しやぼん玉息もろともにかがやくよ 杉山久子
魚の眼みなこちら向く寒さかな 同
三日月を栞としたるこの世かな 同
聖樹の灯人待つ人を照らしをり 同
ミサイルが来る風呂吹に箸の穴 同
ご夫君の黒田勝雄様よりご恵贈頂きました。生前のご厚情を思い出しては目頭が熱くなります。心より深くお礼申し上げます。
兜太待つ秩父往還まむし谷 黒田杏子
ゆく年のどの星となく慕はしく 同
春雷の那須野をわたりくるこだま 同
兜太詩語銀河しづかに溯り 同
音立てて天に到れる花篝 同
日が昇る枕元まで青田波 同
一ツ火のおほむらさきのいろの闇 同

一〇〇〇トンの水槽の前西行忌 岡田由季
自宅から土筆の範囲にて暮らす 同
虚空よりあらはれて雉ずつとゐる 同
県庁と噴水おなじ古さかな 同
祇園会の路地人を吐く人を吸ふ 同
自宅から土筆の範囲にて暮らす 同
虚空よりあらはれて雉ずつとゐる 同
県庁と噴水おなじ古さかな 同
祇園会の路地人を吐く人を吸ふ 同

面あげ耳澄ますなり花の谷 小川軽舟
夜が昼にのしかかるなり真葛谷 同
たつぷりと見し初夢の覚めて無し 同
光源は太陽一つ初景色 同
見つけたり鳶かも知れぬ鷹ひとつ 同
夜が昼にのしかかるなり真葛谷 同
たつぷりと見し初夢の覚めて無し 同
光源は太陽一つ初景色 同
見つけたり鳶かも知れぬ鷹ひとつ 同

蕾んではひらく空あり夏つばめ 恩田侑布子
宙ゆらぐ前に帰らん夏の闇 同
山茶花や天の眞名井へ散りやまず 同
生れたての雲かづきては瀧めぐり 同
蝙蝠にしはくちやの夜の始まりぬ 同
月光をすべり落ちさう湯舟ごと 同
凧糸をひく張りつめし空を引く 同
富士山頂色なき風の鳥居かな 同

青空のどこかが弛み梅香る 黛まどか
竹煮草いづくで憑きしひだる神 同
面より底ひの水の真澄かな 同
月光の浮かせてゐたる力石 同
滴れる山を重ねて高野山 同
ためらはず沈む夕日も秋水忌 同
日盛を座頭鯨の遠ざかる 中田美子
春眠の深きところに息をする 岡田由季
月上がるかすかに草の匂いして 小林かんな
凩やオリオンの股抜けてきし 仲田陽子
音楽やとほくにこほり見にゆけり 宮本香世乃
春の木が爛れて窓が開けてある 田島建一
逃水の向うが今の時刻かな 鴇田智哉
星のない土が耕されて眠る 福田若之