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笠智衆

2019年12月29日 06時29分17秒 | ハチパパのひとり言

笠智衆といえば、寡黙な表情の老人役で大衆を惹き付ける名優。寅さんの「男はつらいよ」の柴又帝釈天の住職役でも有名だが、先日の日本映画専門チャンネルの笠智衆主演映画3本は、高齢者の私には身につまされる想いをさせられ2度も見てしまった。

一つ目は「ながらえば」。寝たきりの妻を名古屋の病院に残し、富山に転勤する息子一家と暮らさなければならない老夫。しかし妻に会いたいという思いは日ごとに強まり、ある日彼はわずか3千円を握りしめて名古屋へ向う列車に飛び乗ってしまう。だが、途中下車を余儀なくされた老父は、そこで、今しがた老妻に先立たれた旅館の主人(宇野重吉)と知り合うことになる。宿の主人に名古屋までの電車賃を借りて妻に会いに行く・・・。

二つ目は「冬構え」。妻亡きあとありったけの貯金を崩して東北の旅に出る老人の話。鞄の中には遺書が入っている。途中の旅館で知り合った板前と仲居のカップルに開業資金にと150万円を渡すが、老人が死を覚悟しているのではと察した板前は、老人を探してお金を返す。結局開業までの資金として借りることにしたが、板前の実家に泊めてその父親に死を思い止まらせる場面で終わる。

三つめは「今朝の秋」。ガンで余命幾ばくもない息子を突然病院から連れ出し、一人住む蓼科の自宅で一緒に住もうとする老齢の父親を演ずる。結局そのまま父親とともに過ごして息子は最期を迎えるが、笠智衆の父親愛溢れる演技が光る。

3作品ともに、笠智衆のセリフは「あぁ」「うん」「そうか」など短いが、年輪を重ねた老人の顔は笠智衆ならではの表情で、二度と出て来ないような名優として語り継がれるであろう。



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