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現代俳句選抄

ご恵贈頂いた書誌から、五島高資が感銘した俳句などを紹介しています。

杉山久子・句集『栞』朔出版

2023-09-20 | 俳句

しやぼん玉息もろともにかがやくよ  杉山久子
魚の眼みなこちら向く寒さかな  同
三日月を栞としたるこの世かな  同
聖樹の灯人待つ人を照らしをり  同
ミサイルが来る風呂吹に箸の穴  同


黒田杏子・句集『八月』角川書店

2023-08-29 | 俳句
 ご夫君の黒田勝雄様よりご恵贈頂きました。生前のご厚情を思い出しては目頭が熱くなります。心より深くお礼申し上げます。
 
兜太待つ秩父往還まむし谷  黒田杏子
ゆく年のどの星となく慕はしく  同
春雷の那須野をわたりくるこだま  同
兜太詩語銀河しづかに溯り  同
音立てて天に到れる花篝  同
日が昇る枕元まで青田波  同
一ツ火のおほむらさきのいろの闇  同
 
 
 
 

仲 寒蟬・句集『全山落葉』ふらんす堂

2023-08-07 | 俳句

海底に沈む神殿月日貝  仲 寒蟬

がまの穂と答ふがまの穂かと問はれ  同

向日葵はおのが後ろの闇知らず  同

朝顔育て宇宙飛行士志望  同

名を付けてすぐに忘れて熱帯魚  同

峰雲の中に峰ある昏さかな  同

稲びかり猫の喧嘩に割つて入る  同

核弾頭ほどの筍いただきぬ  同

木枯に顔を置き忘れて来たり  同

鯉幟降ろせば太陽のにほひ  同

螢火や水音のして水見えず  同

凍滝の芯に月まで行く梯子  同

額の字を誰もが読めぬ敗戦日  同

瓢箪にくびれ作りし神を信ず  同


岡田由季・句集『中くらゐの町』ふらんす堂

2023-06-07 | 俳句
一〇〇〇トンの水槽の前西行忌  岡田由季
自宅から土筆の範囲にて暮らす  同
虚空よりあらはれて雉ずつとゐる  同
県庁と噴水おなじ古さかな  同
祇園会の路地人を吐く人を吸ふ  同


恩田侑布子・句集『はだかむし』角川書店

2022-11-27 | 俳句
蕾んではひらく空あり夏つばめ  恩田侑布子
宙ゆらぐ前に帰らん夏の闇  同
山茶花や天の眞名井へ散りやまず  同
生れたての雲かづきては瀧めぐり  同
蝙蝠にしはくちやの夜の始まりぬ  同
月光をすべり落ちさう湯舟ごと  同
凧糸をひく張りつめし空を引く  同
富士山頂色なき風の鳥居かな  同
 

黛まどか・句集『北落師門』文學の森

2022-10-06 | 俳句

青空のどこかが弛み梅香る  黛まどか

竹煮草いづくで憑きしひだる神  同

面より底ひの水の真澄かな  同

月光の浮かせてゐたる力石  同

滴れる山を重ねて高野山  同

ためらはず沈む夕日も秋水忌  同