Mr.大江のGUITAR TREK

クラシックギターとスタートレックをこよなく愛するミスター大江のブログです。

私の宝物 (その1)

2009-06-05 01:25:00 | 私の宝物
 「アンドレス・セゴビア」直筆サイン


1980年7月ギターの神様「アンドレス・セゴビア来日!」この一報が流れる。
日本中のギターファンが一斉に沸き立った!!

私は当時23才、写真以外にセゴビアの映像は極めて貴重で、めったにお目に
かかれない頃で、わざわざ名古屋から栃木県宇都宮市まで2日間かけて「セゴビア
演奏会の映像」と田部井先生の講演を聞きに出かけたりしてました。

セゴビアは当時すでに87才、日本に来日するなんて事はとても信じられない事で
高齢にも関わらず国内6会場での公演でした。入場券は全て売り切れ、日に日に
期待は高まって行きました。
(※2年後に4度目の来日、この時は89才で9回の公演、まさに超人だ!)

この時の半券チケットを私は後年のJ.ロドリーゴの名古屋公演の半券チケットと
共に大事に保管して有りましたが・・アレ?探しても何処にいってしまったのか・
・・無い!私の宝物パート2が・・とても焦っています。

さて、待望の演奏会は感動的でとにかく本物の「マエストロ・セゴビア」がそこに
居る!と云うだけでも夢のようで、会場には感動で涙する女性の方もおられました。

会場一杯に響き渡る演奏は、高齢で有っても正にあの「セ・ゴ・ビ・ア」の
演奏そのものとしか言い表せません。「ブラボーッ!ブラボーッ!!」と場内の
爆発的な盛り上がりの中で演奏会は終了しました。

当然、高齢のため終了後のサイン会は無し、舞台より近づく事も出来ません。
(※7月30日に行われた日本ギター界の代表112名が出席した歓迎会でもない
限り握手をする機会などまず有り得ないでしょう)

それでもセゴビアに直接会いたい・・いよいよ私のサイン奪取大作戦の開始です!
この日を迎えるに当たり私はまず色紙2枚と黒のマッキーを用意しました。

会場の外へ出る前に袋から色紙を出してフトコロに隠し、そしてマジックの
キャップがすぐ外れるように一度外してから軽く取り付けて置きます。
これは過去にキャップが固くて取れない事が有ったからです。

いざ外へ!・・「うわ~っ黒山の人・人・人・ダメだこりゃ~!」・・。

  愛知文化講堂の跡地(現在のオアシス21)


愛知文化講堂のVIP専用車両出入り口はコンサートを終えたセゴビアを
一目見ようと多くのファンで埋め尽くされていた。

私は外に出たものの最前列まで行くのは絶対無理、それにセゴビアの現れるで
あろう出口の約20m手前までがすでに封鎖されています。

残念だがムリだ「キッパリ諦めて次の手だ!」と以前からコンサートが終了した
後は裏側の大道具入り口が開いている場合があることを知っていた私は裏側へ
向う事にした。

偶然、賢三先生と外で鉢合わせた。
「賢三先生、表はもうダメだから裏に行きましょう!」と先生を誘い裏へ回って
行く、すると・・ナント!人影も何も無い所にポカーンと裏の出入り口が開いている
では有りませんか!しかし「関係者以外立入禁止」の札・・どうしよう・・。

まてよ「私はセゴビアのファンだから当然、セゴビアの関係者じゃないか!」・・と
屁理屈を考えて見たものの、若輩とはいえ良識ある?一般人ですからね・・。

でも、この機会を逃せば「生涯に悔いを残す」と思っても、中に飛び込むことには
やはり勇気がいる・・躊躇してしまいます。それに警備員に捕まってもイヤだし・・。

その時、私の友人で元暴走族のボスだった人の言葉をなぜか突然思い出しました。
根性を出したい時は「命までは取られん!」と思ってぶつかれば力が出るぞ!・・と。

それを思い出した瞬間なぜか腹の底から力の出た私は、「先生!行きますよ!」と
言葉を放ちつつ会館の中へと飛び込んだ。

中は真っ暗、建物の構造も解らない、しかしひたすら前へ前へと進む・・・。
すると明るい通路が見えた・・・何か大きな人影が・・・「あっ!セゴビアだ!!」
ちょうど控え室から外の出口へ向う途中なのだ!

「チャンス!」フトコロに隠してある色紙を取り出し、ポケットのマッキーも簡単に
キャップが取れた!そしてタイミング良く静かにセゴビアの前に回り、色紙とマッキー
を両手で揃えて頭を下げる。が・・セゴビアの巨体にビックリ!とにかく大きく太い!

セゴビアもチョット驚いた様子だったが、ニッコリと微笑んでくれた!
しかし横にいたマネジャーが大声で「マエストロはお疲れに成っている、こんな事は
やめてくれ!」とブツブツ言い出したが何も聞こえないフリをしていました。

するとセゴビアがマネージャーを静止するようにして愛用のステッキをギターを
持って同行している人に手渡した。「ヤッター!サインが頂ける!」と思いつつ
ギター持ちの人を見ると・・何と、松田先生ではないか!約1年ほど前に1年弱
レッスンを受けていたその人である。

毎回のレッスン終了後にスペインの旅行写真やセゴビア先生のお話を皆で伺っていたが、まさか本当にセゴビアに同行されているとは・・。まあ知らないフリしておこう・・数多くのレッスン生の一人だから解らないだろうけど・・。

 アンドレス・セゴビア

サラサラとサインを書いているセゴビアの周りとスペイン美人な奥様の間を駆け
抜けるように、小さなご子息が通路を走り回っていました。

マエストロから二言三言言葉をかけて頂きましたが、意味が解らず「微笑返し」
と覚えたての「スペイン語」でお礼を言ってサインを頂きました。

そして握手!

「何と大きな手なんだ!」私の指が真っ直ぐに伸びても指先が出ない状態のまま
真綿のように柔らかなあたたかい手ですべて包み込まれてしまう。

写真でしか見たことの無いセゴビアの手と握手をしている自分が信じられない
気持ちでした。

数十年を経た今もこの時の手の大きさ、やわらかさ、ぬくもり、そしてやさしく
語りかけて微笑んでくれたマエストロの思い出は何よりも大切な記憶です。

残念ながら、賢三先生はマネージャーに制止されてしまいました。

その後、出口へ向う一団の後ろをノソノソと着いて行きましたがセゴビアが
出口に姿を出した瞬間、怒涛のような歓声と熱い視線がもの凄い圧力で迫って
来ました。

人の気がこんなにも強いとは!本当にビックリです。
一緒に外へ出ようとしましたが観衆の凄い気の圧力で通路に押返されてしまいました。

この聴衆の歓喜と歓声こそが、80年の長きに渡り、常にギター界を切り開きその
先頭を走り続けた「アンドレス・セゴビア」の芸術家としての賞賛であると確信しました。

これからもギターの神様「アンドレス・セゴビア」を語り続けたいと思います。

「セゴビアの直筆サイン」これが私の宝物(その1)です。

尚、数十年経った今もこのサインの上部に書いてある言葉が解りません
誰か解る方がおられましたら是非、教えてください。

終わり。