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青き修羅

桑島法子さんの朗読夜を中心に賢治朗読の紹介・感想や賢治関係雑文。アニメ作品とそこでの声優さんの演技について感想等も。

○桑島法子「朗読夜 ~hitori gadari~」 040516 静岡サルナートホール

2005-12-10 17:18:01 | 賢治朗読ー朗読夜
 全体的に何かしっとりした雰囲気でありました。雨のせいもあるのでしょうが、何か桑島さんの声や気配からそういう雰囲気が醸し出されておりました。大人の雰囲気?(笑)虫の音もそれをいい感じに引き立てていました。でも、亡くなられた岡崎律子さんのこととも関係しているように感ぜずにはおれませんでした。どこか死を悼む気持ちが。まあ、自分がそんな気持ちだからかもしれません。 

・「雁の童子」
 泉で出会った老人はその須利耶さま本人なんでしょうね。天上で罪を犯し雁になった
人々。理不尽にも銃で撃たれるのだが、実はそれが彼らの救い。撃たれて罪滅ぼしを果たす。地獄からの解放。魂の輪廻の再開。たった独り残された童子。なぜ彼だけ罪滅ぼしできない。食べる事への罪の意識、かなしみ、嘆き。壁画と別れの予感。童子が消えてゆく刹那さ(&切なさ)。本当に深いお話で、それをじっくりと織り上げてゆく声。岡崎律子さんのことと何かつながっている感じがずっとしていました。ほんと「一期一会」ですよね。朗読ならさしずめ「一期一語」「一期一声」「一期一文」「一期一作」「一期一会(かい)」ー何か切りがない!

・「猫の事務所」
 語りの声も、(桑島さんの声としては)今までに聞いたことないような、高い声のギャル風で、こけおろしてる感じでおもしろかった。カマ猫くんは少年風。重みのある男性声の黒猫。うーん、どれか覚えてないけど、確か一番書記の白猫は高い声、二番書記の虎猫は、三番書記の三毛猫のしゃがれ声。そして、獅子は桑島さんらしい凛々しくて気高い声。いろんな声を楽しむ事ができた。脇のタンバリンを叩いての効果音が楽しかった。

・「鹿踊りのはじまり」
 2年前の「冬囲」の時より味わいが増しています。情景は美しいし歌も楽しいし、何度聞いてもいいです。でも、やはり「冬囲」の時同様、「高原」とセットで聞きたいです(味わいが増しますし、短いですし)。

・「永訣の朝」
 一通り全体ができてきた感じ。でも、桑島さんなら初めからこの形でできそうに思えてならないのですが。思い入れがあるからじっくり時間をかけて少しずつ手ごたえを確かめながら彫り込んでいったのでしょうか。まあ、確かにポピュラ-な割に、賢治作品では朗読するのに一番難しい作品の一つではありますが。間を今までより取っていましたし、言葉をかみしめるように詠んでいました。「ああ」の感嘆が静かで哀感があってよかったです。「あらおらで~」も今までよりずっとゆっくりと悲しげに詠まれ、切なくなっていました。涙ぐんでいるようにも見受けられました。まあ、この詩ですからね。これもまた岡崎さんへの哀悼の思いも抱きながら聞いていて、ますますジーンときていました。

・「原体剣舞連」
 こちらも間がいつもより長いように感じました。美しさと力強さを兼ね備えた女性的な、そして、法子さんらしい形態へと向かっています。

○桑島法子「Roudokuya Platinicum~白金色の朗読夜~」 040118 中野ZERO

2005-12-10 17:15:40 | 賢治朗読ー朗読夜
今までで一番感動してしまいました。聞いてる自分もかなり気力体力使いました。

・「『注文の多い料理店』序」   橘先生がよく読まれる作品で自分も大好きなんで、大喜びで聞いていました。うーん、美しい。

・ 「小岩井農場 part4」       
特に情景を思い浮かべながら聞いていました。「ベムベロ」が「べんべらぼう」に似ててニヤリ。

・「岩手山」「くらかけ山の雪」    再演ですが、何度聞いてもいいですね。
・ 「山の晨明に関する童話風の構想」 賢治らしい感じで。

・「なめとこ山の熊」  
 ちょうど自分の次の朗読会のテーマが生と死だったんで、これを聞いてかなり刺激を受けました。生命について考えさせられる自分も大好きな作品です。親子グマのシーンは美しくも、切ない。涙がにじむ。お母さんな法子さん。熊を本当は殺したくない優しさにうたれました。自分から身を捧げた熊。どこか幸せそうに死んでいる。

・ 「水仙月の四日」   
 雪童のけなげさにうたれました。ピューピューが笑えた。パーカッションも絶妙に入ってきてよかったです。佐藤唯史さんのHPにも出てたので、その工夫と苦労が少しわかり、感慨もひとしお。ハケじゃなくてスーパーボールとは!

・「イーハトブの氷霧」 
 美しい。マルメロも出てきて、短いが味のある詩ですね。自分が前に一緒にやった方もライブで使っていたので、クルクル回すWhirling Tubes が出た時には思わずニヤリと笑ってしまいましたが、イイ感じの音が出てましたね。何か子どもの頃、おもちゃ屋で買ったのをクルクル回してたのが思い出されて、懐かしくもあり。ここで一句(川柳ですが)「佐藤さん チューブを回し 空を飛び(笑)」

・「岩手軽便鉄道の一月」 軽快で楽しい
・「政治家」       溶けてしまうとほんといいんですが。
・「雨ニモマケズ」    前回とあまりかわらない感じ。
・「永訣の朝」     
 「ああとし子」がいい感じ。「おらおらで?」の所はもう少しゆっくり読んでもいいのでは?

・「作品第三一二番」  
 全集文庫版のどこに載ってるか見つけられず。「銀河をめいめい」の所だけはネット上にもあったのですが。それにしても素敵な作品です。

・ 「原体剣舞連 ズバババババ!」 
仕上げに、迫力アップの新型「原体」をくらってクラクラ(笑)。

○朗読夜~青嵐~ 030406 前進座劇場・吉祥寺

2005-12-10 17:06:10 | 賢治朗読ー朗読夜
全体を通して春っぽさが漂っていました。朗読も,、悲しかったりえぐかったりするものにも, どこか爽やかさがありましたし。ズボン?の, 花のような?青い刺繍も爽やかで清清しい(まさに「せいせい」する感じ)。本当に清清しさと力強さをあわせもつ「青嵐」という感じで。今回は携帯を鳴らしてしまう人もいなかったですし(自分的にはあまり気にならないのではありますが)。

好きな朗読の順で(全部、よかったのですが、とりあえず)。

(1)「タネリはたしかにいちいち噛んでゐたやうだった」  
 なんか本当に寂しさに身につまされる感じ。賢治の、そして、自分自身の。なにか拒絶された感じで。自分の場合、真の友はいないのか、いつもそれを求めているのだけれど。

(2)「永訣の朝」 
 静かな部分に今までより悲しみがこもっていた。「ああ」は感嘆詞風でしたね。初めの「もうけふ~」は静かに語りかける感じでよかった。「雨ゆじゅとってきてけんじ」という読み方で、「賢治!」と語りかけているようで興味深かった。そういう意図で読んでいるのかわかりませんが、自分は「けんじゃ」の部分は「賢治!」とういう思いを込めて読むようにしています。

(3)「熊洞学校を卒業した三人」 
 主人公が三人とも死んでしまうので、「なめとこ山の熊」はやめたというわりには主人公は死にまくり(笑)。まあ、話の重さが違いますので。笑えるのだけど、リアルに想像しすぎて笑えなかったりします。えぐいですよね。そこがよいのですが。自分なんかはそのえぐさに感情が凍ったかんじになりますが、怖いもの見たさという感じでその感覚を楽しんでいます。法子さんは筋金入りでえぐいのや毒気が好きなようなので、そういうのをどのような感情で受け止めるのか興味深く思えます。大友まさともさんのキーボードがきれいだった(やっと名前を憶えたが漢字が?)。ただ欲を言えば、ベースももっとたくさん堪能したいです。彼はなんか渋さがあってかっこいいですね。あったかさもあるし。 ほぼ同じ内容である「蜘蛛となめくじと狸」のひとり芝居を2001年の宮沢賢治生誕祭で観たことがあります。「横浜ボートシアター」の吉岡紗矢さんによるインド神話の語りの手法を用いて身ぶり手ぶりを交えながら。呼び鈴をチリンチリンと鳴らしながらすごい迫力で。今回の朗読はそれとはまた違い、力強さとやわらかさが程よく混ざりあっていてまたよかったです。

(4)「雲の信号」 
 ほんと気持ちがいい。雲の信号はどんなものだろう。自分のイメージではロケットが打ち上げられるように宇宙に向かってまっすぐ伸びてゆく一筋の雲。強き決意の表明。それにしても、初めて読んで、谷川徹三編「宮沢賢治詩集」に掲載されているヴァージョンでは「春」という言葉が出てこないせいもあり、「雁もおりてくる」とあったので雁の渡りと思って秋の詩かと思ってしまいました。秋の朝でも「せいせい」するし。でも、春でも渡りの前なら夜にねぐらに降りてくるので、納得(まあ、賢治作品では季節を飛び越えていることもあるし、あまり気にしてもいけないのでしょうが)。

(5)「原体剣舞連」 
 どこか爽やかさも。移動しながら会場全体に語りかける感じでした。作務衣のズボン?が「押ス」と気合いが入る感じでピッタリでした。

(6)「雨ニモマケズ」
 本当にか弱い感じ。作物が枯れるのはそれだけで本当に悲しいです。生命が失われていく。

(7)「松の針」 
 とにかくせつなく悲しい。一緒に行ってあげたい賢治。松の針が生の実感を与える。自分だけ元気で別のことを考えたりしていることへの罪悪感も伝わってくる。悲しいのだけれど、松の針にはどこか爽やかさも感じてしまう。

(8)「春の雲に関するあいまいなる議論」
 雲への「ほのかなのぞみ」そしてあこがれ。まさに、ワクワクドキドキする春の感じが恋愛そのもの。とはいえ、「いかさま」と言っているように、もしかしたら単なる思い込みや幻想なのかも。その辺むずかしい所です。

最後に、「青嵐」を季語に用いた俳句をご紹介。

青嵐みどり児は手を前に出す   岸田稚魚
青嵐定まる時や苗の色      嵐雪
濃き墨のかはきやすさよ青嵐   橋本多佳子
略奪婚めきて甕はこぶ青嵐    石田波郷
夏嵐机上の白紙飛び尽す     正岡子規

上記に習って、恥ずかしながら自分も一句。   青嵐 呼ぶがごとしや 朗読夜   
     あちこち桜がきれいだったので、   見えねども 会場つつむ 桜花
      ズボンのきれいな刺繍を見て、   青き花 目に爽やかに 夏を呼ぶ

○朗読夜~たまて箱~ 0201222 所沢市民文化センターミューズ

2005-12-09 17:45:18 | 賢治朗読ー朗読夜
朗読:桑島法子、ベース&キイボード:大元さん(名前?)、メトロノーム

 まさに、開けてビックリたまて箱という感じ。何か華やかなクリスマス仕様の箱の中に、怖くてドロドロして悲しい冬っぽいのが詰っているようで。「もののけ姫」の鹿神のドロドロのよう。全体として、死が表現されている作品が多く、食う食われるの関係もあり、死と静寂の冬らしいものであった。一方で、冬のもう一面である次の活動や生へと繋がるものも。 「たまて箱」ということだったので、当日もプログラムを見ないで聞いていました。なので、いっそタイトルも言わずにやった方が始まるまでワクワクドキドキできてよかったかも。まあ、それだと、賢治作品になじみの薄い人には不親切になってしまいかねませんが。

春と修羅 序    
 メトロノーム、再登場ですね。音楽と相まって不思議な世界へ。こっちだったか次だかうろ覚えですが、音楽の音量が大きすぎに感じられた部分がありました。

注文の多い料理店 
 世界を楽しめてやはりよいです。食べられる方は怖いもんです。
岩手軽便鉄道の一月
 美しくてリズミカルで楽しげで、素敵な感じです。
高原       
 やっぱりこれは気持ちよいですね。生命の躍動感に満ちた内容と朗読がいいです。
岩手山      
 岩手山の雰囲気と賢治の暗い心持ちがにじみ出ていますね。冬に見たことないですが。

原体剣舞連    
 さすが法子さんという感じで、力強さと柔らかさを合わせ持っていて、よかった。音響のよさもあるのでしょうが、明らかに7月の時より声が大きくて迫力があった。

雨ニモマケズ   
 静かな中に力強さを感じ、回を重ねるごとに何となくではありますが、重みが増しているような。

○永訣の朝     
 静かな語り口で、より悲しさが伝わってきた。トシさんの部分も柔らかく、賢治への愛情が伝わってきた。激しめの部分もあり、メリハリがあってよかった。「こんどは生まれてくるだて~」の部分はちょっと早すぎる感じが。

土神と狐     
 とにかく狐が死んで悲しくてしょうがない。些細な嘘で殺されることになるなんて。とにかく悲しい。些細な嘘と笑って済ませられるような心の余裕があれば。大人気なくもあるが、恋すること、嫉妬することに慣れていない土神の悲劇でもあるんだろう。どこかに劣等感があったのだろう。とにかく迫力のあるドキドキさせられる朗読で、本当にすばらしかった。珍しく読み間違いが数カ所あったが、動揺が見えないこともあって、あまり気になりはしなかった。話の雰囲気がかわるので、途中に休み時間を入れたのはよかった。

○春と修羅     
 「土神と狐」とは湿地つながりだったりで、続けて読むことにより、賢治のより暗くつらい思いが伝わってきた。より工夫されていて、鬼気迫る迫力があって、すばらしかった。長くちゃんとした?形で歌ったのは朗読夜では初めてでは。美しくも恐い感じ。曲は大元さんかな?

○やまなし     
 美しくてかわいくはあるが、デザートにしてはエグい部分もあり、それがまたよいです。まるで法子さんみたいで。

○桑島法子 朗読夜の旅2002in府中  020721  府中芸術劇場  

2005-12-09 17:34:38 | 賢治朗読ー朗読夜
 全体的には作品の世界に浸ることができて心地よかった。さわやかだったり薄暗い感じだったり。「永訣の朝」と「原体剣舞連」は何か迷っている感じが強かったが、db(注:桑島さんのラジオ番組)の終了など影響しているのでしょうか?8月の2回を聞きに行けないので残念なのですが、きっと回を重ねるごとに定まって行ってよりよくなってゆくと思います。がんばって下さい。そういえば、何かマイクが低めで読みづらそうにもみえたんですが。

{好きだった順で}
(1)青森挽歌 悲しみに錯綜する賢治本人の声とそれ以外の声にコントラストがあり、低い声は迫力があった。初めて聞く人には難しい気もするが、雰囲気を楽しめばすごく心地よいと思う。めくるめく世界。そういう自分も来る時の電車の中で初めて呼んだのですが。ちょうど列車だったので、イメージしつつ。ドイツ語のテープの音と合せて読んだのはすばらしかった。トシさんへの思いが滲み出た朗読だった。聞いてて泣きそうになった所で、別の世界へ。映画「ダンサーインザダーク」を見た時のように、結局、泣けないんですが。ギルちゃんは幽霊なのでしょうか?かわいい感じ。「耳ごうど~」の部分は、一回だけで早いと聞き取りにくいです。いろんな言葉がイメージを膨らませてくれました。「力にみちて~」の部分は、本当に力強く感じでよかった。トシさんだけの幸せを願ってしまったことが滲み出ていた。静かに。

(2)稲作挿話 賢治の実習生へのあたたかい眼差しと、その一方で、暗い低めの声から厳しい現実やつらさ、何もできないのかといういら立ちや無力感が伝わって来た。特に最後の部分が祈りに満ちてよかった。筑波大の有機農業の先生がこの詩が好きで授業でも朗読しているので、すごく思い入れが自分自身にもあり、今回、朗読夜で聞けて、すごくうれしかった。

(3)曠原淑女 女性達がかっこよく爽やかな感じで、法子さんの声がピッタリ。夏にもピッタリ。

(4)毒もみすきな署長さん さすがに少年の声はうまくてかわいい。署長さんは低くて渋めでよかった。生BGMはグレードアップ(?)してて素敵でした。ただ、7列8番あたりはBGMの音が大き過ぎに聞こえました。位置の関係で仕方ないのかもしれませんが。「体を曲げて叫ぶ」の部分は情景が浮かんで、クスリ。「実は私」にビックリして、一瞬、耳を疑いました。まだ読んだことがなく、今回、予習が間に合わなかったので。でも、逆によかったかも。

(5)どんぐりと山猫 少年もドングリもリスも滝もかわいかった。リスのピュ-という効果音に笑えた。馬車別当は声が低くてすごくて、山猫も雰囲気でてました。ドングリの「わあわあわあ」はもっと大きい声でにぎやかに言った方がよいように思われました。BGMも合ってて楽しめました。前に加藤剛さんの朗読テープを聞いたのですが、さすがに男性だと少年というより青年でした。

(6)小岩井農場パート1 すごく心地よかったです。「ほんとうの~」の部分は語りかけるようでよかった。小岩井農場に今度、初めて行くのですが、より楽しみになりました(半分、仕事ではありますが)。

(7)雨ニモマケズ 前回よりも弱々しい感じで、より病床の賢治という感じ。どう読んでいいか迷っているという話でしたが、朗読する時はこう読むと決めているからなのか、あまり迷いは感じられなかった。真摯な態度が伝わってきます。この詩の考えに共感しているわけではないと言ってましたが、全部はともかく共感している部分もあるのですよね。誰だって欲はありますし。この詩の読み方がどうなって行くのか楽しみにしています(本人は大変かもしれませんが)。

(8)永訣の朝 トシさんの死際の静かな感じ。リアリティを強めた感じで前とはガラッと変えてきましたね。まだ何か定まっていなくて、不安定な読み方。そして、何か十分に声を伸ばしきれていないようにも聞こえたのですが。まあ、これから定まって行くのでしょうが。今後、どうなって行くのかこれも楽しみにしています。

(9)原体剣舞連 前回同様、歌うような感じ。でも、何か中途半端なようだし、手もプラプラしてるし。何か迷っているような感じで、前に比べてインパクトが弱いんですが。何か考えがあってのことと思うのですが。それとも喉への負荷が大きいからかもしれませんが。歌うような感じなら、完全にそうして欲しくもあるし。何かきついこと言ってしまった気もしますが、法子さんのあの「原体剣舞連』を聞きたいので。


○桑島法子 朗読夜~冬囲~ 020224 千葉市・ぱ・る・るプラザ千葉 

2005-12-09 17:32:55 | 賢治朗読ー朗読夜
 2階席だったのですが、本当にゆったりした心地よい朗読会でした。冬らしさと、光と影、生命の鼓動を強く感じられました。ベースとドイツ生まれのメトロノームの伴奏がすてきでした。会場の雰囲気もよく、別世界を楽しむことができました。また、花巻で買った鹿踊の人形さんを前に置いて法子さんの朗読を聞かせてあげた所、じっくり聞いている様子でした。 

「岩手山」
 おそらく夕暮れの岩手山に、己の心の光と影を投影しているのでしょうが。「高原」 心地よくウキウキでき、鹿踊りが目に浮かぶよう。

「原体剣舞連」
 さわやかにリズミカルに流れるよう声で奏でていました。

「鹿踊りのはじまり」 
 6匹の鹿の唄がリズミカルで、セリフも変化があって、方言も楽しめました。前日に長岡輝子さんの朗読CDを聞いたのですが、長岡さんのが老熟で柔らかいのに対し、法子さんのは若くてパワフルでした。鹿たちに親しみと愛着が持てた一方で、鹿の仲間入りできないさびしさ。人が恐ろしい存在であるから仕方ないのでしょうが。鹿踊りの動きにまさにピッタリ。鹿踊りの演目には、かかしが手拭の代わりに真ん中にいるのがあるということですが。

「冬と銀河ステーション」
 雪国育ちでないので実感できない部分もありますが、雪と氷に満ちた美しい世界をイメージできました。樹の凍っている様、溶けて枝ががばっつと起き上がる様、祭りの賑かさが伝わってきました。何かホッとさせられました。

「異途(いと)の出発」  
 暗い気持ちで旅立つ様子、心の暗がりを投影した様子がより伝わってきました。『春と修羅 第二集』の異稿の方のようですが。

「未来圏からの影」
 心の影が不気味ににじみ出てる感じがして、背筋がゾクゾクしました。「生徒諸君に寄せる」の‘未来圏からの風’が陽なら、こちらは陰でしょうか。

「くらかけ山の雪」
 まさに空に輝くたった一つの希望の峰々といった感じ。酒蔵で酵母の発酵を見たばかりなこともあり、見えないほど吹雪いている様が見えるよう。

「春と修羅 第一集 序」
 メトロノームが時空間を表現し、朗読とあいまって不思議な世界を醸し出していました。自分的には空に時間さえも超えていろんなものがでてくるイメージを持ちました。一緒に行った友人は、未来に出来てくる地層をイメージしたとのこと。二人ともこれが一番よかったということで一致しました。

「馬」 
馬のボロボロの姿が目に浮かぶようでした。きっと人もボロボロだったのでしょう。その人たちのボロボロ流した涙に泣けてきました。

「雪渡り」
 人とキツネの子たちの勇気と正直さに感動しました。ちょっとキツネにとっては不平等な感じもしてしまうけど。伴奏を伴った節がリズミカルでこちらも体が動いてしまう。自然の美しさ、人の恐ろしさも伝わってきました。

「雨ニモマケズ」
 死期の迫った賢治の弱々しさと悔しさ、願望がだいぶにじみでていました。

○「桑島法子 朗読夜ROMANTIK」010819  藤沢市湘南台文化センター

2005-12-09 17:30:34 | 賢治朗読ー朗読夜
 当日の朝くらいに東北から帰りつき、そのまま恵比須の東京都写真美術館に「アリーテ姫」を見に行く。少し早く着いたのでベンチで寝てたらおまわりさんに怒られてしまいました。それでも「アリーテ姫」はほんとによかった。あとからあとから心にしみてきました。

 さて、朗読夜の会場に近付き、その手前の喫茶店でひと休みしようかと思い、ひょっと店の窓からのぞきこむと、なんとそこに同じく朗読夜を聞きに来た友人の五島さんがいるではないか。2人してビックリ。喫茶店好きとは知ってはいたし、一緒にチケットを買ったから来るのは知ってはいたが、目の前でばったり出会うとは!さっそく東北の土産話をしまくってました。

 さて、朗読夜が始まると眠気も吹っ飛び、集中して楽しく聞いていました。ところが、疲労がたまっていたせいか、楽しみにしていた「無声慟哭」「永訣の朝」の所で、確か「無声慟哭」だったか、息ができないくらい激しく咳き込んで止まらなくてうずくまってしまい、ほとんど聞けなくて悔しいことに。どのくらい周りにうるさかったかわかりませんが、どうも御迷惑をおかけしました。この場でお詫び致します。あの時、咳き込んでいたのは自分です。


○桑島法子「朗読夜~春~」010325  abc会館

2005-12-09 17:16:18 | 賢治朗読ー朗読夜
 初めて朗読夜を、いや朗読会というものを聞きに行き、大感激。ネット上ですごいとうわさになっていた、生の「原体剣舞連」を初めて聞けたし。初めて生の動いている桑島さんを見れて、その気配を感じることができて、その朗読が聞けて、何か幸せな感じ。それに上演するというので、文庫版の全集を古本屋でかき集めて、上演の作品を読むきっかけになりました。「虔十公園林」では岩手弁を満喫できたし、「貝の火」ではいろんな登場キャラの声を楽しめましたし。

 この日、東京に行くというので、恵比須ガーデンシネマで上映されていた「ギター弾きの恋」をその前に見に行ってギターの音色に感銘をうけていたので、BGMにギターが用いられて、もう大喜びでした。ほんとギターっていいなって。(dbでこの映画のことが話題になっていたので、テレビ番組雑誌の映画紹介欄を見ておもしろそうだと観に行ったのでした。)