日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

2007年9月の東大阪歌会

2007年09月02日 | 五行歌な日々
今回の歌会の話は、
なんだか難しい……。ちゃんと書けるだろうか。

世界に旅立っていた北里英昭氏、
東大阪歌会には初参加の井上しのぶ氏を加えて、6人。

歌、お披露目。

     ★

        ひとつ又ひとつ
       殖えてゆく
       流れ星
       ブランコを
       揺らしていると    増田幸三

       余計なことを
       吹き込んで
       y=3x
       を
       困らせてみる     井上しのぶ

       「日曜はいつも
       のど自慢を見る」と言う
       祖母と
       もろこしをかじった
       いなかでの土曜       ほしかわなお

       自然よりも 暦よりも
       紅葉が
       すでに揺れてる
       スーパーの売り場に
       戸惑う           稲田準子

       我先にって
       スタートダッシュしようと
       しなくても
       順番はくるよと思う
       交差点           楽   人

       子に
       夢をと願うなら
       お父さん
       あなたが
       夢を追いなさい       北里英昭


     ★

増田さんの歌は、
まず「殖えていく」が読めなかった(笑)
「ふえていく」なんですけどね。
ちなみに私は「植えていく(木へんやんか……××)」と、
最初に読んで、混乱しました(笑)

個人的には、
最後の三行を読んで、
「ブランコに揺られていることで、星が流れ星になったのか!」
と思い、その点を評価して、点数を入れていた。

が、ブランコに作者が乗って揺られて実際に見ているわけではなさそう……。

それに、「殖えていく」……。
流れ星があって、殖える……。

「『しし座流星群』っていうのが、ありましたよね」
と、誰かが言ったので、「そういうことなのか!」と、
妙に納得していたのだが、
作者は別に、それは(知ってたけど)歌とは関係ないと仰っていた。

流れ星を見ると、「頭の中で」星がふえるという、
作者の頭の中の感覚なのだそうだ。

で、何故「殖えていく」なのかというと、
ご自分の名前にある「増」という字が嫌いで、
この字を当てたと仰っていた。

ただ「殖」は、
「利殖」とか「繁殖」とかのような、
ふえ方、つまり、
アメーバーのように、
ひとつの「個体」から分裂しては増えていくような
イメージがあるので、
読み手としては、
「一個一個独立したものが、足し算のようにふえるのではないのだな」
という認識から歌の世界をイメージしようとする。
しかし、そうすると、
一行目の「ひとつ又ひとつ」という言葉と、
「殖えていく」が、合わないので混乱する。

インパクトは、確かにあるんですけどね。
「殖えていく」。

ブランコは、おうちの近くにあるのだそうだ。

流れ星があって、ブランコが揺れていた(←作者が乗っていたわけではない)。

そこから、増田さんがイメージを膨らまして、
描いた景色の歌。

井上さんの歌は、
なんと言っても、
「y=3x」だ。

「y=3x」を困らせるということは、
y=3xって、「正比例の公式」と、
単純にそのまま見ると、「?」になる。

擬人化……して読むべきなんだろうな、と。

「3」にはきっと深い意味はないよな。
多分「4」でも「5」でもいいんだよね、と、
読み手、推理。

グラフで見ると、右肩上がりの真っ直ぐなナナメ線。
どんな人か?

……私なんかは、
「意志が強く、向上心あふれる人……いい人じゃん」と、
見えてしまう(笑)
でも、困らせたくなるんだろうから、
「融通が利かず、頑な」って感じなんだろうな、と、
つまり、
ネガティブ面に作者は、ちょっとうんざりしているんだろうな、と。

最初は、作者のいたずらっぽい、
おちゃっピーさが反映されているのかな?
と思っていたけれど、
読み手同士で話しているうちに、
そういう愛情的なものではないんだな、と思えてきた。

歌の中にあるスピードが、
情的な響きを殺しているのも伝わってきたし。

で、やっぱり、実際、作者に聞くとそうだったみたい。

会社の人なのだそうだ。
横で見ていて「そんなんでいいの?」と言いたくなる様な。
(↑確か、こんな感じのことを仰ってました)

ちなみに、ほしかわさんは、
「y=3x」をさらにひねって読んで、
「人」どころか「染色体のことでしょうか?」
と、仰って、

男ひとり(y)に=女(x)3人

という公式を作り上げ、

「そう思うと、この歌はドロドロしてくるぞ~!!」と、
大笑いした。

でも、結構好きでした。このヨミ(笑)

で、そのほしかわさんの歌は、
「日曜」と「土曜」の使い分けが、ミソ。

きっと戻って、
おばあちゃんはいつも見るのど自慢を、
自分はまた帰るから一緒に見ることはない、と。

戻るというか、
実際には、ハードスケジュールで、
日曜日には、東京のお友達に会って、
それから大阪に戻ってきたそうですが。

なにか、思い出の1ページのような明るさと寂しさのある、
不思議な色合いを持った歌でした。

稲田の歌は、
プリント出力をする際に修正したという、
少し卑怯な(笑)歌。

プリントする前は、

       自然よりも
       暦よりも
       はやく
       ディスプレイの
       紅葉が染まる

という歌だった。
「歌」というフォルムというか、
完成度としては、こっちのほうが美的でいいのかもしれない。

が、私は、
歌をそっちの方向へ収まらせる、
追求心は薄く(ないわけじゃ、ないよ)。

「はやく」という言葉がありきたりのように思えたのと、
「染まる」が、
「別に段階を踏んで紅葉になったものを使っているわけじゃない。
最初っから『赤』なのに」
というツッコミが、どこからともなく聞こえてきて(笑)、
気持ちと言葉が合わなくなってしまった。

しかも、そういうものの前で、
自分がどう思ったのか、
何か、そういうものを入れないと、
気持ちが治まらなくて。

それで、「戸惑う」と入れたのだが。

でも今、見直すと「戸惑う」でもないな、
この気持ちは、と思う。

どちらかというと「疲れる」のほうが近いと思う。

もう少し寝かせて、
客観視できるだけの余白を作って、
見るべき歌だったかな、と、
お披露目するタイミングの見極めを誤った感あり(笑)
       
ただ、のほほんと北里君が、
「この前、『秋味』のビールが飲みたくて探すとき、
紅葉のディスプレイを目印に探して、見つけて行ったんすよね」
ってことを話してて、

「そうか。
私にとっては、とても機械的に、
季節が室内でめぐるのが、
ひどくヒステリックに思え、
疲れるんだけれど、
本来の目的は、
彼のような人のためでもあるんだから、
自然や暦とかとは、
切り離して考えるべきなのかな。
結び付けすぎなのかな。私は。
そうか。
仕事で、一日中、
寒い冷蔵の前に立って、紅葉を見ているから、
疲れてくるのかな」

などなど、思えてきて、
息詰まった感じが、少し和らいだ。

楽人さんの歌は、
「交差点」とは限らず、
いろんな状況で、こういう心境になる、
というお話が飛び交ったけど、
私はどちらかというと、
我先にと、スタートダッシュするほうで(笑)

急ぐわけでもなく、一番になりたいわけでもなく。
ただ「血が騒ぐ」というのが、
一番の理由のような気がする(笑)

でも、特に自転車だと、
私を追い抜いていく人の背を見たくない、というのがある。
最初から見える人の背は気にならないが、
私を後ろから追い抜いていく背中は見たくない。

悔しいというよりは、心細くなってしまうから。

「いろんな理由でスタートダッシュがあるんだなぁ~」と、
楽人さんは言った。

北里くんの歌は、
まず稲田の中で、
「これは人に説教しているような響きがあるが、
歌である以上、自分に言い聞かせているんだろうな」と、
機械的に、気持ちを処理してから読んだ。

実際、「自分に向かって」ということだったが。

増田さんが、
「父親が夢を持つだけで、子供は夢を持つだろうか
父親が持つのは、夢だけでいいんだろうか」
みたいな事を確か言ってたような気がする。

私自身も「夢によるかもな」なんて、
部分的うなづきに留まる。

作者は、アジアだとかアフリカだとかの、
何カ国かの国を1年ちょっとで回って帰ってきた。

簡単にいうと、出会いを繰り返して、
「俺もなんか夢を持って、その姿を息子に見せよう」
と思ったのだそうだ。

で、今思っているのは柔道(いや空手だったか……?)や、
卓球のような、
一対一で戦うようなもので、
優勝する姿を、パパパパ~ンと息子に見せたいと、
考えているのだそうだ。

が、今は、世界を回るのに、
バスをはじめとする、いろんな乗り物に、
数十時間乗るような生活をしていたから、
体力というか、筋肉が落ちているのだそうで。

柔道などを習う以前に、
今は夕方、息子さんを横に従えて、
歩くか走るかして、体力を戻すことに、
頑張っているのだそうだ。

歌では、そこらへんの思いのことが、
掴みにくかったかな、という感は、
私にはあったけど、
まぁなんだかよくわからないエネルギーが、
歌になっていくだろうけど、
その口火を切った、
一番の歌は、こういう内容の歌なんだな、ってことで理解した。

あいかわらずのスピード感と鋭さでした。

     ★

二次会・三次会は、井上さんが帰られて、5人で。

北里くんの世界周りのお話や、
ほしかわさんの日本文学館から届いた、
公募の歌を集めた本や、
私の松山歌会でのお話を。

北里くんは、またいつか、
世界じゃなくても、日本を旅する気でいるので、
行くまでのしばらくの間だけど、
歌会に参加するつもりでいるという。

井上さんの歌は、
以前、このブログの中でも紹介していた。
2006年の関西新年合同歌会の時の歌を。

お忙しい方のようだけど、
また機会を作って、ぜひいらしてほしいと思っている。

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