昨年の暮から、労働問題の投稿が多くなってしまっている。
以下は、昨日(2009年1月24日)の朝日コムhttp://sitesearch.asahi.com/.cgi/websearch/websearch.plの記事より拾った話題である。
記事によると、自動車の減産に伴い、派遣労働者の削減を進めている行田市藤原町の自動車部品メーカー「ショーワ」本社埼玉工場前で六日、一般合同労組「さいたまユニオン」の組合員ら四人が抗議ビラを配った。出勤する労働者に「派遣切りをやめさせよう」と、派遣契約の中途解除や更新拒否(雇い止め)に対し泣き寝入りしないよう呼び掛けた。<中略>
同社によると、同工場の労働者は約九百人。派遣労働者は十二月末現在約二百六十人で、このうち約百人を今月削減する。大半が中途解除という。<中略>
ビラは、自動車業界の過去の好況は夜勤や重労働を派遣労働者に押し付けて成立したと指摘。不況による派遣労働者使い捨てを非難し、「派遣契約の中途解除は違法」「正当な理由なき雇い止めは無効」などとしている。同労組に加入した派遣労働者七人のうち四人が職場を追われ、残る三人も今月末に解雇されるという。<引用終わり>
なお、朝日北埼玉版(2009年1月24日)が報じるところによれば、同労組はこれまで派遣元と交渉をしてきたが、派遣先である株式会社ショーワは「雇用関係が無い」として交渉には応じていないという。
同社のデータは、同社HPhttp://www.showa1.com/jp/corporate/profile/domestic/saitama.htmlによると、埼玉県行田市藤原町1-14-1従業員数1,041人(2008年3月)敷地内に製品の開発拠点と製造拠点が併設、四輪車用ショックアブソーバと船外機用油圧機器の機械加工・熱処理・組立までの一貫生産を行う専門工場、四輪車用ショックアブソーバの研究開発拠点というものである。
さて、下記は一般論であるが(従って上記報道の事例と合致するとは限らないという前提である)、派遣先も派遣労働者を指揮命令し、労働基準法や労働安全衛生法上の使用者責任を有し、派遣労働者の労働条件を直接支配するものである。したがって、派遣労働者の所属する労働組合の代表者との団体交渉に応諾する義務を負うと考えられる。
最高裁は、派遣先使用者に、派遣労働者の組合と団体交渉する義務があることを確認している(朝日放送事件・最高裁判決参照http://www.asahi-net.or.jp/~RB1S-WKT/asahi01.htm)。
前回の投稿『派遣労働者のための “国家による”自由 と “国家への”自由』で検討したとおり、そもそも労働者派遣というのは、労働関係というものを「使用関係(=指揮監督)」と「雇用関係」に分け、個別の労働者について、前者を派遣先との関係,後者を派遣元との関係によって成り立たせようという制度である。労働関係というのは使用関係と雇用関係の総和を言うのであるから、これらが別々の法人が担っているからといって、雇い止め(失業)という行為・結果を個別化して論じることは誤りなのである(責任は個別化するが、行為は連帯するであろう)。
ところで、今回の報道が事実とすると、今月削減する派遣労働者の大半が中途解除で、これが原因で派遣元が解雇、さらに寮も追い出されるという今回の行田市「ショーワ」の事例は、派遣先による“派遣の解除”=派遣元が“解雇”という相当な因果関係を持つようにも思われる。
一般論に戻るが、少なくとも、使用者の地位たる派遣先は、労働組合法に基づく「団体交渉」を拒んではならない。
また、これとは別に、労働者派遣契約を中途解除して、この結果、派遣元と派遣労働者の解雇を決定付けた(行為支配)とすれば、派遣先の「雇用責任」についても検討・追及されるべきであろう。なぜなら、派遣切り=解雇という相当な因果関係の存在が、派遣元と派遣労働者との雇用関係を弱める要素と、これに比例して派遣先と派遣労働者の直接の雇用関係を強める要素になると考えられるからである。
結局“派遣先による派遣切り”が、“派遣元による解雇”を惹起し、派遣元がこれを解雇の理由としているのであれば、当該派遣元の法人格が否定される要素となるであろうし、このような場合には、当該派遣労働者には元々、派遣先と労働関係の大部分があったと考えられるのである。つまり、派遣元(派遣会社)は、単に使用者に代わって労働者募集を行っていたに過ぎないか、若しくは、労働者供給を行って報酬を得ていたに過ぎない、ということも言えるであろう。
《追記》
正社員の労働組合も(存在していればだが)事例のような“派遣切り”によって、班替え・シフトの変更・ラインの都合による夜勤の増加など、労働条件の変更や安全衛生体制の変更が当然発生するであろうから、ここは使用者に対して団体交渉を行うべき時であろう。
・・・“対岸の火事”と思う無かれ!・・・。
《追記2.》
参考までに ジャンジャンブログhttp://www.news.janjan.jp/living/0812/0812123374/1.php に、『「派遣切り」対策マニュアル』(田中龍作氏2008/12/13)が掲載されているので、その部分につき以下に引用する。
引用開始・・
1、契約中途解除、契約更新拒絶と退寮通告
会社から「○月○日で解雇です」「契約終了です」「契約を短縮します」と言われたら・・・
「解雇は認めません。働き続けます」と答える。
「解雇と同時に寮も退去して下さい」と言われたら・・・
「寮は出ません。ここに住み続けます」と答える。(※1・借地借家法が根拠)
「家賃は払えるのか」と問われたら・・・
「家賃は払います。今まで通り給与から天引きして下さい」と答える。
「解雇だから給与は払えないよ」と切り返されたら・・・
「解雇は認めません。今まで通り給与を払って下さい」と答える。
2、解雇通知あるいは短縮契約に同意のサインをしていたら・・・
別紙でサインの無効を主張する(※2・ひな型)
3、シフト減を要求されたら・・・
従来の労働日・労働時間の維持を要求する
4、雇用保険
a、未加入の場合・・・
遡及加入手続きをする。最寄のハローワークで「雇用保険被保険者資格確認請求」をする。
b、離職票の発行
・1週間以内に発行してもらう
・「事業主都合」で発行してもらう
・住居喪失の場合の失業給付受給(模索中※3)
5、生活保護(※4)
6、有給休暇を取得する
7、ユニオンを結成して闘う(※5)
~以上『派遣切り対策マニュアル骨子』~より・・引用終わり。
以下は、昨日(2009年1月24日)の朝日コムhttp://sitesearch.asahi.com/.cgi/websearch/websearch.plの記事より拾った話題である。
記事によると、自動車の減産に伴い、派遣労働者の削減を進めている行田市藤原町の自動車部品メーカー「ショーワ」本社埼玉工場前で六日、一般合同労組「さいたまユニオン」の組合員ら四人が抗議ビラを配った。出勤する労働者に「派遣切りをやめさせよう」と、派遣契約の中途解除や更新拒否(雇い止め)に対し泣き寝入りしないよう呼び掛けた。<中略>
同社によると、同工場の労働者は約九百人。派遣労働者は十二月末現在約二百六十人で、このうち約百人を今月削減する。大半が中途解除という。<中略>
ビラは、自動車業界の過去の好況は夜勤や重労働を派遣労働者に押し付けて成立したと指摘。不況による派遣労働者使い捨てを非難し、「派遣契約の中途解除は違法」「正当な理由なき雇い止めは無効」などとしている。同労組に加入した派遣労働者七人のうち四人が職場を追われ、残る三人も今月末に解雇されるという。<引用終わり>
なお、朝日北埼玉版(2009年1月24日)が報じるところによれば、同労組はこれまで派遣元と交渉をしてきたが、派遣先である株式会社ショーワは「雇用関係が無い」として交渉には応じていないという。
同社のデータは、同社HPhttp://www.showa1.com/jp/corporate/profile/domestic/saitama.htmlによると、埼玉県行田市藤原町1-14-1従業員数1,041人(2008年3月)敷地内に製品の開発拠点と製造拠点が併設、四輪車用ショックアブソーバと船外機用油圧機器の機械加工・熱処理・組立までの一貫生産を行う専門工場、四輪車用ショックアブソーバの研究開発拠点というものである。
さて、下記は一般論であるが(従って上記報道の事例と合致するとは限らないという前提である)、派遣先も派遣労働者を指揮命令し、労働基準法や労働安全衛生法上の使用者責任を有し、派遣労働者の労働条件を直接支配するものである。したがって、派遣労働者の所属する労働組合の代表者との団体交渉に応諾する義務を負うと考えられる。
最高裁は、派遣先使用者に、派遣労働者の組合と団体交渉する義務があることを確認している(朝日放送事件・最高裁判決参照http://www.asahi-net.or.jp/~RB1S-WKT/asahi01.htm)。
前回の投稿『派遣労働者のための “国家による”自由 と “国家への”自由』で検討したとおり、そもそも労働者派遣というのは、労働関係というものを「使用関係(=指揮監督)」と「雇用関係」に分け、個別の労働者について、前者を派遣先との関係,後者を派遣元との関係によって成り立たせようという制度である。労働関係というのは使用関係と雇用関係の総和を言うのであるから、これらが別々の法人が担っているからといって、雇い止め(失業)という行為・結果を個別化して論じることは誤りなのである(責任は個別化するが、行為は連帯するであろう)。
ところで、今回の報道が事実とすると、今月削減する派遣労働者の大半が中途解除で、これが原因で派遣元が解雇、さらに寮も追い出されるという今回の行田市「ショーワ」の事例は、派遣先による“派遣の解除”=派遣元が“解雇”という相当な因果関係を持つようにも思われる。
一般論に戻るが、少なくとも、使用者の地位たる派遣先は、労働組合法に基づく「団体交渉」を拒んではならない。
また、これとは別に、労働者派遣契約を中途解除して、この結果、派遣元と派遣労働者の解雇を決定付けた(行為支配)とすれば、派遣先の「雇用責任」についても検討・追及されるべきであろう。なぜなら、派遣切り=解雇という相当な因果関係の存在が、派遣元と派遣労働者との雇用関係を弱める要素と、これに比例して派遣先と派遣労働者の直接の雇用関係を強める要素になると考えられるからである。
結局“派遣先による派遣切り”が、“派遣元による解雇”を惹起し、派遣元がこれを解雇の理由としているのであれば、当該派遣元の法人格が否定される要素となるであろうし、このような場合には、当該派遣労働者には元々、派遣先と労働関係の大部分があったと考えられるのである。つまり、派遣元(派遣会社)は、単に使用者に代わって労働者募集を行っていたに過ぎないか、若しくは、労働者供給を行って報酬を得ていたに過ぎない、ということも言えるであろう。
《追記》
正社員の労働組合も(存在していればだが)事例のような“派遣切り”によって、班替え・シフトの変更・ラインの都合による夜勤の増加など、労働条件の変更や安全衛生体制の変更が当然発生するであろうから、ここは使用者に対して団体交渉を行うべき時であろう。
・・・“対岸の火事”と思う無かれ!・・・。
《追記2.》
参考までに ジャンジャンブログhttp://www.news.janjan.jp/living/0812/0812123374/1.php に、『「派遣切り」対策マニュアル』(田中龍作氏2008/12/13)が掲載されているので、その部分につき以下に引用する。
引用開始・・
1、契約中途解除、契約更新拒絶と退寮通告
会社から「○月○日で解雇です」「契約終了です」「契約を短縮します」と言われたら・・・
「解雇は認めません。働き続けます」と答える。
「解雇と同時に寮も退去して下さい」と言われたら・・・
「寮は出ません。ここに住み続けます」と答える。(※1・借地借家法が根拠)
「家賃は払えるのか」と問われたら・・・
「家賃は払います。今まで通り給与から天引きして下さい」と答える。
「解雇だから給与は払えないよ」と切り返されたら・・・
「解雇は認めません。今まで通り給与を払って下さい」と答える。
2、解雇通知あるいは短縮契約に同意のサインをしていたら・・・
別紙でサインの無効を主張する(※2・ひな型)
3、シフト減を要求されたら・・・
従来の労働日・労働時間の維持を要求する
4、雇用保険
a、未加入の場合・・・
遡及加入手続きをする。最寄のハローワークで「雇用保険被保険者資格確認請求」をする。
b、離職票の発行
・1週間以内に発行してもらう
・「事業主都合」で発行してもらう
・住居喪失の場合の失業給付受給(模索中※3)
5、生活保護(※4)
6、有給休暇を取得する
7、ユニオンを結成して闘う(※5)
~以上『派遣切り対策マニュアル骨子』~より・・引用終わり。
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