日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

う○こちゃんとわんこちゃん。

2006年04月20日 | お仕事な日々
(汚いお話です。予めご了承ください)

知らない人に、声をかけるのが仕事とはいえ、
「この人!」と思って、
胸の中の緒を締めないと、
来る人来る人に、そう簡単には、
声をかけることが出来るものではない。

その時、「この人!」と思った人は、
遠くで赤信号を待っている初老の男性だった。

私は、
その人が信号を渡って、ちょっと歩いたところで、
声をかけようと、気合を注入しはじめた。

信号が青になった。

男性は横断歩道を渡り始める。
私は少し足早に追いかけ始める。

渡る。渡る。渡りきる。
近づく。近づく。気持ちを整える。

「いいお天気ですね」

と、声をかけようとした時のことだった。

    むぎゅ……っっ!!

と、妙にやわらかい感触が靴裏を走った。

「!」と思って、下を見ると、
日本地図のように少し反った形に横長で、
点々とう○こが散らばっていた。

そして、地図で言えば、
仙台あたりだろうか、
メチョっと靴の踏み跡が……!!!!

声をかけようと、注入されていた気合が蒸発した。

顔面固まる。男性は去る。去っていく。
そんなことを残念がる気持ちすら霧散していて。

慌てて道路の端により、
靴を脱いで裏返すと、
やはり、仙台あたりのう○こが……。

アンケート用紙を鞄に締まって、
泣きそうな顔をしながら、ティッシュを探す。

拭けば拭くほど、鼻につく、
マナー違反の異物。
そんなに時間が経っていなかったのだろう。
生々しさが漂ってくる。

     ★

ティッシュを近くのマンションの
ゴミ置き場に置いて、
少し行った先の公園へ向かう。

汚いトイレだったが、水は出た。
が、ハンカチを忘れていた。

仕方がないので、
ズボンに手をこすりつける。

あぁ……。今日はなんて、女性として失格な日なんだ……。

新緑と日差しの中、
悲しくなっている目先に、
二匹の雑種のわんこちゃん発見。
飼い主は初老の男性。
アンケートの対象者だった。

仕事意識に、切り替わる。

「わ~!かわいい!!!ちょっと撫でてもいいですか!!!」

と飼い主に聞いて、
わんこちゃんをナデナデしはじめた。

飼い主と雑談しながら、
わんこちゃん達の瞳をのぞき見る。

すると、
そのつぶらな黒い瞳は、
仕事意識に加えて、
もうひとつの意識を私に目覚めさせた。

わかりやすく言語に訳すと、

「違うのよ、違うのよ。わんこちゃん達の毛を、
ハンカチ代わりにしているわけではないし、
もしかしたら、ちょっとだけでも臭うかもしれない、
異臭をこすりつけてるわけでもないのよ。

わんこちゃん、わんこちゃん、
あなたたちのお鼻は、とても優れているでしょうけど、
見逃してね、見逃してね。吠えたりしないでね」

……こんな感じか。

     ★

飼い主さんは、お客さんにはならないだろうけど、
アンケートには答えてくれた。

最後まで吠えなかったわんこちゃん達と
とても人の良かった飼い主さんに、
どうか神さま、
ラッキーなことをお与えください。

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