花日和 Hana-biyori

『ソフィーの選択』

を読みました。
だいぶ以前に、テレビでこの映画の一場面だけ見て忘れられず、ずっと読んでみたいと思っていたので。
アウシュヴィッツに送られたソフィーは、到着してすぐに二人の子どものうち一人は助けてやるが一人はガス室行きだと告げられる。「選べません!」と泣き叫ぶが、選ばなければ二人とも殺すと言われて恐慌をきたしながらも10歳の長男を選び、下の女の子はガス室に消えた。絶対に選べないしこんなに恐ろしい選択は無い。これをほんの数秒のうちに決めなくてはならなかったソフィーの心情とはどんなものだったのか。

というのを読みたかったのだけど、残念ながらその辺のことはあまり詳しく書いていなかった。
この物語の語り手は、アメリカ南部出身の小説家志望の22歳の青年で、その彼の物語としても実に念入りに描かれているので、ソフィーのことだけ読みたいなあと思いながら彼の正直まだるっこしい話にもつきあわなくてはならなかった。彼も奴隷制にたいする後ろめたさを抱える南部人であるという側面があり、ムダ話というわけではないのだけど。
この青年は第二次世界大戦後、といっても世の中ほとんど戦争の傷が癒えて安定した経済を築きつつあるニューヨークに移り住み、同じ下宿に住む美しい年上のポーランド人女性と知り合う。この女性は長くナチスのユダヤ人強制収容所に収容されていた過去を持ち、同じ下宿の別の男性と恋人同士だった。この男性も含め3人親友になるのだが、色々問題が起こる中、ソフィーはこの青年にアウシュヴッツでの体験を語ってゆく。

私は今回初めて、ホロコーストでユダヤ人だけでなく、ポーランド人などの非ユダヤの人々も多く犠牲なっていた事知り、アウシュヴィッツは虐殺というだけでなく、ひとつの奴隷制社会だったことを改めて強く認識した。
そこで一定期間労使され死ぬ者と、最初から使えないと殺されるものに選別される。その選別は、ここの小説の中では酔っ払いの軍医の気まぐれによって行われていた。
使い捨て、という意味では虐殺ではないにせよ、「派遣切り」をはじめ現代の労働者も奴隷みたいなもんだなあとうっすら思い当たる。

いろいろ読むべきところが多い話だとは思うが、何しろこの青年の語り方がもったいつけていてくどくどしく、女の子と初体験失敗の話にもけっこううんざりした。わざとこういう文章にしてるんだろうなあと思うし、私がトシのせいで根気が無くなったんだろなという気もするけれど、ソフィーの話に絞った短編にしてくれたらなーと何度も思った。
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