ぐるぐる・ぶらぶら

歌舞伎と映画と美術と読書の感想

【歌舞伎】平成中村座 五月大歌舞伎 夜の部 2012年5月

2012-05-27 18:42:21 | 歌舞伎

一、毛抜

主の使いで小野春道(彦三郎さん)の館にやってきた粂寺弾正(橋之助さん)。
お小姓(萬次郎さん)や腰元(扇雀さん)にチョッカイ出したりしながらも
超科学的?推理で事件を解決、悪者をやっつけて大活躍めでたし。
一応礼儀正しいけど放埓で知的で豪傑。おおきく演じておられました。
脇も豪華な楽しい一幕でした。
国生さんの春風が品よくしっかりしていてとてもよかった。

亀蔵さんと彌十郎さん(夜の部は髪結新三の弥太五郎源七)は、
最近、どの役をやってらしてもつい目がいってしまいます。
八剣玄蕃、小さすぎず大きすぎない悪党、確りと。

二、志賀山三番叟

                
口上。
千穐楽前日の拝見でした。
7ヶ月の最後の月の、夜の部。
3つの演目はそれはそれは考えられたものなのでしょう。
志賀山三番叟の来歴を伺って、この演目がここに充てられた心を
伺い知ることができました。
とてつもなく長い時を生き残ってきたものが、長い公演の最後に、
若い担い手で表現される。
そして、勘三郎さんと並んで小山三さんのご挨拶もありました。
至上最年長の女形、お声もしっかりとしておられました。

ロングランだけでなくこれまでの日々の様々なこと、万感が
伝ってきます。
なんとはなしに「ことほぐ」という言葉が浮かびました。

志賀山三番叟、舞踊は勘九郎さんと鶴松さん。
舞踊には詳しくないのですが、いつも見ている他の演目よりも
動作(振り)が素朴だったように思います。
型よりももっと根源的なものがあるような。

三、髪結新三

初夏の演目。
ちょっと暑いくらいの日で、隅田公園敷地内にはまだ硬めの紫陽花、
劇場に入る前から季節感これ以上なし。

とにかくリズムがいい。
たまらない爽快感。

新三の髪技、悪っぷり、切った張ったの日々を過ごす凄み。

・・・なんだかんだ書くのは野暮な気がしてきた。

一番びっくりは橋之助さん。
「毛抜」と打って変わっての老け役がお見事でした。
おかみのあまりに見事な"スッテン"に笑っちゃってましたけど。

鰹売りはあれは菊十郎さん!?

ああこれでしばらく中村座ともお別れ。
名残惜しい。
すばらしい時間をありがとう。

(2012.5.26)


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【読書】飼い喰い 三匹の豚とわたし

2012-05-23 22:00:05 | 読書記録

飼い喰い 三匹の豚とわたし/内澤旬子 著/岩波書店 (2012.5.23)

実は、以前読んだ「世界屠畜紀行」があまりに充実の面白さだったので、

今回も期待して、じっくり読みたいがために、発行直後に買ったものの

すぐ読まずに我慢して、自分の機が満ちるのを待っていたのであった。

どうしてこんなにあからさまに爽やかに語れてしまうのだろう。

観察、行動。その視線は科学者。(冗談や揶揄ではありません!)

たまらない面白さ。それは作者の好奇心の眼を借りて、色々なところに

アクセスすること。畜産業に、社会に、真摯に取り組む人や暮らしの姿に。

「一緒にいる」を読んだときはちょっとじわっときましたよ。

豚との日々の、わくわくや、ボーゼンや、etc、シェアしてもらったような

気持ちです。(実際はすごくハードだと思いますが)。

ありがとうと言いたい。


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気になる本 20120521-27

2012-05-23 21:49:00 | 気になる本

2012/05/23

宗教と科学/吉野 亮市/東京図書出版
仏教語読み方辞典 新装版/有賀 要延 (編著)/国書刊行会

2012/05/22

通信技術の飛躍的高度化 光通信の新たな挑戦/中沢 正隆/オプトロニクス社
はじめたばかりの浄土真宗/内田 樹/角川ソフィア文庫
「辺境」からはじまる 東京/東北論/赤坂 憲雄/明石書店


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【展覧会】毛利家の至宝展

2012-05-19 23:09:14 | アート・文化

毛利家の至宝 大名文化の精粋 国宝・雪舟筆「山水長巻」特別公開
サントリー美術館
(2012.5.19)

雪舟の山水図。
これが見たかった。

すごい。
端から端までたゆまぬ力量で表現されている長い画巻、場面場面で
ため息が出るよな墨、筆致。すべてに何かが漲っている。

正直、山水図目当てで行ったのですが、
幅広いジャンルの文物が、それぞれとても良い状態で保たれていて、
そのこと自体にも感動を覚えました。

「○○家のお宝」型の企画展は、自分の興味が薄いジャンル(私の
場合は刀剣など)で気を抜いて観たりするのですが、毛利家の品々は
それぞれ強い魅力を放っていました。
雛人形も、茶碗も、起請文などの「事務書類」までも。

「鬱金濃茶段桜扇模様縫箔」
茶の濃淡の段に織られた生地の上に配置されたたくさんの扇。
それぞれすべて異なる紋が表現されています。
扇は絶妙の配置で、それぞれの紋はさまざまな色糸を使って、
ふっくらとした曲線が、愛らしさを放っています。
笹、竹、梅、桔梗、紅葉・・・
鴎、千鳥、ふくら雀、鳳凰・・・

「梨地葵沢瀉紋」の蒔絵の一式、十種香箱が特に素敵。
蒔絵の文様なのに、生き生きとした写し絵のよう。

「鼈甲前挿」鶴の小さな足のなんと正確で細やかなことか。

全般、育ちのよさ、たおやかさ、強さ、といった言葉が浮かぶ
印象の品々でした。

<つれづれ>
事務書類(起請文、契状、書状など)観て思う。
コンピュータが入り始めた頃は、「フォント」というやつが
手書きの悪いところをカバーしたものでしたが、
今や、素敵なフォントで感性を伝える時代。
元就の起請文や家康誓紙を見ていると、
書き手の人格までひっくるめた個性が表れてくる自筆文字、
そういうものがかつて日常だったのだ、と、改めて思います。


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気になる本 20120514-20

2012-05-18 22:08:00 | 気になる本

2012/05/18

戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ/八木洋介 金井壽宏 著/光文社新書

日本経済復活、最後のチャンス 変化恐怖症を脱して「3K立国」へ/三橋規宏 著/朝日新書

変人偏屈列伝/荒木飛呂彦 鬼窪浩久 著/集英社文庫

日本の文脈/内田樹 中沢新一 著/角川書店

2012/05/13

野菜をミクロの眼で見る/田村 咲江 著/建帛社 クッカリーサイエンス
    野菜と若干の果物、いも、豆を取り上げ、食品のミクロの構造とその生体
    としての働きを解説。次いで、含有成分の分布の調べ方の一例、加熱や
    冷凍などの調理操作の影響などを、光学顕微鏡と電子顕微鏡の写真を用いて紹介する。

古民家礼讃/加藤 幹彦 著/中日出版社


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気になる本 20120507-13

2012-05-13 22:55:00 | 気になる本

2012/05/12

進化しすぎた新種生物ファイル/本折 浩之 著/PHP研究所
    毎年3000種以上も発見される新種生物の中から、ここ数年で新発見
    された71種を厳選紹介。「新種ハンター」や、学名の決まり方、環境
    保護問題などについても解説する。

宮古の神々と聖なる森/平井 芽阿里 著/新典社選書
    宮古島で高校時代を過ごした著者が、その後十数年にわたって宮古島の
    西原で行ったフィールドワークの記録。宮古の神々と聖なる森の豊かな
    世界観を紹介する。

2012/05/10

「腹の虫」の研究/長谷川 雅雄 ほか著/名古屋大学出版会 南山大学学術叢書
    「虫が知らせる」「虫の居所が悪い」といった表現の根底には、日本特有の
    「虫」観がある。かつての医学思想、文芸作品、民俗風習などを横断的に
    読み解き、「虫」の多面的な姿から日本の心身観を浮き彫りにする。

民衆救済と仏教の歴史中/中屋 宗寿 著/郁朋社
    仏教が「衆生救済」の宗教であることを示す書。中には、仏教医学・
    仏教心理学(心識論)・マンダラの概略史、および庚申信仰・道祖神信仰
    ・修験道と不動明王信仰の概略史を収録。

ヨーロッパ中世の時間意識/甚野 尚志 編/知泉書館
    ヨーロッパ中世とルネサンスの社会・文化・芸術の諸相を多分野から
    横断的に研究した成果。前近代世界の社会や文化の深層理解のため、
    現実の社会の時間意識と、文学・哲学・芸術作品で表現された時間意識を
    多角的に分析する。

ヘーゲル「精神現象学」入門/加藤 尚武 編/講談社学術文庫
農商工間の共創的連携とナレッジマネジメント/堀田 和彦 著/農林統計出版

2012/05/08-09

老年心理学/下仲 順子 編/培風館 現代心理学シリーズ
不義密通と近世の性民俗/森山 豊明 著/同成社 同成社江戸時代史叢書
江戸の女人講と福祉活動/西海 賢二 著/臨川書店 臨川選書
コンテンツビジネス・デジタルシフト/まつもと あつし 著/NTT出版

2012/05/07

スキャンダルの世界史/海野 弘 著/文春文庫
図説印刷文化の原点/松浦 広 著/印刷朝陽会
アート・オブ・コミュニティ印刷朝陽会Jono Bacon 著印刷朝陽会オーム社


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【歌舞伎】大阪松竹座 團菊祭五月大歌舞伎 夜の部 2012年5月

2012-05-13 21:36:20 | 歌舞伎

一、絵本太功記 尼ヶ崎閑居の場

團菊で武智・真柴に、東蔵さんの皐月と時蔵さんの操。
重厚な一幕。

若手もいいです。
菊之助さんの武智十次郎、梅枝さんの初菊。

二、高坏

こういう役をやってるところはあまり見かけなかった
次郎冠者・海老蔵さん。
ちょっと変わりもん風(お声がね、通りが良過ぎるのね)
ですが可愛らしい仕上がりでした。

松緑さんの高足売はピッタリすぎです(笑)。

三、ゆうれい貸屋

面白かったし役者さんのお芝居も良かった。
脇では市蔵さんの又蔵と、お千代・梅枝さんがお気に入り。

しかし、ストーリィがねぇ。
どうもねぇ。スッキリしないのね。

<ネタバレ>
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実は恨み相手を求めての手練手管だったのか、と腑に落ちるには
ちょっとそれまでが可愛らしすぎるよねぇ。

(2012.5.12)


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【歌舞伎】大阪松竹座 團菊祭五月大歌舞伎 昼の部 2012年5月

2012-05-13 21:20:54 | 歌舞伎

一、菅原伝授手習鑑 寺子屋

花形歌舞伎的な配役。
がんばってます。

菊之助さんの千代と梅枝さんの戸浪がよかったです。
千代と松緑さんの松王丸のコンビネーションも。

そもそも「いっそ斬って」「口先で」とか、源蔵と戸浪の造形は
"御恩奉公"の概念を知って見ていても「おいおい、それって・・・」の
要素が幾つかある。
芝居で重く押し切れないと、違和感が立つ、難しい役なのだと
今回改めて思いました。

二、身替座禅

團菊による楽しい一幕。
團十郎さんの玉の井は、所作がしとやかで、
他の方の「山の神」よりも"ドスドス"感がなく、
前半は、お育ちがよくて天然なお嬢様上がりかしら、
ですが、後半はやっぱり「山の神」でした。
  

三、恋飛脚大和往来 封印切

藤十郎さんの忠兵衛vs三津五郎の八右衛門は去年の4月に
新橋で拝見してました。その時もすごいと思ったのですが。

藤十郎さんは断然、松竹座で観るのがいい。
短気でしゃらしゃらしたところのある忠兵衛を、ご当地で
観るときの、いや増す凄さ。

追い込まれ、二進も三進も行かなくなっていく。
緊迫感、あの瞬間、凍りつく音が聞こえてくるようでした。

八右衛門には、単にライバルを追い込み切ったというだけでない、
人の命運を狂わせてまで自身の欲を達した己への畏怖も
滲んでいました。

菊之助さんの梅川、純真ゆえに周囲に嵐を起こす説得性。
上方空気の要、おえん・東蔵さんと、エエ感じで重石に
なっている治右衛門・左團次さん。

すばらしい一幕でした。

(2012.5.12)


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【読書】知性の限界

2012-05-13 20:22:00 | 気になる本

(2012.5.13)

知性の限界――不可測性・不確実性・不可知性
高橋 昌一郎  著
講談社現代新書

理性の限界に続く、難しいことを楽しく読める、
知的好奇心満足の一冊。

こんどは
「言語の限界」から始まって「予測の限界」「思考の限界」に至る。
前著『理性の限界』が、教科書から与えられた世界観の転覆の
手助けになったのに対して、『知性の限界』は未来に向かう前の
足元をもう一度見るための手助けになる。

「知性」に未来はあるのか?
わからないが、言論だけで尽くせるという思い込みを外したら
未来は暗くないような気もする。

雑感:

社会の情報化が進むにつれて、1つの言葉に対する理解の
バリエーションが徐々に増えてきた。だからこの著書に書かれて
いるように、近代~現代に至って、古典でOKだったことの根本を
問われる機会が顕著になってきたのではないかと思う。

※原始的な言語って、鳴き声に近かったみたいだし。「ア」とか。
 感覚(=状況・状態を捉える個の)を直接伝えてたのだから
 拡大解釈の余地も必要もなかったのでしょう。

コンピュータが入って更に、幾何級数的に情報も増えた。
故にますます、言語コミュニケーションは困難さを増している。

1つの事象を言語を使ってブロードキャストするジャーナリズムにも
限界が来てるのではないか?言論で戦う政治にも。

今世情で起こっている色々な「おかしなこと」の根源は、
高度成長期の中心世代が、既得権を固めるために構築したお城の
所為かと思っていたのであるが…少し考え直す必要がありそう。


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【歌舞伎】平成中村座 五月大歌舞伎 昼の部 2012年5月

2012-05-06 20:42:15 | 歌舞伎

一、本朝廿四孝 十種香

襖が開くと扇雀さんの勝頼。若々しく凛々しく憂いを湛えている。
右にいかにもな八重垣姫(七之助さん)、
左に落ち着いた大人な濡衣(勘九郎さん)。
「三幅対」。

八重垣姫は絵姿に恋焦がれるうぶなお姫様なんだけど、
かなり賢いし、姫君らしい心得をしているシッカリ者。
ちょっとした言葉尻を捉えてツッコミを入れる。
でも賢しくなく、けなげ。
七之助さんの可愛くて芯のあるお姫様は素敵。
いつか芯のない(?)役も観てみたいなぁ。

二、弥生の花浅草祭

上演時間45分、目が離せない。
舞台では踊りっぱなし、引っ込んで早替り。
落ち着いた高貴、きびきびとした働く人・変じて善玉悪玉、
侍と通人、紅白の獅子の毛振り。

染五郎さんと勘九郎さん。
今、こういうのを演じさせたら最高の一対かと。

三、め組の喧嘩

初役が意外な勘三郎さんの辰五郎。
男っぷりいい。
せりふの間合い、所作、お仲(扇雀さん。役幅広し)との掛け合い、
堪らなく江戸っ子。惚れ惚れ。

そして相撲とめ組の喧嘩。
集中力と瞬発力、掛け合い絶妙。客席まで暴れまわる。
屋根上り、モブ、戸板のシーン。リズムが崩れない。

梅玉さん(喜三郎役)、梯子から飛び込んで仲裁!

橋之助さんカッコよし、亀蔵さん面白し。

1月の新橋よりもメインキャストの身体性で押していた。
国芳の絵のように感じる瞬間もあったけれど、それよりも
舞台上のリアルな身体が前に出ていたと思う。

(2012.5.6)


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【歌舞伎】新橋演舞場 五月花形歌舞伎 夜の部 2012年5月

2012-05-03 00:03:46 | 歌舞伎

通し狂言 椿説弓張月

原作者をけっこう意識した上演・興行。イヤホンガイドも三島ネタで充実。
「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」は松竹配給じゃないよね。

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すごいところ・見どころは、場面場面、何箇所もあります。
各俳優さんたちもビシっと決めてます。

七之助さんの白縫姫にはシビレちゃったし。
染五郎さんの為朝もキメキメで格好いい。
高間太郎(愛之助さん)&磯萩(福助さん)は台詞少な目でも
息ピッタリ見せ場もある。
重石、いいバランスを取る、仰天過去の紀平治太夫(歌六さん)。

義太夫が流れを作って進行する。義太夫、ものすごく重要。

台が海を流れてきて、海上で詠う義太夫とか。船、波。大魚、猪、馬。
面白い仕掛けや道具も多数。波の下や何かで人がいっぱい活躍している。

衣装も美しい。琉球場面は、紅型、琉球絣をモチーフに入れたり。

細部まで作りこまれた贅沢な演目、スペクタクルを楽しみました。

それとこれは、貴種流離譚でもある。

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しかし、何だろう。

原作が馬琴で、演出は歌舞伎の要素で組み上げられていて、
パーツパーツは高度に構成・演出された歌舞伎なのであるが。
観終わっての全体観は、微妙に、歌舞伎っぽくないのである。

私はなぜそう感じてしまったのだろうか??
考えてみました。

 ・地に「毒」がない?意図せぬ澱みや不意を突く生々しさとか…。 
 ・つじつまに破綻がなさすぎ?
 ・空間の雰囲気がバレエを連想させるから?
  (見得よりも、場面の構図のほうに、美意識を発揮している感じ)。
 ・為朝?
   :

一番の原因は為朝かも知れない。
こんなに重要な役なのに、こんなにビジョンが出てない役も珍しいのではないか。
         ※ビジョン=人生目的、行動の本質的な目的の意で書いています。
為朝のビジョンは、強いて言えば「崇徳上皇」なのだけれど、
為朝から崇徳上皇に向かう「愛」は感じないのである。
大星と違って。
これは、染五郎さんの所為ではないと思う。
三島だからなのではないか。
とすると「愛」がない三島・為朝を、染五郎さんは演じ切った、ということか。

(2012.5.2)

追記: 三島自身による言葉より「瞬間で人を酔わせなければ形でない」。


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【歌舞伎】新橋演舞場 五月花形歌舞伎 昼の部 2012年5月

2012-05-02 23:51:02 | 歌舞伎

一、西郷と豚姫

見慣れないタイプの演目なので感想が書きにくい。

獅童さんの西郷のデカ声に吃驚。ほんとにびっくりした。
真摯で大らかでも苦悩もしているが、明るい機会での転換は早い。
矛盾を孕むキャラクターですが、破綻感なかったです。

翫雀さんのお玉、明るいけど切ない。
松也さんの岸野の酔っ払いっぷり、いやみのない絡み、よかったです。

時折、薩摩隼人というより「外国の方?」なところはありましたが。
薩摩弁と歌舞伎の発声の組み合わせって難しそう。
これは難役なのではないかと。

二、紅葉狩

西郷から間髪入れずなタイミングで獅童さんの維茂登場。
声枯れてる?
平氏の割に公家っぽくない。武士色強し。力強い維茂。

福助さん吉之助さんの踊り、席位置の関係で半分しか見えず。
もっとよく見たかったなぁ。

この日の外は梅雨の気配で湿気っぽい天候。
舞台は紅葉、武家な維茂、色気ムンムンの更科姫。
アンサンブルがビミョー。

三、女殺油地獄

がっちり魅せていただきました。

愛之助さんの与兵衛は、安心してハラハラするという、
妙な鑑賞モードで臨む。

特に河内屋のシーンが良かったです。上方。
秀太郎さんの存在は大きいですね。歌六さんの徳兵衛、
妹役の米吉さんと、家族の切ない空気がじわじわと。

福助さんが豊嶋屋女房お吉をとても抑えて演じていて
フツーにいい人、フツーに弱い人が、巻き込まれてしまう
不幸が表現されてました。ああ、かわいそう…。

(2012.5.2)

追記:勢いで西郷さんを肥後もっこすと記載してしまいましたが
    薩摩隼人ですね(恥)。訂正しました。


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気になる本 20120430-06

2012-05-01 21:46:13 | 気になる本

2012/5/01

心のルネッサンス!名僧、101の名言/植西 聰 著/成美堂出版 成美文庫
極端化する社会/有馬 淑子 著/北大路書房
上海モダニズム/鈴木 将久 著/中国文庫


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