コンピュータというやつは融通のきかないものである。模擬運転の教習が終わった時、「ATを最初に二時間予約して、そのあとマニュアル車を予約して下さい」と言われて、二階の予約カウンターに行った。コンピュータの前にはだれもいない。カードを差し込む。が、すぐ吐き出されてしまう。画面に「予約がされていません」と表示がでている。
うしろの方で若い女性の笑っている声が聞こえる。振り向くと女の子が口に手を当てて笑っている。日にちか時間をまちがえたと思っているらしい。他人がすべってころんだりすると思わず笑ってしまうことがあるが、当の本人には愉快なものではないんだな、でも、相手がうれしそうに笑っているから許されるか。こんなことがきっかけで恋がめばえないとも限らないからな、と思ってみる。
しばらくコンピュータを遠まきにして様子を見てみる。若い女性がきて、カードを入れている。長い髪の毛が肩までたれて、広がっている。途中からカールさせている。やや乾燥気味の淡い髪だ。スカートから膝小僧の後側が見えている。濃紺のミニスカートからくっきりとこぼれている輝きは目にまぶしかった。ジジッ、ジジッと音がして、スーパーのレジのような紙片が箱から出てきた。彼女はその紙片を受け取ると、その場を立ち去っていった。
女性といえば、ある時、私は二階のロビーから教習場の練習コースを走っている車を見ていた。自分の走る番がくるまでだいぶ時間があるのでロビーで待っているのだった。ロビーには大型テレビが置いてあって、いつでもついていた。
夜だった。連なって動いているヘッドライトがくるくるとまわっているのをぼんやりと見ていた。教習場が見渡せるように全面ガラス張りになっていた。私はそのすぐそばのクッションに腰かけた。へやの中は次の教習を待つ人たちでだんだんと混んできた。
私から一人分離れたところに若い女性がすわった。何色のスカートだったか忘れてしまった。しかし、そのミニスカートからはみだした小麦色のムチムチとした膝頭は忘れようにも忘れられなかった。窓ガラスが暗いのでだれの足でも暗くなるのだが、前面のガラスに映って、いやでも私の目に飛び込んできた。何か言いたそうにこちらを向いている。よくもまあ、務所帰りのような人相のおれのそばに平気ですわっているなあ、と私は感心して、顔を見てみたいのだが、あまりおどろかしてもいけないなと思ってみる。しきりにミニスカートの端を引っぱっているところをみると、やはり平気ではないらしい。
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