●試合前に組んだ円陣で「声出し」をした人間に、試合に勝ったら選手全員が5000円を支払い、逆に試合に負けたら「声出し」した人が全選手に1000円を支払う
●チームが3連勝した場合に、円陣で「声出し」を行った野手が、他の野手から「祝儀」として5000円ずつを受け取る。4連勝以降も5000円ずつを集めていた。負けた場合の罰則はない
●チームの連勝がかかる試合で、1人当たり1000円を出し合い、勝った場合は祝儀として試合前の円陣で声出しを行った選手に渡していた
●チームの連勝がかかる試合などで1人当たり1000円を出し合い、勝った際に、試合前の円陣で声出しを行った選手に渡していた
●5連勝以上がかかる試合で、拒む選手を除いて、勝った場合は1人当たり1000円を試合前の円陣で声出しを行った選手に、祝儀として出していた
(昨年は、前の年まで5連勝以上することが少なかったことから、1人当たりの金額を1万円に引き上げていた)
●試合前の円陣で声出しをした選手が1万円を出していた。連勝が続く限り同じ選手が担当し、チームが負けると別の選手に代わって最初の試合だけ1万円を払っていた
●交流戦中、一軍の野手が1人当たり1000円を出し、試合に勝った場合に試合前の円陣で声出しをした選手に渡していた
→【説明】勝敗のいずれかに賭ける行為ではなく、チームの士気を高めるという、野球協約が禁止する敗退行為とは正反対の目的があり、お金のやり取りは小額で、験担ぎの色合いもあり、賭け事とは全く異質
●練習中、同じ組でノックを受ける選手に対して、互いにエラーをした数だけ1万円を支払う
●試合前の練習中のノックでミスした選手がいた場合に現金やジュースを納めていたことが分かった。現金はミス1回につき500円。選手の食事会の経費に充てていた
●守備練習でミスをした選手が「罰金」として数百円を出し、集めた金を懇親会費などに充てていた
●守備練習でミスをしたり、練習に遅刻したりするなど、選手どうしで決めたルールを守れなかった際、選手が「罰金」として1回当たり1000円を出し、懇親会費や障害者を球場に招待するチケット購入費などに充てていた
●守備練習でミスをした場合に現金500円を出していた。集まった現金は選手会の会費としてオフシーズンのイベントで使用された
●試合や練習でミスした際に、罰金として1000円程度を支払う制度があり、現金は選手会の懇親会などで使っていた
→【説明】選手が技術向上を目指し、厳しい練習のモチベーションを維持するため、かなり以前から自然発生的に行われていたもので、賭博行為とは性質が異なる
「僕たちの『常識』と言ったらおかしいけど、これまで当然と思っていたことが、世の中では異常な行為と取られるし、賭博や有害行為の入り口になりうる。それを再確認できた。きっかけにして、これからに生かさないと」とコメントしたのは今回「声出し」で金銭授受があったチームの会長のコメントです。また、「一般の方からモラル的によくない行為と思われるなら、選手も自覚してやめないといけない」(監督)、「プロ野球界の慣習が、世の中の捉え方と合っていないこともある」(本部長)とのことです。
験担ぎ、士気を高めるなどという理由付けで、当然の行為と受けとめていた行為が、一般社会からはすべてのことにお金を絡めている、異常な世界に映ります。ただ、「賭博には当たらず、野球協約177条(不正行為)にも該当しない」との判断は一切変わりません。
要するに、「声出し」は「ご祝儀」、「エラー」は「罰金」という認識のようですし、野球協約にも違反していないのだから問題ないが見解ですが、そもそも悪いことしていないのならば、止める必要がないのでは?とツッコみたくなります。また、止める理由が「これまで当然と思っていたことが、世の中では異常な行為と取られる」ということであるならば、野球協約の内容そのものが間違っていると考えます。結局、矛盾している説明になっているのですよね。
ここに高校野球を引っ張り出してはいけないでしょうけど、昨年、ある高校でバッティング練習でのフリー打撃でホームラン1本あたり3000円を賭け、1万2000円の金銭授受があり、大会を途中棄権し、一ヶ月間の対外試合禁止処分も受けています。高校生ってこともあるでしょうけど、プロ野球側の言い分を適用しますと、選手が技術向上を目指し、厳しい練習のモチベーションを維持するため、賭博行為とは性質が異なるのですよね(ジュースだったらどうだったのでしょうか)。
ここは、悪いことは悪かったということで、素直に認めてしまい、すっきりさせた方が良いでしょう。
でも、そもそもの状況をよくよく確認しますと2つに別れます。つまり、お金の流れが一方通行か、双方向かということになります。ここで「ご祝儀」「罰金」となるか「賭け事」になるかが違うそうです。
勝った時に「声だし」を行った選手にチームメイト全員から一定のお金が支払われるというだけならば、プロ側が説明しているようにご祝儀の範疇となるそうですが、負けた時に逆にチームメイト全員にお金を支払うというオプションが付いている時点で、お金の移動に双方向性が生まれてしまいご祝儀の範疇を超えてしまうそうです。また、エラーに関しても、単独の選手が第三者に向かって「エラーをしたら貴方達に1万円を支払います」と宣言をしてノックを受けるだけならば、ただの罰金制度となるそうですが、選手同士がエラー毎に互いに1万円を支払うという構図になった時点で、お金のやり取りに双方向性が生まれてしまい賭博となるそうです。なお、これはお金だけには限らないそうです。つまり、一方的に選手が貰うだけという形式である限りは、問題にはならないそうです。
もちろん、これらを賭けと認めてしまうと、自チームの多くの選手が野球協約第180条に定められる「賭博行為の禁止及び暴力団員等との交際禁止」に抵触し、主要選手が軒並み処分対象となってしまう可能性があるからもあるでしょうけど、言い訳を積み重ね、解釈を無理やり捻じ曲げている姿はあまりいいものではありません。
そうこうしているうちに、やけに調査に時間がかかっていると思われた12チーム目で、2つの別パターンが発覚しました。
●投手間で1人4万円を出し、勝利から敗戦を引いた数、打者としての打点、犠打、塁打数の4項目で、成績の最上位者が祝儀として現金を受け取っていた
●全国高校野球選手権などの際に、1人1万円程度を払い、くじで引いた高校の成績で賞金を総取り
これらは野球協約に違反するものではないとの見解が出ているそうですが。
社会人野球では2012年に名門の大阪ガスで高校野球を対象にした賭けが発覚。2009年ころから野球部員や野球部OBの社員計36人が関与(28人が現役、残る8人がOB)した、選抜高校野球大会や選手権大会などを対象とした賭けを行っていたことが明らかになり、日本野球連盟は2012年11月2日、報告のあった2012年8月31日から2013年2月28日までの6ヶ月間、対外試合禁止の処分を下し、チームはこの間の活動を自粛しました。
2010年には独立リーグのジャパン・フューチャーベースボールリーグ(JFBL)に加盟していた大阪ゴールドビリケーンズの選手がプロ野球を対象とした賭けに関わったとされ、主力選手を含む8人が解雇処分となり、スポンサーも契約解除し、シーズン終了後、解散となりました。チーム発足から2年で解散となり、これが原因となってJFBLも活動を停止しています。
これくらいの懲罰があっても不思議ではないことです。
野球選手のみならずスポーツマンとして、一般人であっても八百長や不正行為などの賭けごとダメです。
その一方で批判を気にするあまり、禁止事項ばかりが増えていくことも好ましくありません。
プロ野球開幕目前に発覚した、これらの問題。長引けば長引くほどシーズンに大きな影響を与えそうな気がしますが、あまりにも性急な幕引きも臭いものに蓋をするだけのことになります。
プロ野球選手は、試合の機会が奪われるほどの重大な不祥事だと受け止めて再出発しなければ、失われた信頼を回復出来ません。
私たちはいち早く、正しく全貌が解明されることを願うだけです。