世界の天気予報を見

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陽気な声を出した

2016-09-01 11:12:26 | 日記

何といってもドラスニアの繁栄は交易にかかっているのだし、きみらのような外務省の人間たちが商人を隠れみのに活動しようというのなら、真のドラスニア人は遅かれ早かれ、どこの国からも歓迎されなくなるだろうよ」マルガーはドラスニア人特有の洞察力によって、シルクの正体をたちどころに見破っていた。
「おいおい、マルガーくん」シルクはわざとらしく。「何もそう深刻ぶることもないだろう。今日び、どこの国だって同じような隠れみのを使って情報活動を行なってるんだぜ。トルネドラ人しかり、マーゴ人しかり、あのタール人だってそうだ。わたしにいったいどうしろって言うんだい。胸に〝スパイ?でございますと看板をぶらさげて歩けとでも言うのかい」
「率直に言わせてもらえば、きみが何をしようといっさい関心はない」マルガーは険しい表情でやりかえした。「ただわたしはどこへ行っても、人々からじろじろ監視されることに、いいかげんうんざりしたと言いたいのだ。それというのもきみたちが信用できるような人間ではないからだ」
 シルクは無遠慮ににやりと笑って肩をすくめてみせた。「それが世のならいというものさ、マルガー。きみも早く慣れておいた方がいいぞ。これからもそいつが変わることはないだろうからな」
 マルガーはどうしようもないといった表情で、ネズミのような顔の小男をにらんでいたが、ぷいと背を向けると、自分のラバの列に戻っていった。
「今のはやり過ぎではないかね」ベルガラスは乗り物の上でいつものようにまどろんでいたが、首をもたげて言った。「やっこさんをあんまり怒らせたら、しまいには国境警備兵に密告されかねん。そんなことになったらいつまでたってもガール?オグ?ナドラクへなど着かんぞ」
「マルガーは口をつぐんでいますよ、ご老人」シルクが安心させるように言った。「もしそんなことをすれば、やっこさんだって取り調べのために足止めをくらいますからね。積み荷の中に少しばかりちょいとした品物を隠していない商人なんぞ、今日びどこを向いたっていやしませんよ」
「ならば、なぜやつをほうっておいてやらんのかね」ベルガラスがたずねた。
「いい暇つぶしになるもんでね」シルクは肩をすくめながら答えた。「さもなけりゃ、おもしろくもない風景を眺めてなくちゃならない。東ドラスニアは退屈でね」
 ベルガラスは不機嫌なうなり声をあげると、灰色の頭巾をかぶり、再びまどろみに落ちた。
 ガリオンの心はふたたび暗然たる思いに閉ざされた。起伏の多い荒野を覆うハリエニシダの茂みが風景にいっそう陰うつな色を与え、ほこりっぽい〈北の隊商道〉が白い傷あとのようにうねりくねっていた。空はもう二週間ちかく雲で覆われていたが、いっこうに雨の降りだす気配はなかった。隊商は地平線高くそびえる険しい山々につらなる、荒涼とした影のない世界をとぼとぼと進み続けていたYumei好用