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ハチの家文学館

ハチの家写真館(http://hachinoie.exblog.jp/)の文芸版

鈴の音

2013年07月14日 01時53分20秒 | ハチパパのひとり言

半月近くも早い梅雨明けと同時に、連日の猛暑で熱中症のニュースが恒例になっている。お盆の今日もとにかく暑い。ハチの薬が切れたので、行きつけの動物病院に出かけた帰りにスーパーに立ち寄り、おがら、お萩を買って帰る。

我が家の盆行事は41回目になる。自己流で仏壇に自宅庭のハランを敷き、その上にやはり自宅庭の茄子と胡瓜で作った牛馬を飾り、回転灯を燈してから夕方明るいうちに、玄関先でおがらを焚いて精霊を迎えるのである。おがらの燃える炎を見つめながら、27才のままの亡き妻を想う。

先日、古い書類を整理していたら、処分したと思い込んでいた「鈴の音」というタイトルの小さな白い本を見つけた。余命1ケ月のガン宣告を受けた先妻に、死の予告を伏せて渡していた白い本であるが、わずか数ページの記録が残されているのみで、大部分は白紙のままである。ガンの痛みに耐えかねて、早期に書く気力を失っていたのかもしれない。たった数ページの遺稿であるが、今でも闘病生活の記憶は強烈で鮮明だ。25/7/13

第1頁  鈴の音

真実一路の旅なれど 真実鈴ふり思い出す    山本有三

愛する妻鈴子へ  早く元気になって

(長男3才)岳晴  パパとママとお山に登ってヤッホー                                                                     (二男0才)道晴  オギャー フギャー

     昭和47年2月 登一より

第2頁  

愛  信  誠

第3頁  あなたが去った時

行っちゃった                                                                                               ドアがガタンとしまる                                                                                          笑顔で見送ったけれど                                                                                         しばらくボーッとして                                                                                                            スリガラスの向こうを見つめている                                                                                忘れ物でもしてもどってこないかと                                                                                                                            思いながら・・・。

でもあなたは来なかった                                                                                       今度はいつだろう                                                                                            明日という日が万里のかなたから                                                                                 のそりのそりとやって来る気がする                                                                               入院なんて一生に一度で沢山だ!

          47.2.24 p.m.8:30

第4・5頁  47.2.28(月)

きょうの空は素晴らしく美しい                                                                                    こんな青い空を見たのは本当に久しい                                                                          ぽっかりと浮かんだ一かたまりの                                                                                真白い雲があるだけで                                                                                     スモッグのことなどまったく忘れてしまいそう。

自分の体も早くこんな空みたいに                                                                                スッキリしたいと念願せずにはいられない                                                                          もう春なんだなあ・・・・・。

暖かくなる頃は四人で散歩に行けるだろう                                                                          そうならなくてはいけないと思った                                                                              きょうは朝あなたがきてくれただけで                                                                               一日が終わろうとしている 

月末で忙しいのだからあまり無理をしないで欲しい                                                                   風邪を早く良くなおして元気になって                                                                               逢った時は無理に来なくてもいいと言葉では言うけれど                                                                      でも今朝はまさか来てくれるとは思っていなかったので                                                                  実に嬉しかった。その実あなたの顔が一日一回見られれば                                                              誰も来なくっていいと思う。

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時々泣きたくなる                                                                                       色々なことを思い出して                                                                                   結婚前のこと・・・・・・

それから結婚できて                                                                                                     岳晴が生まれた                                                                                           何故岳晴をあんなに叱ったんだろうか                                                                              楽しかったことも悲しかったことも                                                                                   みんな涙で洗いたくなるのか?                                                                                      あなたのやさしさを思い出すと                                                                                又、目から水が出て止まらない

第6頁

病院へ                                                                                                夫が連れし                                                                                              みどり子よ                                                                                              早くこの手でミルクあげたし                                                                                  

     四十七年三月四日

義母と夫と道晴                                                                                               夕方病院の方に来る                                                                                      道晴は大変大きくなったようで                                                                                  すごく嬉しかったお母さんありがとう

第7頁

きょうは日曜日                                                                                            わが病室の前                                                                                           スリッパの音止まらず                                                                                          幾たりも通り過ぎぬ

       47.3.5

第8頁

きょうは長い廊下を一人で歩いて                                                                                                     電話をかけに行けた。(47.3.24)

22日頃から大分調子がよくなったみたいで嬉しい                                                                        そこらを片づけたくなって、動いた後気持ちよく眠れた                                                                   とにかく早く良くなって、元の家族と道晴を入れた生活に戻りたい。

主人のしてくれる一つ一つのことが                                                                                嬉しくて有がたくてもったいなくて                                                                                   本当になんと言って感謝の気持ちを                                                                             言ったらいいのかわからない。  

体をふいて足を洗ってくれた時は                                                                                   申し訳なくてしかたなかった                                                                                    だって私の主人なのに                                                                                        こんなことまでさせるなんて                                                                       私は夫不幸になりそう 

           47.3.24

 

 

 

今のカミサンとの生活は、亡き妻よりもずっと長くなる。こういう記録を公表することにも理解をしてくれた。敢えて実名のままにしたが、我が家の家族物語、エピソードは枚挙にいとまがない。私もカミサンも、波乱の人生を歩んできた。今の倖せも60余年に及ぶ人生の礎があってこそのことである。



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