女の一生(125)
Guy de Maupassant
Une vie
———————【125】———————————
Avec lui, elle vivrait ici, dans
ce calme château qui dominait la
mer. Elle aurait sans doute deux
enfants, un fils pour lui, une fille
pour elle. Et elle les voyait
courant sur l'herbe entre le platane
et le tilleul, tandis que le père et
la mère les suivraient d'un œil
ravi, en échangeant par-dessus leurs
têtes des regards pleins de passion.
————————(訳)—————————————
彼と一緒にここで暮らして行くのだわ.こ
の海の見える静かなお屋敷で.きっと子供は
2人生まれるのよ.彼のためには男の子を、
私のためには女の子を産むのよ.するとジャ
ンヌの目にはプラタナスや菩提樹の立ってい
る草原の上を子供たちが駆け回っているのを
見ていた.その間ずっと、父親と母親の自分
子供たちの頭越しに、視線を交わし合いなが
ら、嬉しそうな目で彼らの姿を追いかけてい
たのだった.
———————⦅語句⦆—————————————
vivrait:(条現/3単) < vivre
calme:(形) 静かな、
château:(m)❶(都会の)宮殿.
パリなどの大都会ではpalace という.
❷(田舎の)大邸宅、お屋敷、
❸(昔からの領主の)城館、城
両翼をもつものが宮殿、主住居が塔の
ものが城と言えるのではないでしょうか.
たいていはこれらがミックスしたもので、
本文の邸宅もこれらの折衷のようです.
ロワール川沿いの城もこのミックス・
タイプのようです、
dominait:(直半過/3単) < dominer
dominer:(他) …を見渡す、見下ろす
mer:(f) 海
aurait:(直半過/3単) < avoir
sans doute:きっと、おそらく
voyait:(直半過/3単) < voir
voir:(他) 見る、見える
courant:(p.pré) < courir
courir:(自) 走る、駆ける、駆け回る.
herbe:(f) ❶草;❷[単数で集合的に]草原
platane:(m)[プラターヌ] プラタナス、篠懸の木
tilleul:(m)[ティユル, tijœl] 菩提樹、西洋菩提樹
シナノキ科の落葉樹のこと、一方、仏が
その下で覚ったという菩提樹(インド菩提
樹)はクワ科、(落葉の木も常緑の木もあ
る)で本文の木とは別もの.花屋で売られ
ている鑑賞用の菩提樹は西洋菩提樹.
tilleul である.葉が三角なのはインド菩
提樹、葉が丸いのが西洋菩提樹.シュー
ベルト歌曲のリンデンバウムは西洋菩提
樹、通称ティユール(tilleul)の名で知られ
る.
tandis que:(接句)❶…する間に、…している時に
❷…であるのに、一方、
suivraient:(直半過/3複) < suivre
suivre:(他) 追う、たどる、ついていく
œil:(m)[ウイユ œj] 目
複数はyeux [ィユー jø]
ravi, e:(形) 大喜びの、とてもうれしい
d'un œil / うれしそうな目で、目をほそめて
échangeant:(p.pré) < échanger
échanger:(他) 交換する、交わし合う
par-dessus:(前) …の上に[を、の]、
…を越えて、
Par-dessus les murs du jardin, on
aperçoit la mer. / 庭の塀越しに
海が見える.
regard:[ルガール](m) 視線
passion:(f) 情熱、熱意、熱中.
———————≪文法≫——————————————
Avec lui, elle vivrait ici, /
彼と一緒にここで暮らして行くのだわ
地の文なので、本来 " Avec lui, je vivrais
ici." となるべきところ、いわゆる自由
間接話法を用いて、ギュメを使わず、語り手
がその説明を中断することなく続けている場
面です.vivrait と条件法現在が出てきますが
これは「過去未来」用法で、ジャンヌが未来
を夢想していた、という過去.
尚、さっぷいさっぷい外語学院から記事回収作
業を行なっていましたら、たまたま、自由間
接話法のことを書いた箇所(ベラミの学習)
に出会いましたので、コピペしておきます.
—————————≪文法≫ ———————————————
dire などの伝達動詞がないので、自由間接話
法として訳しました.自由間接話法とは、je
の代わりにil となっているので、文言は間接
話法なのですが、que という発話指標がない
ということで、よりリアルな人物心情が描け
るという効果があるとのことです.
旧ブログ学習日記「ベラミ」(33)より
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