ぐるぐる・ぶらぶら

歌舞伎と映画と美術と読書の感想

【読書】世界を動かす聖者たち

2014-11-30 23:55:13 | 読書記録

クマリ、ダライ・ラマ、サイババなどよく知られた宗教的存在のみならず、
政治を行っているうちに聖性を帯びて聖者的な存在となったケースや、
聖者と思われた人が事実上その資格を減じたケースについて紹介。
その上で、そもそも聖性とは何かについて言及している。

いずれのケースも各人の聖性について、著者は極力主観を排した、事実と
思われる情報を選んで紹介している。配慮された語り口。

つくづく、聖性というのは、発信者たる聖者が存在するだけでは成立せず、
それを受け止める衆人の感覚をもって成立するものなのだと思った。
衆人の環境が限定的であればあるほど(つまり科学的でない状況の方が)、
聖者についての認識において、刷り込みが効く。
近代に至り、環境の限定性は薄まりつつある。そいうった中で聖性として
残るのは、真実の清廉さである。
現代的環境は、聖者でありつづけることを困難にする。ほんものの聖者しか
聖者を続けられない時代。

宗教的な状況について述べられているのだけれど、読みながら思い浮かぶ
のは企業経営者の姿であり、企業が生き残っていくための要件だった。

-----
世界を動かす聖者たち グローバル時代のカリスマ
井田 克征 著
平凡社 平凡社新書 2014
http://www.heibonsha.co.jp/book/b166546.html

(2014.11.20)


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【読書】ブレークポイント

2014-11-30 23:40:21 | 読書記録

アリの集合知。
脳とコンピュータネットワークの類似性。
※「コンピュータ」ではなく「ネットワーク」の方が重要。

過成長を抑止する機構を、生物は持っている。
その実行体は"ネットワーク"である。

生物学、脳科学、ウェブサービス産業、語り口は縦横無尽。
引用の広さを、巻末の参考文献リストが物語る。

過成長で止まるのは、生物の側に事情があるから。
その事情を超越したら何が起こるか?

限界論かな、と思って読み始めましたが、待望論でもありました。
面白かった。

-----
ブレークポイント ウェブは過成長により内部崩壊する
ジェフ・スティベル 著
角川EPUB選書
http://kadokawa-epub.jp/post/94498255997/epub-8-1

(2014.11.10)


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【映画】インターステラー

2014-11-30 23:25:45 | 映画

169分も全然長く感じない。
完成度の高い冒険譚、久しぶりに観た。知的好奇心も満足。

SF好きの私としては、相対性理論に基づく"時間"の扱い、
そこから来るシチュエーションの起こし方が非常に面白くて、
それだけでも満足。面白かった。
「あるかも」と思わせる手腕がみごと。

地球の環境変化、平穏な日常がじわじわと奪われていく様子は
現代人として誰もがうっすらと感じている不安感と相まって
観客を物語に入り込ませる。

軸は家族の葛藤であり愛であり。
未来に対する不安と希望であり。
圧倒的な状況にあっても人は人の感情で生きている。

エンタメ性、ワクワクドキドキもばっちりです。
(多少都合のいい展開も、お茶目ってことでOKでしょ)。

公式サイト: http://wwws.warnerbros.co.jp/interstellar/

----
観ながら、音響を聴きながら、過去に観たいくつかの印象的な
映画(主にSF)のエピソードや音響やシーンが脳裏をよぎった。
批判的な心ではなく。
ノーラン監督は過去の沢山のクリエーションに刺激を受けつつ、
その上に独自性を加えてこれを創った。新しい塔を打ち立てた
のだと思う。決してイイトコドリに終わってはいないのである。

----
もいっこ深読みするとね、ラスト近くで表現されていた世界、
そこに至る熾烈な物語も想像してみたりした。

(2014.11.29)


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気になる本 2014/11/24-30

2014-11-28 23:07:30 | 気になる本

2014/11/28

きもの春秋 今、次世代へつなぐ想い/木村 孝/2,268円/ハースト婦人画報社 
  94歳の染織研究家・木村孝が、若い世代におくる珠玉のメッセージ。自身の美意識
  から生まれたきもの選び、着こなしのコツ、きものに育まれた生き方などを紹介する。
  『美しいキモノ』掲載を加筆修正して書籍化。【「TRC MARC」の商品解説】

コンシャス・ビジネス 価値ある企業に生まれ変わるための意識革命とは何か/フレッド・コフマン/2,376円/駒草出版 
  【ノーチラス・ブック・アワード】一流企業の共通点は「コンシャス」だった!
  プレーヤーとしての一貫した責任感、真の意味での誠実さ、建設的な交渉術、心の
  コントロールの力など、7つの「コンシャス(意識的)であるための」スキルに
  ついて解説する。【「TRC MARC」の商品解説】

講座スピリチュアル学 第2巻 スピリチュアリティと医療・健康/鎌田 東二/1,944円/ビイング・ネット・プレス (地球人選書)
  こころとからだとたましいの全体を捉え、生き方や生きがいといった生の価値に
  絡めて考察する「スピリチュアル学」。第2巻は、代替医療や看取り、緩和医療
  などを論じ、新しい医療観、健康観、いのち観の構築を試みる。

リバース・イノベーション2.0 世界を牽引する中国企業の「創造力」/徐 航明/1,944円/CCCメディアハウス 
  スマートフォンから通信インフラ、産業集積地などの政策領域まで、中国発のイノ
  ベーションの様々な事例を紹介。さらに、日本のイノベーション創出に関する提言を
  記す。『日経BPテクノロジーオンライン』連載を基に書籍化。

2014/11/26

イシュア記 新約聖書物語/小川 国夫/6,048円/ぷねうま舎 

妖怪大百科元祖/實吉達郎/1,037円/竹書房 
  古今東西、有象無象の妖怪たちを児童向けにイラストを交えて大解説!

熱闘!日本美術史/辻 惟雄/2,160円/新潮社 (とんぼの本)
  伊藤若冲の?風絵、葛飾北斎の春画、赤塚不二夫のマンガ…。辻惟雄が意中の絵師
  たちについて書けば、村上隆は彼らの作品を換骨奪胎、新作を描く。美術史家と
  アーティストの21番勝負! 『芸術新潮』連載を書籍化。【「TRC MARC」の商品解説】

食物アレルギーの考え方 除去から摂取へ/谷内 昇一郎/3,024円/中外医学社 
  食物アレルギー患者とどう付き合っていけばいいのか? 小児科医、一般内科医に
  向け、“食べて治す”をキーワードに食物アレルギーの新しい考えかたを伝授。
  専門医に送るべき症例や、内科医がやってはいけないことなども付す。

〈イルミナティ対談〉ベンジャミン・フルフォード×泉パウロ 悪魔の秘密結社と聖書預言
  /ベンジャミン・フルフォード/1,944円/学研パブリッシング 
  経済・社会・宗教・国際政治などの暗部に迫る取材を続けるベンジャミン・フル
  フォードと、クリスチャンの立場から「聖書」の預言を偽る闇の動きを糾弾して
  いる泉パウロが、闇の秘密結社イルミナティなどについて語り合う。

のぞいてみようウイルス・細菌・真菌図鑑 2 善玉も悪玉もいる細菌のはたらき/北元 憲利/3,024円/ミネルヴァ書房 
  ウイルス・細菌・真菌などの微生物がよくわかるシリーズ。2は、ヒトと細菌の関わり、
  細菌のつくりや生態、ヒトに感染する主な細菌など、細菌の働きを解説する。見返しに
  細菌の働きを利用して作られるもののイラスト等あり。【「TRC MARC」の商品解説】


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気になる本 2014/11/17-23

2014-11-24 21:01:50 | 気になる本

2014/11/22

トミノの地獄 1/丸尾 末広/842円/KADOKAWA(BEAM COMIX) 

自然・人類・文明/F.A.ハイエク/1,296円/NHK出版(NHKブックス) 

2014/11/21

ぼくは物覚えが悪い 健忘症患者H・Mの生涯/スザンヌ・コーキン/2,808円/早川書房 

曽我物語の史的研究/坂井 孝一/11,880円/吉川弘文館 

2014/11/20

幻獣標本博物記 新装版/江本 創/1,620円/風濤社 
  A.ヒロポンスキー博士が世界各地を巡り採集した「幻獣」、著者が「幻界灘」
  で採取した海洋生物、古びた建築物で発見される「悪獣」…。奇妙な未確認生物
  たちを紹介する、フィクションによる博物記。〔初版:パロル舎 2004年刊〕

乳房の文化論/乳房文化研究会/2,052円/淡交社 
  乳房研究には、私たちがいかに生きるかを考えるにあたっての重要な課題、
  有意義なヒントが含まれている。「古墳文化と乳房」「美術のなかの裸体美」など、
  乳房を文化論的な視点から扱った論考12本を収録する。【「TRC MARC」の商品解説】

ネットを支えるオープンソース ソフトウェアの進化/まつもと ゆきひろ
  /2,700円/KADOKAWA (角川インターネット講座) 
  インターネットを支える膨大なソフトウェア群。ソフトウェアを生み出すプログラ
  ミングの基礎的な考え方や、インターネット発展の陰にあるオープンソースソフト
  ウェアの特徴・性質などを解説する。【「TRC MARC」の商品解説】

2014/11/19

日本の民俗 暮らしと生業/芳賀 日出男/1,382円/KADOKAWA (角川ソフィア文庫) 
  正月や盆などの年中行事、農村の田植えや漁村の海女、巫女や人形まわし…。
  変貌し続ける伝承と習俗の真の姿を、折口信夫に学び、宮本常一と旅した目で
  捉える。民俗写真の第一人者が半世紀にわたり撮り続けた記念碑的大作。
  〔クレオ 平成9年刊の加筆・訂正〕【「TRC MARC」の商品解説】

日本の民俗 祭りと芸能/芳賀 日出男/1,382円/KADOKAWA (角川ソフィア文庫) 
  神事である御幣の祭り、様々な鬼の祭りや獅子舞、能や風流…。時代の変化の
  中で刻々と失われゆく信仰の情景を、折口信夫に学び、宮本常一と旅した目で
  捉える。民俗写真の第一人者が半世紀にわたり撮り続けた記念碑的大作。
  〔クレオ 平成9年刊の加筆・訂正〕【「TRC MARC」の商品解説】

稲作以前 新版 (NHKブックス)/佐々木 高明/1,620円/NHK出版 
  縄文時代は単なる「採集・狩猟の時代」ではなく、焼畑農耕が存在するという
  仮説を提唱。水田稲作渡来前の日本列島に農耕の要素があり、それが稲作の文化
  と並んで日本の文化を形作っていることを明らかにする。〔改訂新版:洋泉社
  2011年刊〕【「TRC MARC」の商品解説】

発酵はマジックだ/小泉 武夫/1,728円/日本経済新聞出版社 
小泉武夫のチュルチュルピュルピュル九州舌の旅/小泉 武夫/1,620円/石風社


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【歌舞伎】吉例顔見世大歌舞伎 歌舞伎座 2014年11月

2014-11-17 00:06:18 | 歌舞伎

歌舞伎座
吉例顔見世大歌舞伎
初世松本白鸚三十三回忌追善

◆昼の部(3階下手前方)

「井伊大老」
近代の脚本、台詞が議論ぽくてちょっと苦手。
それでも井伊直弼(吉右衛門さん)とお静の方(芝雀さん)の夫婦の
遣り取りがしみじみといい。
こういう重い心情のときの吉右衛門さんのお芝居は鳩尾を掴まれるよう。
お静の方に死後の名誉回復を待つ必要はないと言われて思い切るところは
逆にふっと軽くなった。
菊之助さんの昌子の方も高貴と優しさが同居しててよかった。

義太夫は愛太夫・燕太郎→東太夫・宏太郎。

「熊谷陣屋」
菊五郎さんの義経の高貴と大物感、幸四郎さん・直実の
苦悩、特に花道の「夢だ」はさすがの"ならでは"。
魁春さんの相模がすごく良かった。
松緑さんの軍次の控えめなシャープさが印象に残る。      

◆夜の部(3階上手前方)

「御存鈴ヶ森」
菊之助さんの白井権八に松緑さんの幡随院長兵衛。
いいわコレ。
怜悧な十代、繊細で豪胆な権八。
いなせな若々しさの裏に風格が透ける長兵衛。
所作も瑞々しく強い。

「勧進帳」
染五郎さんの弁慶、梃子でも動かないような重さではないけれど、
足下のしっかりした個性的な重さがあった。機微が前に出てるのかな。
幸四郎さんの富樫、吉右衛門さんの義経の間にあっても小さくない。
絶対に関を通してくれそうにない富樫。弁慶はよく通れたもんだ。
義経は、吉右衛門さんのは初めて拝見したのですが、深い。
打擲の後に赦しを与える義経と弁慶とのやりとり、ぎゅっとくる。
太刀持ちは金太郎くん。
一家総出。見れた観客としては、そこにもわくわく。

「義経千本桜 すし屋」
予定通り?泣かされた、菊五郎さんの権太。
左團次さんの父・弥左衛門と右之助さんの母・おくら。         
時蔵さんの弥助/維盛は、高位の人が「すまんのー」っていう感じじゃ
なくて優しい真心を感じる。
梅枝さんのお里が、見てて切なくなる可憐さ。

(2014.11.16)

 

 

 


欄外:
7月の歌舞伎座の感想欄外で愚痴ってた"うなる人"が今回も近くにいて、
真相が判明した。やっぱ寝言(唸り)なんだぁ。具合悪いのかとちょっと
ドキッとしたけど。お連れさんもいた。起こしてあげて~。

欄外その2:
かなり高齢の男性、見たいのは分かるけど花道芝居時の前傾が激しすぎて、
ワタシの視界を全身で塞ぐ。
メモ取ったり、ほんとうに好きなんだなぁと頭では理解しつつ…
観ながら爪楊枝で耳かきしてたのにはびっくりした。マイペースですね。


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【映画】100歳の華麗なる冒険

2014-11-15 20:30:50 | 映画

20世紀を100年生きてきた。
ケレンと皮肉たっぷりの20世紀エピソードに笑いつつ。

単純に、100歳のじいちゃんがハッスルする映画、ではない。
いや、そういうシーンもあるんですけど。
あくまで100歳の歩速、あくまで100歳の言葉の出し方。

100歳のじいちゃん=アランは、マイペースで動揺しない。
いつでも平常・日常(本人的に)。
何が起ころうが。自分がどんな行動をしようが。

回想される若い頃から飄々と真面目にキッツイことをやってきた。
そうなった背景を真剣に考えたら心がちくちくするのだけれど、
経緯がどうであれ、本人は生い立ちや生き様を今に対する言い訳に
したりしない。丸ごと呑んでる。
そして今を見ている。
それが100歳まで生きるっていうことなのかな。

最期は充足であってほしいと思うに至る終幕。

-----
公式サイト:http://www.100sai-movie.jp/

(2014.11.15)


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気になる本 2014/11/10-16

2014-11-12 23:20:56 | 気になる本

2014/11/15

人喰いの社会史 カンニバリズムの語りと異文化共存/弘末 雅士/2,808円/山川出版社 
  どのような情況で人喰いの語りは創られたのか。インフォーマントの役割に着目し、
  大航海時代から現代まで、スマトラを舞台に異文化接触と共存への道筋を解き明かす。

美しい曲線の幾何学模様 花と葉とつる草の芸術/リサ・デロング/1,296円/創元社(アルケミスト双書)
  各地の古代神話が示しているように、自然を象徴的に表現した装飾には大切な意味が
  ある。古代からつづく装飾の技術と歴史を簡略に解説し、さまざまな幾何学模様を
  紹介しながら、人類が発見した装飾の豊かさを示す。

2014/11/14

草迷宮/泉 鏡花/3,564円/エディシオン・トレヴィル(Pan‐Exotica) 
  亡き母の歌った手毬唄を捜し求める葉越明は、その唄を知りながら、自らの魔の
  世界に赴き行方知れずとなっていた幼馴染みと再会し…。鏡花妖異譚の代表作に、
  圧倒的な緻密さで幻怪妖美の世界を描く絵師・山本タカトの絵を付す。

雨と生きる住まい 環境を調節する日本の知恵/1,620円/LIXIL出版 

コースブック意味論/ジェイムズ・R.ハーフォード/3,780円/ひつじ書房 

うるわしき戦後日本/ドナルド・キーン/864円/PHP研究所 (PHP新書)

2014/11/13

アステイオン 鋭く感じ、柔らかく考える 81(2014) 特集共有される日本文化
  /サントリー文化財団/1,080円/CCCメディアハウス 

アインシュタインの逆オメガ 脳の進化から教育を考える/小泉 英明/1,620円/文藝春秋 
  進化のカギとなった手指の発達とヒトの知的創造性の間には密接な関係があるの
  ではないか。進化と脳の発達を、幼児教育の観点からやさしく解き明かす。

三くだり半と縁切寺 江戸の離婚を読みなおす (読みなおす日本史)/高木 侃/2,592円/吉川弘文館 
  近世女性の立場の弱さを示すといわれた、三行半で書かれた離縁状三くだり半。
  しかし、実際は女性も対等な立場で、離縁を要求できた。女性唯一のアジールと
  された縁切寺の実像と併せて、近世女性の地位を問い直す。〔講談社 1992年刊の増補〕

2014/11/12

Book Covers in Wadaland 和田誠装丁集/和田 誠/4,536円/アルテスパブリッシング 

2014/11/11

弥次喜多化かし道中/桑原 水菜/713円/講談社(講談社文庫) 

沖縄の伝統行事芸能を歩く/高橋哲朗/1,188円/沖縄探見社 


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【映画】馬々と人間たち

2014-11-09 21:36:31 | 映画

某映画館で予告編を見て、シニカルな味付けの、ホノボノもんかな、
と思って行ってみました。予想と少し違ったけど、見てよかった。

確かに、都会にありがちなせかせか・カッチリした状況設定はない。
どこのどんなシーンも、背景は広大で時に荒涼とした大地と山と河。
(河っていうか、フィヨルドか何かかもしれない)。
馬と、馬を生業にする人々が、それぞれに何かして、どうにかなって…
シニカルなのも含めて、よく笑った。笑顔が凍ることもあった。

馬は馬であって馬でない、ええと、いわゆる大道具としての馬では
ないのです。生身で、生きるために、満足するために、行動する。
それは人も同じ。そういう描き方。

人の業、馬の業。

思いがけない命運。

それも全て大地の中の小さな点。点たち。滑稽と愛情。
生きてるのは馬も人も同じ。

台詞少なめで状況説明的な会話も殆どない。更に字幕も必要最小限。
ロシア船のシーンなんて、他の映画だったらフォント変えて字幕出す
だろうけどこの作品は出さない。でもそれでいい。
台詞のない馬ですら語る映画である。

俳優さんたち皆、馬を扱う技術が堂に入っててすごい。ヨハンナが
7頭率いて移動するところなんて、カミーリョじゃなくても惚れる。

ラストの馬の群れが圧巻。
魚群みたい。自然の不思議の相似。人(群集)の思考も視覚化したら
こうなのかも、なんて思ったりした。

-----
公式サイト:http://www.magichour.co.jp/umauma/

(2014.11.09)


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【歌舞伎】11月歌舞伎公演 国立劇場 2014年11月

2014-11-08 23:00:51 | 歌舞伎

国立劇場
11月歌舞伎公演

平成26年度(第69回)文化庁芸術祭協賛
通し狂言伽羅先代萩 四幕六場

序幕 花水橋の場、松江さんの絹川谷蔵が魅力的。特に声。    

二幕目の足利家竹の間の場、政岡は翫雀さん。
出だしの立ち姿の背の辺りがなんというか非常に雰囲気いい。
二幕目の政岡が翫雀さんで良かったんだと思う。気負いと立場の弱さが
際立つ。ふてぶてしさと浅知恵のバランスがみごとな翫雀さんの八汐に、
濡れ衣を着せられて追い詰められるところの切迫感・緊張感。
正義の味方・知性派・沖の井(孝太郎さん)がむっちゃかっこいい。

子役は二人ともよく声が出てて、所作もきれいでがんばってました。

三幕目 足利家奥殿の場以降、ご存知・ドラマチックな場面に見入る。
政岡(藤十郎さん)の深い愁嘆。ちょっと短めだった?

詰所刃傷の場、青色吐息の渡辺外記左衛門(彌十郎さん)への
細川勝元(梅玉さん)の思い遣りが染みる。

(2014.11.8)


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【映画】ニンフォマニアック Vol.2

2014-11-08 22:34:00 | 映画

滑稽味と知性、人間バカで愛おしい感じはVol.1から続きつつ、
後半一気に、来た。

途中ふと、「主人公が男性だったら殆ど犯罪者だよなぁ」と。
「犯罪にならないのは受動側だからか?」などと"もやっ"が頭に出始める。
とはいえ展開は意外性を裏切らず、この物語はどこに行くのだ?と見入る。

第8章のセリグマンの解釈が本質で("もやっ"の答えとして実際すごく納得
したんだ)、ここで収まるかな、社会派かぁ、と思ったんだけど、そのままじゃ
終わらせないラース・フォン・トリアー監督。

見終えて、受難の物語のような気もするし、貴種流離譚のようにも思えている。
勇者の物語でもある。

----
公式サイト http://www.nymphomaniac.jp/

(2014.11.05)

欄外:
Vol.1の感想に書いたセリグマンの印象は、そんなに外れてなかったけど・・・、
知性は冷却の呪文。


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【映画】誰よりも狙われた男

2014-11-06 23:17:20 | 映画

すごいな。

全編通じて静かな中のうっすらとした緊張感。

フィリップ・シーモア・ホフマン演じる諜報員バッハマン、
大きく語るのでなく、少ない言葉・表現と行動が、言語を介さない
かたちで人物の在りようを語る。

登場する人々の、それぞれのふるまい。リアル。

大量のたばこと酒も、不安定さと緊張を物語る。

ふてぶてしさの下にたくさんの傷を抱えてる。
苦笑いに隠れた悲しみの後味。

(2014.11.06)

追記: そうそう、いくつか、不明のままのことがあるよね。私だけ?


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【映画】ドラキュラZERO

2014-11-05 23:57:07 | 映画

ぼちぼち面白かった。
予告編からの想像通り・予想通りの雰囲気とクオリティ。
物語りはいい意味で古典的。
中世もの・伝奇もののシンプルな映画作品として成立してると思う。

本編が1時間半だし、メンタルにのしかかる引きずり要素もないし、
諸々吹っ飛ぶところは絵的に豪快だし、週半ばの仕事帰りのリフレッシュ
にはよかったと思う。

主役の二人、ヴラド(ルーク・エヴァンス)とミレーナ(サラ・ガドン)は
でき過ぎな位のいい感じのカップルなんであるが、顔立ち故なのか何だか、
戦うビジネスマンと妻を見てるような気分になる瞬間があった。
特に前半。何でかな。

最後行ってインタビューウィズヴァンパイア思い出した。

(2014.11.05)


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気になる本 2014/11/04-09

2014-11-05 21:38:09 | 気になる本

2014/11/06

モラルの起源 道徳、良心、利他行動はどのように進化したのか/クリストファー・ボーム/3,888円/白揚社 
  なぜ人間にだけ道徳が生まれたのか。気鋭の進化人類学者が進化論、動物行動学、
  文化人類学、考古学、霊長類のフィールドワーク、狩猟採集民族誌などの知見を
  駆使して人類最大の謎に迫り、エレガントで斬新な新理論を提唱する。

日本美術史入門/河野元昭監修/4,104円/平凡社(別冊太陽スペシャル) 

動物を追う、ゆえに私は〈動物で〉ある/ジャック・デリダ/3,456円/筑摩書房 
  一糸まとわぬ自分の裸体を猫に見られた哲学者は、告白不可能な恥に襲われる−。
  極私的なエピソードから語り出し、動物のまなざしのもとで「人間に固有なもの」
  を問い直す。「自伝的動物」におけるデリダの講演録。【「TRC MARC」の商品解説】

それをお金で買いますか 市場主義の限界/マイケル・サンデル/864円/ハヤカワ文庫 NF 

2014/11/05

宇野亞喜良クロニクル/宇野 亞喜良/4,104円/グラフィック社
  宇野亞喜良がつくり続けてきた60年以上に及ぶ膨大な作品から、その時代を
  象徴するイラストレーションとデザインを厳選し、時代を追って紹介する。
  和田誠、横尾忠則、寺山修司らの寄稿も収録。折り込みページあり。

古代インドの思想 自然・文明・宗教/山下 博司/864円/筑摩書房(ちくま新書) 
  民族・言語・宗教の坩堝であるインドをまとめる価値観とは何か。高度に発達した
  「知の体系」はいかに生まれたか。自然環境がインド人に与えた影響とは。
  気候変動や風土的自然の側面から古代インド世界の文明と宗教を捉え直す。

ビジネスマンへの歌舞伎案内/成毛 眞/799円/NHK出版(NHK出版新書)

2014/11/04

移行化石の発見/ブライアン・スウィーテク/1,026円/文藝春秋(文春文庫) 
  陸を歩く4本足のクジラ、羽毛におおわれた恐竜…。ダーウィンが見つけ得な
  かった「中間形態の化石」が、いま次々と発見されている。進化生物学を
  ライフワークにした気鋭の科学ジャーナリストが、進化の神秘に迫る。

隠された神々 古代信仰と陰陽五行/吉野 裕子/918円/河出書房新社(河出文庫) 
  日本の信仰は、古代より太陽の運行にもとづき、神の去来を東西軸上に想定して
  いたが、中国の陰陽五行が渡来すると、神への信仰は南北軸にとって変わられた。
  “隠された神々”の秘密を探りながら、日本宗教の大きな変化に迫る。


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