花日和 Hana-biyori

旧優生保護法が伝えるもの

ETV特集 アンコール「私は産みたかった~旧優生保護法の下で~」を見て、けっこうな衝撃を受けてしまいました。(下記は自分的メモです。正確でないところもあるかと思うので、参考資料などにはしないでください)


昭和23年~平成8年(1948~1996)まで、旧優生保護法の下、知的障害者や身体障害者への強制不妊手術が行われました。その数、実に1万6000人。男性も3割いて、厳格な審査があったわけでもないといいます。

ある貧しい家庭に生まれた女性は、16歳の時何も告げられず地元の診療所へ連れていかれ、術後に何をされたか知ります。後遺症が残り、満足に仕事もできず、結婚はしたものの夫は去りました。どうしても子供が欲しかった女性は、養子をもらいます。子育てが一段落したころ、なぜこうなったのか調べ出し、国を訴えましたが、今のところ補償は受けられていません。

 * * *

背景には、戦後の食糧難があり、人口爆発を抑えるため行われたと初めて知りました。

法制定の議論のなかで「優秀な人が中絶をして、無自覚で低能な人間が増える恐れがある。逆淘汰が起きる」と、懸念されたそうです。それまで禁止されていた中絶を解禁する一方、「不良分子」を積極的につぶすよう働きかけが起きました。1950年代、年間1000件以上のペースで不妊手術が行われたそうです。

問題は、それを行った人たちが「良かれ」と思ってやってしまっていたこと。少なくとも、罪の意識はなかったといいます。当時、障害を抱えた子どもの家庭は国の補助もなく辛い状況に置かれていたことから、「障害児は不幸」という認識が広がっていました。国に強制されたというよりも、そうした「不幸要因」は、生まれないようにすることが最善と、普通の人たちが考えたのです。

いまやっと、被害者の方々が声を上げ始めましたが、国の補償はありません。当時は合法だったこと、証拠書類などは多くが破棄されているからです。

 * * *

19世紀の終わりから世界中でブームになった「優生学」は、劣った人間の遺伝子(とみなされたのは障害者や知的障害者)を淘汰し優秀な国民にしていく、国民の質を上げていくことを目指していました。

これはヒットラーが統治していたころのドイツで盛んに行われ、多くの障害者たちがガス室に送られる大量虐殺にまで発展しました。その数36万人。国が中止しても、医師や介護士が勝手に続けたといいます。やはり「障害は不幸」という思い込みの悲劇です。

しかしドイツでは、被害者が補償されていると同時に、収容所を残し、若者への教育も行われています。

ハダマー記念所のガブリエル所長は、
「当時の人たちも(中略)初めから『人権を無視する人』だったわけではないのです。
時代や政治が変わる中で、社会的弱者が“敵”とされると、突然その人たちを攻撃するようになってしまう。これは歴史の中でたびたび繰り返されてきました。だからこそ、社会の変化を注意深く見ていく必要があるのです。」

と語っていました。

いま、出生前診断の技術が発展してきて、出生前診断に長年携わってきた医師は危機感を抱いています。以前は、すでに障害のある子を持つ親がもう一人というとき選択することが多かったが、「最近では個々のカップルというより、社会が受けさせようとしている。よく分からないで検査を受ける人が多い。」そうです。

「障害があるということがどういうことか、よく分かっていない人が増えている」と危惧し、「障害そのものは不幸ではない。障害持ってるのが不幸だと言われることが不幸なんだと思いますね。」と話していました。障害だけでなく、あらゆる病気がそうなんだと思います。

 * * *

番組では、小児麻痺で車椅子の古市正代さんを紹介しています。25歳のときに結婚、3人の子を産み育てた古市さんは、「不幸かどうかは本人が決めることであって、他人が決めることではありません」とよく聞き取れない言い方で、でも力強く語っていました。障害があると胎児の段階で分かったら中絶して良いという法律の制定を、全力で反対運動して見送らせた人です。

この方のサイトを見ましたが、まあ素晴らしい経歴の持ち主で、芯の強い方だと思います。生きている以上、人権はその人にあり、誰が勝手に判断する権能を持っているものか、という主張を体現する人生をおくっていらっしゃる。もちろん支援する家族にも恵まれていました。

大事なのは、人々の意識なのです。これから高齢化社会でみんながある意味障がい者のようになっていくのに、「障害とその家族は不幸・何もできない・迷惑な存在」と決めつける意識が、深いところで濃くなっていくとしたら、恐ろしいことだなと思いました。
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