「じゃあ、その円山陸って人が、お父さん?」
「まだ話に続きが…。」
17年前。ごく親しい同級生以外は、陸のお通夜だけ、出席しました。
「警察の人が、円山君の事色々聞いてるみたい。」
友達の文代が宮子に話します。
「事故じゃないの?」
宮子が尋ねます。
「円山君が、バイトで知り合った友達が、薬物やって捕まったらしいの。」
「最近の話?」
「4、5日前みたい。」
「つい最近じゃない。」
それであんな思い詰めた様子だったんだろうか?宮子は最後に会った陸の様子を思い出しました。
「岡山君は?」
「お葬式にも出席して、東京帰るって。今、他の友達といる。」
宮子の妊娠が分かったのは、それからしばらくしてからです。
宮子は隠さず全部康太に話しました。
「俺の子か、陸の子か分からないのか…。」
「……あのね、はっきりとは分からないけど、円山君の子じゃないよ。」
「えっ?そんなの分かるの?」
「あ、その、別に分からないけど、いや、その、した時期が少し違うから。ああ、もう。」
宮子の顔が真っ赤になってしまいました。
「私ね、産むから。」
(……こ、これが伝説の、男にとってかなりの、厳しいセリフってヤツか。)
「……分かった。いいよ、産んでも。」
「本当?」
「ああ。」
(陸の死がなかったら、多分こうは言わなかっただろう。
陸が高校の時から、宮子を好きな事は知っていた。でも、まさかこんな事を。
しかも、すぐ後に死ぬなんて。)
宮子が心配そうな顔で尋ねました。
「お兄ちゃんになんて言ったらいい…?」
「事件が絡んでるみたいだから、そのまま話せないよな…。」
「で?例の写真の濃い顔の彼は?」
晴海が尋ねます。
「お母さんのバイト先の先輩だって。田舎で就職が決まったから、送別会に来てくれた人全員に、記念に手作りのブロマイドを渡したみたい。」
「……そうなんだ。」
「気の毒なんだけどね、全然無関係。」
「……やれやれ。」
晴海が尋ねます。
「結局おじさんがお父さんなの?」
「私は円山陸さんには似てないんだって。でも当時はDNA鑑定がまだ一般的じゃなくて。でもね、お母さんが死んだ後に正式にDNA鑑定してもらったの。
で、お父さんが私のお父さんだって。」
「だよな。似てるもん。」
「あんた、私をおじさんとおばさんの子だって…。」
「いや、まあうちの父さんにも似てるから。父さんとおばさん少し似てるし。」
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