ささやかな就職応援記録

ありきたりなことを淡々と綴ります。誰かのささやかな参考になればと思い、書いてます。

リストカットした過去があるのですが…

2021-01-17 21:26:00 | こういうときどうする?
大前提として、リストカットした過去があっても就職できると思います。リストカットした過去があれば就職できないと実証する研究は皆無だと思います。

当記事では、「大学キャリアセンターのぶっちゃけ話 知的現場主義の就職活動」(沢田健太著、2011)の内容を引用、検討します。



大学キャリアセンター職員である著者が大学キャリアセンターの事情、大学生の就職活動に切り込む本書。類著がことごとくスルーしていることに切り込んでおり、私は就職活動に役立つ本として以前紹介させていただきました。

ただ、著者の中で支援方法が確立していないと思われる部分があり、当記事は当該部分をフォローすることを一つの目的とする記事です。

当記事では、3章構成とします。1章で上記本該当部分の引用検討、2章で著者を含む大学キャリアセンター職員への提言、3章でリストカットした過去のある大学生の方へのアドバイス、と続けます。
長い記事になりますが、ご容赦ください。

1 リストカットの跡がある学生に対する対応の検討

本書178頁で、学生の手首にリストカットの跡を見つけた場合の具体的対応が記されている。
しかし、「こうした学生は満たされない承認欲求に突き動かされてキャリアセンターを訪れるため、生産的な相談の場にはなりづらい。ぎくしゃくとしたやりとりが、一時間、二時間と続くという事態も覚悟せねばならない」(同書179頁)と記し、現実を吐露している。

以下、私の考えを箇条書きにして記します。

①承認欲求自体は自然な感情。当然私にも承認欲求はある。
②キャリアセンター職員が学生を承認することも重要だと思う。著者も具体的対応として「しばらくは聞き役、うなずき役に徹する」(同書178頁)と記していることから、学生を承認することの必要性は認識しているものと思われる。
③「生産的な相談の場にはなりづらい」としているが、「生産的」のハードルを高く設定しすぎではないかと思う。就職に直結する相談、提案を「生産的」として目標とすると、相談者も相談を受ける職員も苦しくなると思う。
少しばかり前向きな行動変容といった達成できそうな目標を設定し、相談の場を少しでも明るいものとした方がいいと思う。
④やりとりが「ぎくしゃくとした」ものとなる理由は判然としないが、職員側の原因として疑われる事情が一つある。リストカットの跡に気づいたにもかかわらず、リストカット(自殺未遂)について相談の俎上にのせていないのでぎくしゃくするのではないかと思う。
職員は、自殺を考えている(かもしれない)人と自殺について語ることは望ましくないと無意識に考えているのかもしれない。
しかし、そうした考えは相当疑わしいと思う。「自殺対策を推進するために 映画製作者と舞台・映像関係者に知ってもらいたい基礎知識」(WHO 訳 自殺総合対策推進センター 2020)によると、そうした考えは「迷信」であり、「隠し立てせずに自殺について語り合うことは、自殺関連行動を助長するのではなく、その人に自殺以外の選択肢や考え直す時間を与えることができる。その結果、自殺の防止につながる」としている(基礎知識11頁)。

2 キャリアセンター職員への提言
 1を参考にキャリアセンターへの提言を考えると、以下の通り。

学生の手首にリストカットの跡を見つけた場合、しばらく聞き役に徹し信頼関係を構築した辺りで体調について気遣うことがいいと思う(「少し元気なさそうだけど体調大丈夫?」といった感じ。)
「大丈夫です。」という答えが返ってきたら、表面上気にせず相談を続けていいと思う。目標設定でハードルを上げすぎないことは必要だと思うが。
場合によっては、誰かに話したいと思っていてリストカットについて告白することもありうると思われる。その場合は、リストカットについても相談の俎上に乗せ、自殺以外の選択肢を考えるきっかけを作るといいと思う。

3 大学生へのアドバイス
 リストカットに至る事情は色々かと思いますが、就職活動に関するアドバイスは基本他の学生の方と一緒です。強いて他に挙げるとすれば自分の体調(メンタル面含む)を気遣うことです。仕事が難しいくらいの体調でしたら、無理して就職活動を継続するのは得策ではないと思います。体調を回復させてからというのが良いと思います。
後、先にも記しましたが承認欲求は自然な感情なので、承認してくれる人を探すことはいいことだと思います。そういった人に元気づけてもらいながら就職活動を無理のない範囲で続けることが就職につながると思っています。

OB・OG訪問を発端とする犯罪・ハラスメントについて

2021-01-17 14:13:51 | 大学卒業予定者の就職活動とは
昨今、OB・OG訪問を発端とする犯罪、ハラスメントが報道されています。
個別の事件については、捜査機関による捜査中の事件もあり、コメントを控えます。
就職活動中の学生にとっては、心配な事項と思います。

事件の背景事情として、指摘したいことは2点あります。

まず、一般に、採用過程において企業採用担当者が大学卒業予定者より優越的地位にあることです。
(力関係が拮抗ないし逆転するのは、大学卒業予定者が企業が必要としている特殊技能を有していて、しかも何かしらで実務経験も積んでいるといった例外的な場合に限られると思います。)
次に、大学卒業予定者の採用活動が自由度が高いということです。企業は採用活動を前倒したり、色々と仕掛けているというのが現状だと思います。結果、大学卒業予定者から見て採用活動なのか、採用に直結しない広報活動なのか、採用に直結しない社会貢献活動(インターンシップを想定)なのか、境界が曖昧になり、全て採用活動のように見えるようになっていると思います。

以上2点の事情からOB・OG訪問を発端とする採用担当者やOB・OGの犯罪・ハラスメントが起こった際、大学卒業予定者は抵抗・拒絶が難しいのだと思います。


そもそもOB・OG訪問のニーズ(大学卒業予定者がOB・OG訪問で得たいもの、行いたいこと)は①自己PRの一環として自己の適性や能力をアピールする、企業情報を収集するといった就職に直結するもの、②社会人のマナー、社会人の生活を知りたい、就職活動何から始めたらよいか社会人の先輩から聞きたい、エントリーシートを添削してほしいといった就職に直結しない自己啓発の色彩を帯びているもの、の二種があると思います。

こうしたことを踏まえると、被害の事前防衛策としては、①のニーズを満たすためのOB・OG訪問と②のニーズを満たすためのOB・OG訪問をきっちりと分ける。そして、①のニーズを満たすためのOB・OG訪問は就職希望企業が整備した制度に乗っかって行う、②のニーズを満たすためのOB・OG訪問は信頼のできる知り合いの先輩に限定するといった使い分けをするのがいいと思います。
①のニーズを満たすためのOB・OG訪問は企業の指揮・監督下のもとで参加することでリスクを低減させる、②のニーズを満たすためのOB・OG訪問は信頼関係でリスクを低減させるというものです。

②のニーズを満たすためのOB・OG訪問をしたいと思うが、信頼できる知り合いの先輩が近くにいない場合、キャリアセンターでの相談などで代用するといいと思います。①②に分けると②のニーズを満たすためのOB・OG訪問は必ずしもOB・OGに聞く、話す必要はないと考えられるからです。