるものの、「5分前、10分前に席についているべき」「時間ちょうどに部屋にいればいい」「社内会議だから少しくらい遅れてもいい」など、人によって価値観が変わることを挙げていました。どれを絶対正しいと言い切るのは、その人の価値観によって変わってきてしまう。相手が自分の価値観と違うことをする、理想と現実にギャップがあると、人は怒りの感情が湧き出てしまうそうです。

人によって異なる「べき」に、正解・不正解はありません。どんな「べき」も本人にとっては正しいのです。「こうするのが当たり前でしょ」「普通こうだよね」と自分が信じていることは、他人にとっても真実とは限らないのです。


という部分が、とても納得してしまうところでした。私はめったに怒らないほう(表に出さないほう)ですが、簡単に怒ってキレてしまう人は、この、他人の価値観が自分と違うことを受け入れられない、ギャップに耐えられない度合いが高いんだろうなと思いました。
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