ジャコモ・プッチーニ「トスカ」
2009年12月2日(水)18:30開演
@新国立劇場オペラパレス
【全3幕】〈イタリア語上演/字幕付〉
原作:ヴィクトリアン・サルドゥ
台本:ジュゼッペ・ジャコーザ/ルイージ・イッリカ
作曲:ジャコモ・プッチーニ
企画 若杉弘
芸術監督代行 尾高忠明
指揮 フレデリック・シャスラン
演出 アントネッロ・マダウ=ディアツ
トスカ イアーノ・タマー
カヴァラドッシ カルロ・ヴェントレ
スカルピア ジョン・ルンドグレン
アンジェロッティ 彭 康亮
スポレッタ 松浦 健
シャルローネ 大塚 博章
堂守 鹿野 由之
看守 龍 進一郎
羊飼い 九嶋香奈枝
「トゥーランドット」「ラ・ボエーム」「蝶々夫人」に続くプッチーニ4作目を観劇してきました。
プッチーニの音楽はドラマチックで大好きなので、わくわく。
幕が上がると、めちゃめちゃ豪華なセットで、いやが上にもテンションが上がります。
舞台は、1800年イタリア。
共和制が倒され、王党派の恐怖政治が席巻。
ナポレオンの共和思想を信奉する画家カヴァラドッシが、脱獄した元ローマ共和国領主アンジェロッティを匿った罪で警視総監スカルピアに捕らえられる。
(余談)
・・・1800年というと、先日観たミュージカル「レ・ミゼラブル」のちょっと前?
レミゼの秘密結社ABCの学生達も共和主義者だった筈。
「トスカ」のストーリーをあまり把握していないままに見始めて、レミゼとの共通点が多くて驚きました。
カヴァラドッシやアンジェロッティが、マリウスやアンジョルラスの仲間に見えてきました。
このスカルピアが、どーしよーもない悪役!
カヴァラドッシの恋人・歌姫トスカに横恋慕しているんですね。
で、カヴァラドッシを捕らえたついでにトスカを横取りしよう、と目論むわけです。
まずはカヴァラドッシを捕らえる際には、トスカの嫉妬心をあおる。
その時、シェイクスピアの「オセロ」から引用して、「イアーゴはハンカチを利用したけど、俺はこの扇子で嫉妬させよう」みたいなことを言います。
9月に「オテロ」を観たばかりだったので、「おお!」とおもしろく思いました。
でも、イアーゴは、同じ悪者でも、オテロへの憎しみなどが底にあって、オテロを陥れようという意図がありました。「悪意こそ我が本質」とかって歌いつつも、誰彼構わず罠にかけるわけではなく、彼なりにオテロへの憎しみの理由があったとおもうのです。
ところが、スカルピアは、女なら誰でも良いようでして・・・しかも、一度抱いたらポイっ・・・ほんと、ヒドイ奴なんですよ。
嫌がる女を無理矢理犯すのがよい、って堂々と歌っちゃうんだからさ。ケダモノです。
あまりの外道ぶりに、目を丸くして絶句して見ておりました。
アンジェロッティの隠れ場所を聞き出すためにカヴァラドッシを拷問にかけ、その隣の部屋で、わざと苦しむ声をトスカに聞かせるというサディストぶりも、なかなか・・・。
耐えかねたトスカは、アンジェロッティの隠れ場所を言ってしまいます。
さらにカヴァラドッシの命を救うと偽って、トスカの身体を我が物にする約束をさせる。
で、カヴァラドッシの刑は見せかけだよ、命は救うよ、とトスカを信じさせておきつつ、最初から助ける気はさらさらなく、カヴァラドッシを殺させる。
やーーー、もう、今まで知っているキャラクターの中で、スカルピアほど、嫌なやつはいません。女の敵よーー。
と・こ・ろ・が!
実は、このスカルピアが、めっちゃくちゃかっこよかったんですよぉ~~。
低いバリトンの声も素敵だし、顔もかっこよかった。そうなるとサディスティックな振る舞いも、素敵に見えてくる(笑)。
朗々と歌い上げるアリアもなく、さほど目立つ歌もないんだけど、主役二人を完全に食っています。
私の中では、スカルピアが主人公でした~♪
もー、ほれぼれ。素敵すぎる。(やばい、私、最近、悪役・敵役に惚れる傾向が・・・)
・・・・が、そう思うのは私だけではないようでして。
公演プログラムに林真理子が次のような文を寄せています。
「私は本当にたくさんの『トスカ』を観てきたが、カヴァラドッシが、スカルピアよりも素敵だったことは、皆無といっていい。テノールの歌手は、だいたいにおいて肥満型だ。(中略)そこへいくと、バリトン歌手はなぜか、長身の美形ばかりである」
わはは。さすが、林真理子。
スカルピアがいなけりゃ、主役二人なんて、冴えない画家と、嫉妬深い歌姫という、つまんないカップル。トスカがタイトルロール飾れるのは、スカルピアのおかげよ~。
スカルピア、最高!
というわけで、実は、主役二人をあまり覚えていません(笑)
トスカは、声質があまり好きではなかったかな。
低音が、地声っぽくて。
でも、キャラクターとしては、トスカの気の強さは好きです。
信心深くて、カヴァラドッシ一筋で、とっても健気なんだけど、嫉妬深い。
情感豊かで、人間味溢れるヒロインでした。
カヴァラドッシを助けるために、テーブルをどんっと叩いて、「いくらなの?いくら出せば助けてくれるの?」とスカルピアと取引しようとしたり。
スカルピアがカヴァラドッシの処刑を見せかけのものにしよう、と約束したときも、すぐには信じず、「保証は!?」と迫るし。
たまたまそこにあったナイフでスカルピアを刺し殺し、「これがトスカのキスよ!」と叫ぶのもかっこいい。言ってみたいわ、この台詞。(いつ?誰に?どんな場面で?と自分に自分でツッコミ)
カヴァラドッシは、かの有名なアリア「星は光りぬ」がやっぱり良かったですね。
盛り上がる。これぞ、プッチーニって感じ。
ストーリーとしては、やはり、最後、泣けました。
見せかけの処刑と信じて、銃殺されるカヴァラドッシ。
それを隠れて見ながら、カヴァラドッシは死んだふりをしているのだと思って「演技が上手だわ、素敵だわ」と褒め称えるトスカが可愛くて切ない。
で、実際に死んでいることに気づき、狂乱し、さらにスカルピア殺害がバレて捕まりそうになったとき、身をかわして屋上から身を投げて、幕。
なので、最後は、歌があるわけでもなく、台詞があるわけでもない。
でも、オーケストラのドラマチックな盛り上がりが、泣かせるんだよねぇ。
プッチーニのオペラって、歌がなくても、オーケストラだけで泣かせるんです。
モーツァルトなんかを聴くと、きらきらと美しく、繊細で、これぞ、芸術、これ以上ない完璧な音楽だな、って思うんだけれど、プッチーニは芸術というより、とにかくドラマチックで感情を揺さぶる力があるように思います。
盛り上げ上手なのです。プッチーニ大好き。
今回、舞台セットは派手でした。
今までに見たオペラで一番きらびやかだったかも。
どの幕も、超豪華!
そして、新国立劇場のオペラでいつも感心するのが、照明。
光や影がとても美しい。
薄暗い教会の窓を開けると、差し込む光で、教会内部がぱぁっと明るく見えたり。
煌々と光る月、しらじらと明けていく空。時間の移り変わり。
舞台セットだけでも芸術だなぁ、と思います。
それにしても、オペラって贅沢ですよね。
こんな大がかりな芸術的なセットを作り、海外からキャストを集め、オーケストラが生演奏をし、100人近くの大合唱がある・・・・そんな豪勢な舞台が、たったの5公演のために作り上げられるんですから。
そして、歌やオケ、その他もろもろの芸術的パワーを、全身で浴びて、吸収している気持ちになれるので、オペラが好きです。
ハマったばかりの趣味ですが、DVDを見たりして、ちょっとずつ知識も増やしていきたいです。
次回は初・ワーグナー。
「ニーベルングの指環」のDVDを入手したので、予習します!!
そうなのですよね、スカルピアいてこそのトスカというか。。。
ヴェルディの作品中で誰が一番好きかといえば絶対にスカルピアです。
どうしようもなくイヤな奴で、でも上品でエレガントでこんなにときめくキャラクターはいないですね~。
行きたくても行かれない公演だけにお話が聞けて本当によかったです。
『指輪』も楽しんでいらしてくださいね。
オペラ初心者なので、こんな感想しか書けませんでした~。
でも、本当にスカルピアがかっこよかったです♪
服装も一番上等ですしね(笑)嫌なやつ加減が中途半端じゃないところが、素敵です!
次は、2月の「ジークフリート」までに、「お家リング」、やりますよ[E:dash]
書き間違えました[E:wobbly]
どうして「ヴェルディ」なのか分かりませんが「オペラ」としたつもりで。。。
DVDのトスカも見ごたえのあるものが出ています。
舞台となったその場所での撮影なので半端ではないです。
ご存知でしたらお許しくださいね。
最初に見るのがトスカなら最高でしょうね・・・
せめてもとDVDで観ましたが、コッテコテの盛り上げ方に感服いたしました。言葉なんか分からなくても、トスカの心が伝わってくるような気がします。
テノール歌手は見栄えヨシが多いのですか・・・勉強になります。むふふ。
イケメンはバリトン!バリトンですね!
大丈夫です!書き間違えだなぁ~、って分かりましたから。私が「オテロ」のイアーゴについて書いたからかもしれませんね。
トスカの舞台となった場所については、プログラムで読みましたが、そこで収録したオペラがあるなんて!!ぜひ、見てみたいものです。情報、ありがとうございます♪
そう!イケメンはバリトン!バリトンです!!
そしてテノールはふとっちょです!(笑)
オペラは、基本、単純なストーリーが多いような気がしています。中でもプッチーニは、ストーリーも、音楽もコッテコテですね(笑)。
字幕なしで、断片的に音楽を聴いただけで、うわぁーーーって気持ちが盛り上がって泣けそうになるという・・・プッチーニ、すごいです。