花日和 Hana-biyori

永田カビさんのマンガ2冊


「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」永田カビ著/小学館
 今年の7月に読んで、感想を書きそびれていました。
大学を中退しうつ病になり、28年間交際経験がないという著者のノンフィクション漫画です。かわいい絵と表現力豊かな描写で自己分析し、親への複雑な思いとレズ風俗に行くことで親からの自立を図る心の内を事細かく描いています。
 何度も自傷行為を繰り返す彼女ですが、どうせ死ぬならとことんまでやってやる!とふっ切るあたりなど力強く、妙なテンションもあって重い内容ながら楽しく読めました。


「1人交換日記」永田カビ著/小学館
今回はこちらを読みました。前回からの続きでカビさんの生活が綴られています。主なできごとは下記の通り。(※ネタばれありです)

A)人生初、一人暮らしを計画するも、実現するまでの長い道のり
B)「今まで誰にも愛されていない」という寂しさに耐えかねて再びレズ風俗利用
C)初めて本がでたときの家族や親戚の反応に意気消沈…というより愕然とし、「自分は愛されていない。期待しすぎてた」と感じる。母親に「これまでごめん、会って話そう」と言われるも拒否。
D)モラハラ的な父親の存在が描かれる。母親も被害者だと考える。
E)初めて恋人候補が現れる…けれど応えられないことに戸惑う

私の思い出し主観でかなり丸めてしまってます。ニュアンスはかなり違うかもしれません。A、Bはともかく、Cはかなり違和感がありました。どんなことがあっても私のすべてを受け入れて欲しいと願っていた著者に対して、家族は戸惑いと共に冷静なアドバイスを発しますが、これは彼女が欲しかった答えではないのです。彼女はとにかく実績ゼロだった自分が本を出せたとを褒めて欲しかった。それは分かります。家族の評価を気にして生きてきた人なので。しかし内容が内容だけに家族は喜びよりも戸惑いのほうが大きい。その噛み合わない感じがもどかしかったし、せっかくお母さんが話そうと言ったのにムリに決まってるじゃんと激昂して終わりで、とても残念でした。親子のことは本人同志しかわからないし、まだ冷静に話せる状態じゃなかったんだろうなとは思いますが。「ネタとして、一応話してみた」というのでもいいから何を言うのか聞いてみて欲しかった。

その他、「幸せの定義」「自立とは」などの著者の考え方が示されますが、これもかなり違和感があり、心を病んでいる人の考え方だなあ…と感じてしまいました。

「幸せとは、他のあらゆる不幸から目を背けること」だから、お母さんには幸せになってほしいけど私の幸せのために母を見捨てて家を出る、という考えはとても傲慢です。全人類の幸せを担っている人なんていないし、母親は自立もしていない娘に自分の幸・不幸を決められたくないと思います。

それに、「自立とは、依存先がたくさんあって依存度を分散できること」という言い方は、まず他人との関係性をすべて「依存」という言葉で表しているのがおかしいなと。母親だけに頼ってちゃいけないということを説明したいだけの表現だったのでしょうが、根底から何かが違う…と違和感でした。

気づきの内容は三歩進んで二歩下がるみたいなことで、だから少しずつ成長していることも感じられはします。ともかく、自分の精神状態をマンガにして表す力があって、こっちはちゃんと引き込まれて読むわけなので大したものです。

ただ、ノンフィクションといってもだいぶ隠して書いていないこともありそうで(もちろん何を書くかは作者の自由)、そもそもどうして鬱や摂食障害になったかとか、子ども時代を具体的に振り返ってどうだったかなどを掘り下げる記述がありません。だからネットの評判は今回は割れています。「まともないい両親なのにひどい」という人も多い。一方で「毒親もの」という人もいて、読む人によって揺さぶられ方が違うようです。嫌な言い方だけど、この人が虐待や貧困などで苦しんだ過去があれば、もっと分かり易いのかも。いまの若者のデリケートさを思わずにはいられません。

この調子で現在のことを第三弾として描いても行き詰まりを感じそうなので、これから幼少期のことを描くのかなと勝手に予想しています。
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