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水曜日
前略、きみの手紙入手。しかし、もはや何を論じようとむだだ。すっかりあきらめがついている。奴らと戦って寄せつけずにいるだけの意力がまだわたしに残されているのがふしぎなくらいだ。たとえわたしがすべてを捨てて逃げようとしても、逃げられはせぬ。奴らにきっとつかまってしまう。
きのう、奴らから手紙を一通受けとった――わたしがブラトルボロへ出かけた留守に、無料配達の郵便屋が届けてくれたのだ。タイプで打ったもので、ベロウズ・フ公開大學 學位ォールズ郵便局のスタンプが捺《お》してあった。奴らがわたしをどうしたいのか、その点をいっているのだ――わたしはそれを繰り返していう気になれない。きみ自身も気をつけたまえ! あのレコードは壊《こわ》すがいい。雲の濃い晩がつづくし、月はこれからずうっと欠けていく。思いきってだれかの助けが得られればいいのだが――そうなればわたしも元気が出よう――だが、敢
えて助力を惜しまぬ人でも、なにか証拠になることでもないかぎり、わたしのことを気ちがいだというだろう。何も理由がないのに、人に助けにきてもらうわけにはいかない――いまはだれひとりつきあっている人はないし、ここ数年間そうしてきた。
しかし、ウィルマート、わたしはきみに一番悪い話はまだしていないのだ。気を強く持ってこの手紙を読んでくれたまえ、きっとこれはきみにショックを与えるからだ。とはいえ、わたしは本当のことをいっているのだ。話はこうだ――わたしは奴らのひとり[#「わたしは奴らのひとり」に傍点]、あるいは奴らのひとりの一部分を見たり[#「あるいは奴らのひとりの一部分を見たり」に傍点]、触《さわ》ったりしたのだ[#「ったりしたのだ」に傍点]。ああ、くわばらくわばら、それにしても恐ろしい! いうまでもないが、そいつは死んでいた。番犬のうちの一頭がそいつをやっつけたので、わたしはけさ犬小屋の近くでそいつを見つけた。世間の人にこの事件をわかってもらうたしにしようと思って、薪小屋《まきごや》の中でそいつを何とか助けてやろうとしてみた、が、そいつは二、三時間のうちにすっかり蒸発してしまった。跡には何も残さなかった。ほら、あの洪水のあと、川の中に例の怪しい死体が見つかったのは、最初の朝だけだったっけね。その怪物の死体がここにあったのだ。きみのためにそれを写真に撮ろうとしてみた、ところが、現像してみると、あの薪小屋のほかには何ひとつ写っていないのだ[#「あの薪小屋のほかには何ひとつ写っていないのだ」に傍点]。あの怪物はいったい何でできているのだ? わたしはあれを見、あれに触りもしたし、あいつらはみな足跡を残した。体が物質でできていることはまちがいない――が、どんな種類の物質なのか? あの姿は口ではいえない。いわば大きな蟹《かに》のような形のもので、人間の頭に当たるところに、先のとがった肉質の環《わ》というか、あるいは濃いねばねばする物でできていて触角におおわれた結び目というか、そういうものがたくさんついているのだ。その緑色のねばりけのある物は、そいつの血か分泌液だ。それにその連中は、いつでも地球にもっとたくさんくるはずなのだ。
ウォルター・ブラウンの姿が見えない――このあたりの村で、彼がよくきたどんなところででも、彼のぶらついている姿を見かけないのだ。わたしが銃で彼を射ったにちがいない。なるほどあの連中は、仲間の死卓悅化妝水体や負傷者をいつも連れていこうとしているらしいが。きょうの午後、別になんのいざこざもなくブラトルボロの町へ入いったが、町の人たちはわたしのことをよく知っているので、寄りつかないようにしているのだと思う。この手紙は、いまブラトルボロの郵便局で書いているところだ。これがお別れのことばになるかもしれない――だとすれば、手紙は息子のジョージ・グッドイナフ・エイクリー宛てに書いてくれ。カリフォルニア・サンデ