11月連休初日、禄郎達は新幹線で福岡に着くと、直ぐに佐々木の実家に向かいました。禄郎はそこで、佐々木の従兄弟の鳥羽流夜に会いました。
「今日は仕事なのに悪いね。ちょっと愛知県の吉良町の事で聞きたいんだ。」
「別に。休憩中だから。」
流夜は素っ気なく答えました。
実家の客間で、佐々木は一緒に来た渡辺や歩果や咲花と話をしたり、たまにこちらの様子を見に来たりしていたので、禄郎と流夜はほとんど二人だけで話をしていました。
「俺ね、君と先輩の亡くなったおじいさんの話を知っているんだ。よく三ヶ根山の麓の温泉で遊んでたでしょ?おじいさんの知り合いを知ってる。」
禄郎は流夜に言いました。
「ああ、三ヶ根の事は聞いた事ある。うちのおじいさんを探してたの?」
流夜は言いました。
「いや、多分違う…かな?中学出て直ぐに福岡に来たの?」
「中学卒業してから。高校はこっちでおじさん家で働きながら行ってる。」
「へえ、九州で頑張ってるんだね。」
「中学の先輩が九州で頑張るように進めてくれたから。」
「中学の先輩?」
「自分ももう働いてるから、九州行って高校も行けって。」
(もしかしたら…。)
流夜の話を聞いている禄郎の目に、ぼんやりと知らない青年の姿が浮かんで来ました。
(彼の体に直接触れて記憶を見たらはっきり分かるんだけどな。多分怪しまれるし。
でもまあ、半分天上界に関係のない記憶は見えないはずだから…。)
「その中学の先輩に会いたいんだけど、愛知県に行く事ってある?」
「え?お正月は帰るよ。」
「俺、今、愛知県の昔の事調べてて、その先輩に少し昔の話を聞きたいんだけど、行ってもいいかな?」
「俺は構わないけど、謙ちゃんに聞いてみて。」
流夜は言いました。
「お正月は流夜を愛知県に連れて行くから、別にいいぞ。」
佐々木は答えました。
「話済んだの?」
咲花が禄郎に声を掛けました。
「終わったよ。福岡は今日だけで、明日からは長崎だっけ?」
禄郎は聞きました。
「うん。女子二人でね。田中君、連休中はバイトだし。」
「そうなんだ。」
佐々木が居間にいる皆に言いました。
「それじゃあ、皆、支度しろよ。民宿まで送るから。民宿に荷物置いたら、福岡の街を案内しまーす!」
「わーい!」
「よろしくお願いします!」
禄郎達は支度を始めました。
探し人(了)
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