怠惰なひな菊

漫画家・萩原玲二(はぎわられいじ)の怠惰なブログ(2006~2019)

映画監督 山中貞雄

2008-10-17 11:44:29 | 


『映画監督 山中貞雄』
加藤泰 (著)
出版社: キネマ旬報社

山中貞雄 没後70年・生誕100年記念
名著『映画監督 山中貞雄』復刻刊行!!

夭折した天才監督・山中貞雄が活躍した1930年代―。
日本映画黄金の青春時代を生き生きと描いた、
名匠・加藤泰の遺作ノンフィクション。

‥‥‥
長らく絶版状態で、プレミアのついた古書を購入すべきかずっと迷っていたので、この新装版のリイシューは率直にキネ旬GJ。
今月末、新文芸座で開催される加藤泰特集によせて、山根貞男さんと蓮実重彦先生が出版社にねじこんで圧をかけたのではないかと邪推。

加藤泰の文体のユニーク(!)なのには、やや困惑(笑)。
加藤泰は山中貞雄の姉の息子であり、つまり甥にあたり、肉親ならではの絶妙な距離感で“映画監督山中貞雄”を分析している。

しかし、千葉伸夫の『評伝山中貞雄』(平凡社)など、これらモノグラフィーを読むにつけ、現存する山中作品がけっしてその代表作ではないことを痛感させられて、サビシイ。
すなわち、

『丹下左膳余話・百萬両の壺』〔1935〕
『河内山宗俊』〔1936〕
『人情紙風船』〔1937〕

は、「パロディ」と「棚卸し」と「鬱だ死のう」(?)にすぎない。

無論、3作とも傑作中の傑作だが、もし『磯の源太・抱寝の長脇差』〔1932〕や『盤獄の一生』〔1933〕や『国定忠治』〔1935〕や『街の入墨者』〔1935〕などの“代表作”が残っていれば、どれだけ山中貞雄の天才に現代のわれわれは腰を抜かすものやら。

たとえば後世、宮崎駿のアニメーションが『紅の豚』〔1992〕と『もののけ姫』〔1997〕と『ハウルの動く城』〔2004〕の3作しか残存しないとしたら、それは宮崎作品の全貌を伝えるものではないと、同時代の誰だって頷くだろう。
そういうことであるのだからして。



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