木を見て森を見ず

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　鎌倉　円覚寺にて

木を見て森を見ずとは、多くの人が知っている諺。小さな部分に拘って、大きな全体を見失うことの喩えである。仏像写真家目指して全国のお寺さんを訪ねてきたが、時間の制約があったものの、仏像にばかり気を取られてお寺全体をよく見ないできた。

み仏の姿は仏像だけでなく、境内の花や木、灯火、水、石灯篭など、お寺のあちこちにあると思うようになった。華やかな季節にとらわれず、雨の日も雪の日も姿形を変えて、み仏の姿はお寺全体にある。それら一つ一つから、み仏のメッセージを感じとり、清浄な心が生まれる。写真は真実を写すと書く。どのような場面でも、み仏の心を写す心構えでいたい。