ハチの家文学館

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一期一会

2009年02月19日 05時36分14秒 | ハチパパのひとり言

                               自然写真家 新井幸人氏の本


久しぶりにNHKラジオ深夜便4時台の「こころの時代」を聴いた。
二日連続で「尾瀬を撮り続けて30年新井幸人①②」である。

いつもは偶々眼を覚ました時に聴いているが、今回は月刊ラジオ深夜便2月号の番組表から、タイトルに惹かれて是非聴きたいと思っていた。
写歴46年になるが、新井さんの名前はこの番組で初めて知った。「そんなんで写真やってるなんて言えんのかよ!」と叱られそうだ。若いころは、アサヒカメラ、日本カメラ、フォトアートなどの写真月刊誌を読み漁っていたものだが、ここ20年以上写真雑誌は見ていない。何年か前に溜まりに溜まった写真雑誌を、子供会の廃品回収日に一挙に出した。その数は200冊以上は裕にあり、相当重かった記憶がある。とにかく写真界の情報は殆ど見聞きしていない。

さて、新井さんのお話を2夜聴いていて、感心感動したことが二つある。
ひとつは、「一期一会」のことばである。尾瀬を撮り続けて30年以上、5000日以上になるそうだが、あの特別保護区の尾瀬で行動範囲はかぎられているものの、同じ写真は1枚もないという。同じ場所、同じ季節、同じ時間に行っても、皆違うという。まさに「一期一会」ですと言われていた。

もうひとつは、インタビューワーのディレクターが「経済的には大変でしょう」という質問に、新井さんはこう答えている。
「いやあ、大変です」「21才のとき尾瀬の自然に感動したことが忘れられず、29才で家族がいるのに役場を辞めて、写真家の道を選んだ」「家族には大変迷惑をかけた」

テレビや新聞雑誌で、時々写真家の作品なり生活ぶりを見てきたが、感動したのは、北海道や信州など、厳しくも自然豊かな土地に家族ぐるみで引っ越して活動している姿であった。一時、写真家を夢見た私にとっては、憧れの家族生活に見えてしまうが、経済的には大変なんだろうと偏った見方をしてしまう。放蕩道楽オヤジの私には、勇気もないし、とてもできない決断である。

新井さんのお話を聴いていて、尾瀬の山小屋に働く人、尾瀬を訪ねる旅人など、年令、性別を問わず、様々な職業の人との会話も楽しみであり、新井さんの財産だとおっしゃっていた。写真家として、人間として、冥利に尽きることであろう。

進む道はそれぞれ違えども、新井さんのように一期一会の気持ちで写真を撮りたいと常々思っている。私が60才の定年を機に、仏像写真家を目指して地方の古寺を訪ね全国行脚をしたときも、「もう二度とここには来られない」「たった一度の出会い」という決心で、多くのすばらしい仏像に出会うとともに、ご住職や寺守の方とのお話が出来たことなど、まさに一期一会の覚悟の旅であった。

一期一会といえば、この全国行脚でのこと、ハチのおかげで犬好きの人がたくさん話しかけてくださり、その数60人あまり・・・。今でも手紙などの交流が続いている。四国八十八か所巡礼のときは、北海道で出会ったご夫婦や、和歌山橋杭岩で出会った若い女性グループと再会したりしている。

一期一会 いい言葉だ。仏教語で 一期は一生、一会は説法・仏事などの集まりをいうそうである。一期一会の成句は仏教語にはないようだが、仏教精神に基づくことは明らかと言われ、この言葉は千利休の弟子山上宗二の著の文章に出ている。(冬樹社刊山下民城著くらしの中の仏教語より)










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