今、半分空の上にいるから

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殺人は眠り続ける 小説編その5

2014-10-23 00:47:16 | 殺人は眠り続ける(完結)


 「じゃあ、その円山陸って人が、お父さん?」

 「まだ話に続きが…。」



 17年前。ごく親しい同級生以外は、陸のお通夜だけ、出席しました。

 「警察の人が、円山君の事色々聞いてるみたい。」
 友達の文代が宮子に話します。

 「事故じゃないの?」
 宮子が尋ねます。

 「円山君が、バイトで知り合った友達が、薬物やって捕まったらしいの。」

 「最近の話?」

 「4、5日前みたい。」

 「つい最近じゃない。」

 それであんな思い詰めた様子だったんだろうか?宮子は最後に会った陸の様子を思い出しました。

 「岡山君は?」

 「お葬式にも出席して、東京帰るって。今、他の友達といる。」

 宮子の妊娠が分かったのは、それからしばらくしてからです。

 宮子は隠さず全部康太に話しました。

 「俺の子か、陸の子か分からないのか…。」

 「……あのね、はっきりとは分からないけど、円山君の子じゃないよ。」

 「えっ?そんなの分かるの?」

 「あ、その、別に分からないけど、いや、その、した時期が少し違うから。ああ、もう。」

 宮子の顔が真っ赤になってしまいました。

 「私ね、産むから。」

 (……こ、これが伝説の、男にとってかなりの、厳しいセリフってヤツか。)

 「……分かった。いいよ、産んでも。」

 「本当?」

 「ああ。」

 (陸の死がなかったら、多分こうは言わなかっただろう。
 陸が高校の時から、宮子を好きな事は知っていた。でも、まさかこんな事を。
 しかも、すぐ後に死ぬなんて。)

 宮子が心配そうな顔で尋ねました。
 「お兄ちゃんになんて言ったらいい…?」

 「事件が絡んでるみたいだから、そのまま話せないよな…。」




 「で?例の写真の濃い顔の彼は?」
晴海が尋ねます。

 「お母さんのバイト先の先輩だって。田舎で就職が決まったから、送別会に来てくれた人全員に、記念に手作りのブロマイドを渡したみたい。」

 「……そうなんだ。」

 「気の毒なんだけどね、全然無関係。」

 「……やれやれ。」

 晴海が尋ねます。
「結局おじさんがお父さんなの?」

 「私は円山陸さんには似てないんだって。でも当時はDNA鑑定がまだ一般的じゃなくて。でもね、お母さんが死んだ後に正式にDNA鑑定してもらったの。
 で、お父さんが私のお父さんだって。」

 「だよな。似てるもん。」

 「あんた、私をおじさんとおばさんの子だって…。」

 「いや、まあうちの父さんにも似てるから。父さんとおばさん少し似てるし。」


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