「公共サービス改革法」における“みなし公務員規定”というのは、刑法7条が適用されるみなし公務員であるとされているが、少しおかしいのではないかと思う。
この規定が根拠法になると考えるとすると、どうにも納得がいかない。そもそも刑法の言う“みなし公務員”は、そもそも根拠法ではないからだ。
そうすると「公共サービス改革法」の『みなし公務員とする』という条文”で規定されるから、というのはちょっとおかしい。「公共サービス改革法」に規定される個別の条文で「何々の公務を行うから~」と言うのであればそうだろうと思う。公務を行っているかどうか判断できない公務員でない者を“みなし公務員とする”と言ってみたところで“ハイそうです~”と承知するのは如何なものであろう。また、これに関連して地方自治法の指定管理者の条文(244条2の3)に“みなし公務員”規定がないから“みなし公務員ではない”という議論もおかしいのではないかと考える。
公の施設を管理する場合自治体の「直接管理」とするか「指定管理者」とするかについては、地方自治法244条2の3により、条例の制定を経ること、そして指定管理者条例制定後に、議会での指定手続きを経て指定機関になることから、当該指定管理者は“法定により公務を行う者”であり、みなし公務員となると考えられよう。
指定管理者なる制度ができ、公権力の行使である「公の施設」の利用承認等使用許可の事務が、民間の機関に委任されている。そこで素朴な疑問がある。これを偽造した場合「公文書偽造」となるのか?・・・ということである。
①つまり、指定管理者が作成・交付する「公の施設」の使用許可証は、地方自治法・自治体の指定管理者条例に基づき、自治体の長の権限(許可・不許可・取消し・附款等の行政処分)が委任されているため、当該業務は「法令に拠る公務」だと考えられる。そうすると、この機関(指定管理者)が作成・住民宛に交付した「利用承認等の使用許可証」は、行政機関から委任された公権力の行使をして許可したことを証する文書(狭義の意味で)であると。
②また、さらに自治体条例・条例の委任により施行規則で、指定管理者の作成すべき書式が行政文書としての形式で行政の長が規定している。
以上から見れば、今までの身分としての公務員・・・公務所・・・そこの公務のため作成された文書・・・という定義とは違った性質のものと言えるのだが、しかし、③委任された公権力の行使、④自治体の長が定めた形式により承認する、⑤これが告示されている、・・・等々の(新しい?)性質というものが発生しているように思われる。
ただ、「公務員」という身分を重視する考え方では、指定管理者の内部で、仮に、不真正に作成された文書に「公文書偽造」罪や「虚偽公文書作成罪」というリスクを背負わせるのはいささか酷なような気もするが、しかし、ほぼ確定したと言える判例によれば、“身分”ではなく、公務を行っているか否かと言うことなのである(下記参照)。
参照・・・「法令ニ依リ公務ニ従事スル職員」というのは、公務に従事する職員で、その公務に従事することが法令の根拠にもとずくものを意味し、単純な機械的、肉体的労務に従事するものはこれに含まれないけれども、当該職制等のうえで「職員」と呼ばれる身分をもつかどうかは、あえて問うところではないと解すべきである(昭和二八年(あ)第四一九一号同三〇年一二月三日第二小法廷決定、刑集九巻一三号二五九七頁、決定要旨第一点参照)。原判決及び第一審判決の引用した諸法令の規定によれば、本件郵便集配員Aは、右諸規定により公務に従事するものであり、その担当事務の性質は単に郵便物の取集め、配達というごとき単純な肉体的、機械的労働に止まらず、民訴法、郵便法、郵便取扱規程等の諸規定にもとずく精神的労務に属する事務をもあわせ担当しているものとみるべきであるから、仕事の性質からいつて公務員でないというのは当を得ず・・・(昭和31(あ)3869第14巻3号209頁最高裁判所第三小法廷)より抜粋。
これを援用し『公務員または公務所の作成すべき文書』が「公文書」であるとすると、『○○文化センター』という「公の施設当該施設である事業所の職員(なお公益法人の職員)」が、当該施設で作成した場合、以下の可能性について考えてみた。
即ち、①指定管理者が「みなし公務員」である場合と、②○○文化センターという公の施設が「公務所」にあたる場合の、何れかに当てはまるか否か・・・という場合だ。
①指定管理者が「みなし公務員」か?について
指定管理者は、地方自治法第244条2の3の規定により、○○市が関係条例を制定し、且つ指定にあたっては議会の議決を経て指定機関と成るものである。さらに、「指定の手続き」・「管理の基準」及び「業務の範囲」についても関係条例により規定することとなっていることから、○○市はこれらを条例で定めている。さらに、市長が制定・告示した規則により、指定管理者が行うべき利用許可につき、事務手続きと当該手続きの書式が定められている。
以上により、指定管理者の当該事務は市長の権限(公権力の行使)が委任されているものであるから、これを指定管理者が行使したことを証する利用承認等の使用許可証の作成・交付する行為を行い得る者は「みなし公務員」となる。・・・・と考えられる。
②公の施設が「公務所」か?について
公の施設であっても、公務員が不在であったり、この事業所(の人員)が清掃や警備といった個々の具体的業務を行っているに過ぎない場合には、この人員は「公の機関」たる性質を持たないから公務所ではない。
しかし、地方自治法・○○市条例に規定される公権力の行使を含む委任事務を行いうる機関(人員)が存在し、且つこれの行使を証する文書を住民に交付するとともに、この許可行為について市長に報告していることからすれば、当該指定管理者の事業所である当該公の施設は「公務所」である。・・・と考えられよう。
そうすると、例えば、「使用許可証」を当該機関以外の者が無権限に作成した場合には「公文書偽造罪(有形偽造)」を構成し、権限ある者が偽りの内容の文書を作成した場合には「虚偽公文書作成罪(無形偽造)」を構成するということになる。
また、指定管理者は、前述の通り、地方自治法第244条2の3の規定により、○○市が関係条例を制定し、且つ指定管理者の指定に当っては、議会の議決を経て指定機関と成るものである。さらに、「指定の手続き」・「管理の基準」及び「業務の範囲」についても関係条例により規定されている。
これら(法律の留保)により、利用承認等の使用許可行為は、当該『指定管理者限り』で行いうると考えられることから、これを「再委託」などして、別の法人格を持つ者(私人を含む)に代行させることも、“無権限の文書作成”になり、「公文書偽偽造罪」を構成する・・・と考えられるのだか、どうだろう・・・。
なお、指定管理者が作成した文書を「公文書と見なす」と規定している自治体も結構ある。大阪市・横浜市などが明文で規定している(この規定は妥当だと思う)。
要約的な解釈としては、指定管理者が「公権力の行使」を委譲されている場合には「みなし公務員」であり、同時に、指定管理者にかかる「公権力の行使につき作成された文書が公文書」ということとなろう。
この規定が根拠法になると考えるとすると、どうにも納得がいかない。そもそも刑法の言う“みなし公務員”は、そもそも根拠法ではないからだ。
そうすると「公共サービス改革法」の『みなし公務員とする』という条文”で規定されるから、というのはちょっとおかしい。「公共サービス改革法」に規定される個別の条文で「何々の公務を行うから~」と言うのであればそうだろうと思う。公務を行っているかどうか判断できない公務員でない者を“みなし公務員とする”と言ってみたところで“ハイそうです~”と承知するのは如何なものであろう。また、これに関連して地方自治法の指定管理者の条文(244条2の3)に“みなし公務員”規定がないから“みなし公務員ではない”という議論もおかしいのではないかと考える。
公の施設を管理する場合自治体の「直接管理」とするか「指定管理者」とするかについては、地方自治法244条2の3により、条例の制定を経ること、そして指定管理者条例制定後に、議会での指定手続きを経て指定機関になることから、当該指定管理者は“法定により公務を行う者”であり、みなし公務員となると考えられよう。
指定管理者なる制度ができ、公権力の行使である「公の施設」の利用承認等使用許可の事務が、民間の機関に委任されている。そこで素朴な疑問がある。これを偽造した場合「公文書偽造」となるのか?・・・ということである。
①つまり、指定管理者が作成・交付する「公の施設」の使用許可証は、地方自治法・自治体の指定管理者条例に基づき、自治体の長の権限(許可・不許可・取消し・附款等の行政処分)が委任されているため、当該業務は「法令に拠る公務」だと考えられる。そうすると、この機関(指定管理者)が作成・住民宛に交付した「利用承認等の使用許可証」は、行政機関から委任された公権力の行使をして許可したことを証する文書(狭義の意味で)であると。
②また、さらに自治体条例・条例の委任により施行規則で、指定管理者の作成すべき書式が行政文書としての形式で行政の長が規定している。
以上から見れば、今までの身分としての公務員・・・公務所・・・そこの公務のため作成された文書・・・という定義とは違った性質のものと言えるのだが、しかし、③委任された公権力の行使、④自治体の長が定めた形式により承認する、⑤これが告示されている、・・・等々の(新しい?)性質というものが発生しているように思われる。
ただ、「公務員」という身分を重視する考え方では、指定管理者の内部で、仮に、不真正に作成された文書に「公文書偽造」罪や「虚偽公文書作成罪」というリスクを背負わせるのはいささか酷なような気もするが、しかし、ほぼ確定したと言える判例によれば、“身分”ではなく、公務を行っているか否かと言うことなのである(下記参照)。
参照・・・「法令ニ依リ公務ニ従事スル職員」というのは、公務に従事する職員で、その公務に従事することが法令の根拠にもとずくものを意味し、単純な機械的、肉体的労務に従事するものはこれに含まれないけれども、当該職制等のうえで「職員」と呼ばれる身分をもつかどうかは、あえて問うところではないと解すべきである(昭和二八年(あ)第四一九一号同三〇年一二月三日第二小法廷決定、刑集九巻一三号二五九七頁、決定要旨第一点参照)。原判決及び第一審判決の引用した諸法令の規定によれば、本件郵便集配員Aは、右諸規定により公務に従事するものであり、その担当事務の性質は単に郵便物の取集め、配達というごとき単純な肉体的、機械的労働に止まらず、民訴法、郵便法、郵便取扱規程等の諸規定にもとずく精神的労務に属する事務をもあわせ担当しているものとみるべきであるから、仕事の性質からいつて公務員でないというのは当を得ず・・・(昭和31(あ)3869第14巻3号209頁最高裁判所第三小法廷)より抜粋。
これを援用し『公務員または公務所の作成すべき文書』が「公文書」であるとすると、『○○文化センター』という「公の施設当該施設である事業所の職員(なお公益法人の職員)」が、当該施設で作成した場合、以下の可能性について考えてみた。
即ち、①指定管理者が「みなし公務員」である場合と、②○○文化センターという公の施設が「公務所」にあたる場合の、何れかに当てはまるか否か・・・という場合だ。
①指定管理者が「みなし公務員」か?について
指定管理者は、地方自治法第244条2の3の規定により、○○市が関係条例を制定し、且つ指定にあたっては議会の議決を経て指定機関と成るものである。さらに、「指定の手続き」・「管理の基準」及び「業務の範囲」についても関係条例により規定することとなっていることから、○○市はこれらを条例で定めている。さらに、市長が制定・告示した規則により、指定管理者が行うべき利用許可につき、事務手続きと当該手続きの書式が定められている。
以上により、指定管理者の当該事務は市長の権限(公権力の行使)が委任されているものであるから、これを指定管理者が行使したことを証する利用承認等の使用許可証の作成・交付する行為を行い得る者は「みなし公務員」となる。・・・・と考えられる。
②公の施設が「公務所」か?について
公の施設であっても、公務員が不在であったり、この事業所(の人員)が清掃や警備といった個々の具体的業務を行っているに過ぎない場合には、この人員は「公の機関」たる性質を持たないから公務所ではない。
しかし、地方自治法・○○市条例に規定される公権力の行使を含む委任事務を行いうる機関(人員)が存在し、且つこれの行使を証する文書を住民に交付するとともに、この許可行為について市長に報告していることからすれば、当該指定管理者の事業所である当該公の施設は「公務所」である。・・・と考えられよう。
そうすると、例えば、「使用許可証」を当該機関以外の者が無権限に作成した場合には「公文書偽造罪(有形偽造)」を構成し、権限ある者が偽りの内容の文書を作成した場合には「虚偽公文書作成罪(無形偽造)」を構成するということになる。
また、指定管理者は、前述の通り、地方自治法第244条2の3の規定により、○○市が関係条例を制定し、且つ指定管理者の指定に当っては、議会の議決を経て指定機関と成るものである。さらに、「指定の手続き」・「管理の基準」及び「業務の範囲」についても関係条例により規定されている。
これら(法律の留保)により、利用承認等の使用許可行為は、当該『指定管理者限り』で行いうると考えられることから、これを「再委託」などして、別の法人格を持つ者(私人を含む)に代行させることも、“無権限の文書作成”になり、「公文書偽偽造罪」を構成する・・・と考えられるのだか、どうだろう・・・。
なお、指定管理者が作成した文書を「公文書と見なす」と規定している自治体も結構ある。大阪市・横浜市などが明文で規定している(この規定は妥当だと思う)。
要約的な解釈としては、指定管理者が「公権力の行使」を委譲されている場合には「みなし公務員」であり、同時に、指定管理者にかかる「公権力の行使につき作成された文書が公文書」ということとなろう。
(1)地方自治法 第十章 公の施設
(公の施設)
第二百四十四条 普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
2 普通地方公共団体(次条第三項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。
3 普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。
・・・本成文規定は、指定管理者が普通地方公共団体に代位して公務を行うことが出来る旨の規定である。
(2)地方自治法第二百四十四条の二の成文規定による「鴻巣市公の施設の指定管理者の指定手続等に関する条例」
・・・本条例は、鴻巣市が指定管理者を採用するための手続きについて定めたものである。
(3)鴻巣市文化センターを指定管理者が管理する旨を定めた「鴻巣市文化センター条例」
(指定管理者による管理)
第4条 センターの管理は、法人その他の団体であって、市長が指定するもの(以下「指定管理者」という。)に行わせるものとする。
(指定管理者が行う業務)
第5条 指定管理者は、次の業務を行う。
(1) センターの利用の許可に関する業務
(2) センターの施設及び設備の維持管理に関する業務
(3) 前2号に掲げるもののほか、センターの運営に関する事務のうち、市長のみの権限に属する事務を除く業務
・・・本条例は鴻巣市文化センターの管理については指定管理者が行う旨を定め、加えて公の施設である同施設の利用承認等使用許可という公権力の行使を市長に代わって行う旨を定めた条例である。
そうすると、最高裁判例に言う「公務を行う者」(昭和31(あ)3869第14巻3号209頁最高裁判所第三小法廷)より抜粋。<前略>・・・「法令ニ依リ公務ニ従事スル職員」というのは、公務に従事する職員で、その公務に従事することが法令の根拠にもとずくものを意味し、単純な機械的、肉体的労務に従事するものはこれに含まれないけれども、当該職制等のうえで「職員」と呼ばれる身分をもつかどうかは、あえて問うところではないと解すべきである(昭和二八年(あ)第四一九一号同三〇年一二月三日第二小法廷決定、刑集九巻一三号二五九七頁、決定要旨第一点参照)。原判決及び第一審判決の引用した諸法令の規定によれば、本件郵便集配員Aは、右諸規定により公務に従事するものであり、その担当事務の性質は単に郵便物の取集め、配達というごとき単純な肉体的、機械的労働に止まらず、民訴法、郵便法、郵便取扱規程等の諸規定にもとずく精神的労務に属する事務をもあわせ担当しているものとみるべきであるから、仕事の性質からいつて公務員でないというのは当を得ず・・・<後略>を援用すると、利用承認等使用許可という精神的労務に属する事務(市長に代わって公権力の行使を行うなど)を行う当該指定管理者は、みなし公務員と言うこととなるから、鴻巣市文化センターに勤務する指定管理者たる財団法人鴻巣市施設管理公社職員は刑法7条にいう“みなし公務員”であろう。
別な言い方をすれば、指定管理者には政府と共同している為政者としての『行為支配』ないし、『制度的管轄』に基づく“特別な義務が生じている”と言えるのである。
この場合の保護法益は国家的法益であると解されているが、その意義について争いがある。「職務行為の不可買収性」とする見解、「職務行為の公正」であるとする見解がある。さらに「職務行為に対する国民の信頼」を保護法益とする見解(判例の立場)もある。
以上「BIGLOBE百科事典」賄賂罪より引用。
「職務行為の不可買収性」、「職務行為の公正」、「職務行為に対する国民の信頼」という3つの見解があるが、何れにせよ、職務の性質として公正性を維持することが法益(国家法益)であると考えられることから、公権力の委任を受けた指定管理者が“みなし公務員はでない”とする理由の方が無いと考えられよう。
ただし、罪刑法定主義から言って、類推解釈や明確性を欠く処罰法の適用は許されないから、これと矛盾しないかどうかを検討する必要がある。
埼玉県草加市が公共サービス改革に関連し、国に回答を求め、これへの法務省回答として「刑法上の賄賂罪は、公務の適正・公正への信頼を保護法益とするものであるところ、同罪に特例を設け、「公務員」に「条例で公務とみなした業務に従事する民間人」を加えることは、個々の自治体によって、刑法上の保護の対象となる業務の種類にばらつきが生じ得る上、刑法的保護に値する適正・公正への信頼と無関係の業務についてまで、賄賂罪による保護を及ぼす余地を認めることとなり、刑法上の賄賂罪の本質に反するおそれがあるため、妥当でない。」としているが、「・・条例で公務とみなした業務に従事する民間人を加えることは、・・刑法上の保護の対象となる業務の種類にばらつきが生じ・・刑法的保護に値する適正・公正への信頼と無関係の業務についてまで、賄賂罪による保護を及ぼす余地を認めることとなり・・・」としていることからして、法形式の成文規定により”みなし公務員”とするのではなく、あくまで『刑法的保護法益』=「職務の公共性」という『国家法益』を保護すべき業務に法令上従事する者を『みなし公務員』というのである(法務省の回答は、刑法の機能である公益保護機能・自由保障機能・責任主義・罪刑法定主義《類推解釈の禁止・明確性の原則・慣習刑法の排除》から言っても妥当だろう)。
結局「公共サービス改革法」に成文規定されるような”みなし公務員規定”についてみる場合にも、上記職務の公共性という条理解釈が必要ということとなるから、罪刑法定主義にのっとれば、類推解釈や明確性を欠く解釈は許されないのであるから、職務の公共性と無関係な犯罪についてまで、この“みなし公務員”規定を適用することはデュープロセスに反することとなる。
みなし公務員の犯罪という“身分犯”であっても、「法令による公務」という『職務の性質』に、その処罰法適用の根拠がある、ということなのだろう。
事実の錯誤説・・・
事実の錯誤として故意を阻却する。
r.違法な作成をしても、初めから本罪の構成要件に該当しないと解すべきであるから、違法性は記述されない構成要件要素である。従って、その認識が必要となる。
c.軽率な行為者を不可罰とすることになり、公務の保護に著しく欠ける。
c.職務の適法性は規範的構成要件要素であるから、素人的認識(一般人の平衡感覚)があれば故意の存在が肯定される。
法律の錯誤説
法律の錯誤として必ずしも故意を阻却しない。
r.職務執行行為の適法性は、職務行為に対する刑法的要保護性の問題であるから刑法独自の法的評価に属する特殊な違法要素であって、故意における認識の対象には含まれない。
c.職務行為の適法性は職務行為に対する刑法的要保護性すなわち実質的利益衡量の問題である以前に、犯罪の形式的成立要件(=構成要件)である。
二分説(大谷説)
適法性を基礎づける事実と適法性の評価とを区別し、前者の誤認のみを事実の錯誤とする。
r.職務行為の適法性は構成要件であるが、構成要件要素に関わる事実であっても、特に規範的概念については、その評価面においてのみ誤信が生ずることがあり、この場合は違法性の錯誤と解すべきである。
c.事実的側面と評価的側面とを区別するのは甚だ困難である。
・・・う~ん・・・
結局、法律(制度)により禁止されていることを知らなかったとしても、行為自体の錯誤以外は故意責任が阻却されないということだろう・・・。
また、制度管轄者(制度の保護者)としての義務と言う者も存在するであろうから、「法律の錯誤説」を批判した「c.職務行為の適法性は職務行為に対する刑法的要保護性すなわち実質的利益衡量の問題である以前に、犯罪の形式的成立要件(=構成要件)である」に説得力がある。