一、毛抜
主の使いで小野春道(彦三郎さん)の館にやってきた粂寺弾正(橋之助さん)。
お小姓(萬次郎さん)や腰元(扇雀さん)にチョッカイ出したりしながらも
超科学的?推理で事件を解決、悪者をやっつけて大活躍めでたし。
一応礼儀正しいけど放埓で知的で豪傑。おおきく演じておられました。
脇も豪華な楽しい一幕でした。
国生さんの春風が品よくしっかりしていてとてもよかった。
亀蔵さんと彌十郎さん(夜の部は髪結新三の弥太五郎源七)は、
最近、どの役をやってらしてもつい目がいってしまいます。
八剣玄蕃、小さすぎず大きすぎない悪党、確りと。
二、志賀山三番叟
口上。
千穐楽前日の拝見でした。
7ヶ月の最後の月の、夜の部。
3つの演目はそれはそれは考えられたものなのでしょう。
志賀山三番叟の来歴を伺って、この演目がここに充てられた心を
伺い知ることができました。
とてつもなく長い時を生き残ってきたものが、長い公演の最後に、
若い担い手で表現される。
そして、勘三郎さんと並んで小山三さんのご挨拶もありました。
至上最年長の女形、お声もしっかりとしておられました。
ロングランだけでなくこれまでの日々の様々なこと、万感が
伝ってきます。
なんとはなしに「ことほぐ」という言葉が浮かびました。
志賀山三番叟、舞踊は勘九郎さんと鶴松さん。
舞踊には詳しくないのですが、いつも見ている他の演目よりも
動作(振り)が素朴だったように思います。
型よりももっと根源的なものがあるような。
三、髪結新三
初夏の演目。
ちょっと暑いくらいの日で、隅田公園敷地内にはまだ硬めの紫陽花、
劇場に入る前から季節感これ以上なし。
とにかくリズムがいい。
たまらない爽快感。
新三の髪技、悪っぷり、切った張ったの日々を過ごす凄み。
・・・なんだかんだ書くのは野暮な気がしてきた。
一番びっくりは橋之助さん。
「毛抜」と打って変わっての老け役がお見事でした。
おかみのあまりに見事な"スッテン"に笑っちゃってましたけど。
鰹売りはあれは菊十郎さん!?
ああこれでしばらく中村座ともお別れ。
名残惜しい。
すばらしい時間をありがとう。
(2012.5.26)