Takの秘密の木

誰にもいえない気持ちは、誰もしらない秘密の木の洞に、こっそり語って蓋をするんだって。@2046

写楽考

2011-08-20 | ドラマ・映画・舞台の感想
舞台『写楽考』をDVDで鑑賞。

SISが主幹?の作品なのかな?
もちろん堤さんが主演の写楽役で、歌麿役に長塚圭史さん、蔦屋は西岡徳馬さん、十返舎一九役に高橋克実さん。等々。
原作は矢代静一さん、BUNKAMURAシアターです。

これは感想を書くのがものすごく難しい~~。・・・・・・
難しいだろうな、と思ってたので、この作品を観るのは少しためらってもいたんですが。・・・・

写楽って、そもそも個人的にかなり思い入れのある画家です。(あえて画家と言います)
DVD特典のインタビューで、長塚さんがおっしゃってましたが、何か物を造ったりする人間にとっては、写楽という人物に興味を抱かない人はたぶんいないでしょう。
私自身、素人ながら絵を描く人間なので、昔から写楽の存在感はとても大きく感じていました。
私が写楽の絵と初めて出会ったのは、たぶん幼稚園とか小学校低学年とか、物ごころ付くか付かないかの頃だと思います。
もちろん、「浮世絵」だの「江戸時代」だの、それこそ「芸術」だのという概念も知識もまだろくにない時で、たぶんお茶漬けの素のおまけカードかなにかでたまたま見かけたようなレベルの話です。
でも、たしかに、私はそれが「好き」だったんですよ。
とてもその絵に惹かれたのをよく覚えています。
そしてその時の印象は、普通に、商業的な"イラスト"だと思っていたんです。
キャラクタライズやデザイン化された、現代のイラストレーターが描いた商品だという認識だったんです。
その後、学校や何かでいろいろな知識が入ってきて、"江戸時代"を知り、"浮世絵"というものを知り、そこで初めて分かったんです。
「あのイラスト描いた写楽って人、江戸時代の人なの!!?」って。(笑)
ヘンな話、しばらく信じられなかった。あの絵を描いたのが"江戸時代"の人間で、遥かむかーーーーーーしに作られたのものだという事実が。
当時、母に言った覚えがあります。
「写楽って、江戸時代の浮世絵師なの?今の人じゃないの?あれ、筆で描いたの?」
母は、あきれ顔で、
「版画だけどね。・・・・意味わからない。浮世絵師に決まってるでしょ。なんだと思ってたの?」
と。(笑)

だから、写楽を題材にした映画や特集番組は、かなり意識的に見て来ています。
もちろん作品展などがあると観に行くし。画集も家にある。
でも、私自身が写楽研究家になろうとしたことは一度もないんですよね。
写楽の"社会的位置づけ"には、まったく興味がなくて。・・・・・
写楽が誰であるか、は、私には無意味で、私が興味があるのは、あの時代にあのセンスを持ってあの筆致を産み出した原動力そのもの。
写楽が絵で表現しようとした思いや感性そのもの、というか。・・・・・
美術史的な位置づけや、古美術的価値、他の作家と比べてどうか、とかいう芸術体系論的なものは正直どうでもよかった。
写楽が誰であるかミステリーよりも、あの時代にああいう絵を描いた心情や、そういう心情に至ったできごとや時間?が、想像つかないくらいユニークでおもしろいと思ってた。
篠田監督・真田広行さん主演の映画『写楽』も一度テレビで見たことがありますが・・・・。(あまり印象に残ってないんだよな・・・・)

この舞台『写楽考』は、そんな私が一番興味がある、写楽が絵に注いだものそのもの、という部分にスポットを当てていたので、逆にとても複雑な胸中にならざるを得なかったというか。

それが、原作の矢代さんの解釈なのか、それとも構成・演出の鈴木勝秀さんのものなのか、それとも、堤さん個人の人物解釈なのか、私は原作を読んでいないのでわかりません。
でも私には、あまり共感できる写楽考ではなかった、という感じかな。・・・・・
元々が謎の多い人物なので、どんな考察も解釈も、正解はないし間違いもないのですが。
だけど、写楽が絵に盛り込んだ思い、原動力となった感情に、共感はできなかった。
ユニークな一考察としてはおもしろかったけど。
どちらかといえば、長塚さんが演じた歌麿の人物解釈の方が腑に落ちたな、と。

しかし、歌麿はやはり、"江戸時代の浮世絵師"という枠をはみ出るような作品をものした人物ではないし、対して写楽は突出してユニークなだけに、とても難しい面があるのはわかります。
不世出の天才というかぶっとんだ鬼才というか。・・・・・
そういう人物を戯曲で描く時の方法論は、映画『アマデウス』があまりにも確立されたものを創り出してしまった感がありますが、たぶん堤さん自身が、その方法論は避けたいという思いもあったのではないかと・・・・。

特典のインタビューの堤さんが、驚くほどエキセントリックで鬼気迫るものがあったのが、なんだか一番、胸が詰まる思いがしました。
劇中よりも、写楽っぽかったというか・・・・。(苦笑)
(でも私の中の写楽像って、実はもっと陽性なんだよな・・・・・)

新しいものを産み出そうとするチャレンジや苦しみ、それこそが「写楽の心」なのかも知れないし、そういう意味では、特典映像のインタビューも含めた全体で、この舞台『写楽考』という作品は成立しているのかも知れないな、と思いました。

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