Takの秘密の木

誰にもいえない気持ちは、誰もしらない秘密の木の洞に、こっそり語って蓋をするんだって。@2046

幻に 心もそぞろ 狂おしの

2011-06-21 | ドラマ・映画・舞台の感想
昨夜、届いてた蜷川演出の舞台『幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門』DVDを見ました。

最初は特典映像のインタビューと稽古風景だけを見るつもりでしたが、途中で寝るつもりで本編をベッドサイドのノートパソコンでかけておいたら、見事にどんハマりのガン見。(苦笑)
胸のざわつきはおさまらないわ、泪で目の縁はただれるわ、3時間しか寝れないわで・・・・会社では猛烈な頭痛に襲われる始末。(苦笑)
しかし悔いなし。(笑)

やー・・・・・常々蜷川さんの美意識には共感を覚えることも多かったんですが、ツボの押さえっぷり半ぱない。あのキャスティングはあこぎと言えるレベルかも。(笑)
ストーリーとしては、黒澤監督の影武者、乱(これは確かリア王がベースかな?)、シェイクスピアのマクベス、オセロ、ハムレット・・・・これら全部を混ぜたおいしいとこどりみたいな感じだったけど・・・・。
蜷川さんは全共闘とか学生運動とかに思い入れがあって、衣装や演出にそれを匂わす部分もかなりあったと思いますが、正直、私世代にはまったくその辺りの要素はピンときません。
でもむしろ、描かれている心情や空気感自体は、学生運動に限らず、上で挙げたシェイクスピアの物語にも通じるような、人間の普遍的な部分を表現していたと思うので、学生運動要素が共感できなくても全体としてたいへん愉しめました。

以前、たしかクドカンさん作品でだっけ・・・・?
堤さんが「(クドカンさんが)自分に割り振ってくれる役はいつも本当に酷い。人みたいな男の役ばかり。一体自分にどういうイメージを持っているのか不安です。」みたいなことをインタビューで仰ってるのを見たことがあります。
クドカンさんは、「いや、本当にカッコいい人だからお願いできるんですよ。カッコ良ければ良いほど、カッコ悪い役をやっていただけるんです。」みたいなことを答えていたような。(笑)
弥次さん喜多さんの長瀬さんとかもその手だそうで。(笑)
でもこれって、真実だよな・・・・と。
野卑で下劣で粗雑に見えるような役を、本当にそうとしか見えない人が演じても不快なだけだもの。別におもしろくもないし。
どんだけ汚くしてもおバカでも、どこかにはっとさせられる品が垣間見れるから、とても惹かれてしまうものがあるというか。・・・・

堤さんは卑と貴を同時に混在させることができるんだろうなー・・・・・、と。
造作、表情、肉体、佇まい、声、すべてにおいて。
だから周囲の人間が、期待と羨望と、絶望と蔑みの狭間を行ったり来たりさせられるような役を、演じることができるんじゃないかと。

たぶん蜷川さんが意図的に仕組んだことだと思いますが、最初から既に狂った状態の将門として堤さんは登場します。
出番もそれほど多くなく、むしろ桔梗役の木村佳乃さんと三郎役の段田安則さんの方が出ずっぱり。
だから桔梗や三郎の方が感情移入はしやすいんだけど、でもその二人がそこまで拘り捕らわれている「正気の将門」という男は一体どういう男であったのか、知りたくて知りたくて仕方なくなる。
でも、目の前の将門は奇矯な振舞いしかしないし、カリスマの欠片もない。
黙って落ち着いてれば男前なのはわかるのに、ちっともじっとしてないし。(笑)
だから「観たい!知りたい!カッコ良かった頃の将門が!!」と、フラストレーションが頂点に達した時に、待ってました、とばかりに来るわけですよ。その時が。(笑)
だけどそれって、堤さんにかかるプレッシャーはものすごいですよね。
これまでのすべてを、さんざん引っ張り焦らしたものを、挙句の果てで納得させるだけの「正気の将門」を魅せなければならない。

私は一種のカタルシスも感じてしまいました。
桔梗やふゆ女の狂おしいほどの将門への愛も、三郎の呪縛も、すべてこのためだったのか・・・・・と。
にしても、ほんと酷い男です。将門。女を地獄のような想いにのたうちまわらせて・・・・・。でも、しょうがないんです。魅力的だから。
堤さん自身がああいうタイプなんじゃないかとちょっと思っちゃいましたけど。・・・・(苦笑)

でもひとつだけ注文をつけさせていただきたい。
冒頭は、正気の将門で始めてもよかったんじゃないかなー・・・・て。
そうすると、中盤の狂気の将門やそれに対する周囲の人間の思いも一層切なくなるし、で、またクライマックスでがつんと魅せてくれれば・・・・・。
ま、単に、正気の将門をもっと堪能させてほしかったって、だけかも知れません。(笑)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。