イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

Carnevale(カーニバル)とPasqua(復活祭)

2021年02月07日 16時22分16秒 | イタリア・イベント

先月「くるみ割り人形とねずみの王様」を図書館で借りて読んだ話はしたと思うが、

この本には「ブランビラ王女」という話が載っていた。
どんな話かと、読む前にちょっと調べてみたら「よく分からない」という書き込みが多かったので、読まずに本を返却しようかと思ったけど、これ、舞台がローマ(Roma)だったので、読んでみた。
ははは、内容は多数の人がコメントしているように「???」だった。
しかし、面白かったのは1800年代のローマのカーニバル(Carnevale、謝肉祭)の様子が描かれていたことだった。

その後これを読んだのだが、

びっくり!
当時のカーニバルについて、衝撃的なことが書いてあった。
「パウル2世のころよりユダヤ人がカーニバルの費用として年額1130金フロリンを払うという。これまた祭りの恒例である。」
これってどういうこと???

自分を含め、カーニバル=仮装というイメージが強い私たちのためにちょっと説明を。(分かっている方は読み飛ばして下さい。)
カーニバル、日本語では「謝肉祭」は、四旬節(伊:Quaresima)を基準に決められている。
余談だが、イタリア語のQuarantenaは「検疫」のこと。
”Quaranta"が40という意味なので、この2つの単語はどちらも40がらみとなっている。

四旬節とは、
”カトリック教会などの西方教会において、復活祭の46日前(四旬とは40日のことであるが、日曜日を除いて40日を数えるので46日前からとなる)の水曜日(灰の水曜日)から復活祭の前日(聖土曜日)までの期間のこと。”(引用:Wikipedia
復活祭(イースター、伊:Pasqua)は朔望(月の満ち欠け)に基づく移動祭日なので毎年日付が異なる。
3月19日から21日の間、月が春分の軌道にある時期、現在は便宜上3月21日(日本の場合はこの日を「春分の日」としているから分かりやすい)以降の最初の満月、その直後の日曜日が復活祭の日になる。

今年は?というと。
3月21日以降の最初の満月は、3月29日。
そこから一番近い日曜日は、4月4日。
ということで、2021年のイースターは4月4日となる。
まぁ、2021年イースターで調べれば、簡単なんだけど…
ここ数年4月10日前後だったから、今年は割と早めなんだ、と思ったのだが、一番早い復活祭は3月22日、一番遅いのは4月25日になるそうだ。
今年は立春が124年ぶりに2月3日になり、節分が2月2日になった。
節分は2月3日と思い込んでいたが、私たちも知らず知らず旧暦や陰暦を使っているんだと実感する。

そして復活祭が4月4日なら、46日(日曜を除いて40日)四旬節は4月3日から遡って2月17日ということになる。
2月17日は四旬節初日で「灰の水曜日( 伊:Mercoledì delle ceneri )」と呼ばれる。
この日から肉は(基本的に)食べられない。
四旬節が始まる前日、つまり今年の場合は2月16日は「懺悔の火曜日(マルディグラ)」、イタリア語ではMartedì grassoと言い、直訳なら「脂の火曜日」で、肉断ちするために食い尽くす日とされている。
そして謝肉祭はこの「懺悔の火曜日」を最終日として、その前の1週間くらいとしているところが多いようだ。

イタリア語の諺に
A Carnevale ogni scherzo vale.
というものがある。
これは「謝肉祭ではどんな悪ふざけもかまわない」という意味。(「謝肉祭」を他のお祭りと入れ替えて使用することもある。どんな祭りでも無礼講は許される、ということ)
四旬節の間は、肉類などご馳走は立たなければいけない。
その前の時期謝肉祭ウィークは、何をしてもOKなのだ。
カーニバル(伊:Carnevale)の語源は、俗ラテン語の carnem(肉を)levare(取り除く)に由来し、「懺悔の火曜日」に行われた「肉よさらば」の宴を指したと言われる。(諸説あり)

キリスト教は、ローマ帝国で広がって行く中、もともと有ったローマの習慣や祭りと同化してきた。
謝肉祭も、ローマ人たちのお祭りや習慣「サトゥルナーリア」というお祭りと結びついたと考えられている。
サトゥルヌスは農耕の神様、毎年の豊作をサトゥルヌスに祈り仮装をして宴会をした祭りサトゥルナーリアが謝肉祭と結びついたところ、現在のように仮装をしたりするようになったのではないか。

昨年途中で中止となったヴェネツィアのカーニバルは、一応開催しているらしいが、配信のよう。
日程は、2月6,7日(おお、すでにやってるじゃん)と11から16日で色々イベントもあるらしい。
参考:https://www.carnevale.venezia.it/

ちなみに復活祭の前の週の日曜日は枝の主日(えだのしゅじつ、伊:Domenica delle palme)。

これは2019年偶然見つけた行列。
ヤシの枝を手にして子供たちを先頭に歩いている。(確か讃美歌も流れていた)
この日はイエス・キリストのエルサレム入城を記念する日。
聖書の中ではこの日から「イエスの最後の週(受難の週)が始まる」とされている。
入城の際イエスは馬ではなくロバに乗っていたとされている。それは馬が武力の象徴であるため避けたのだ。
ザカリアの預言通り、ロバに乗った救世主が現れ、群衆は着ていた上着や棕櫚(ヤシ)の枝を道に敷いたり、枝を振りながらイエスの入城を歓迎したという。
「ヤシの葉を振りながら」という記述はヨハネだけが書いているのだが、ここからDomenica delle palmeという名前が来ている。
イタリアでは祝別されたヤシの葉や平和の象徴のオリーブの枝が配られる。
この日から復活祭までの一週間を「受難週」などと呼ぶ。

特に重要なのは木曜から復活祭当日まで。
なぜならカトリック教会では木曜から土曜日まで毎晩、信徒が教会に集まり、キリスト復活を祈念する。
2013年その辺りをしっかり見ていた…すっかり忘れていたけど。

まずGiovedi Santo(聖木曜日)
2013年の記事はこちら
ヨハネ福音書だけに記されているエピソードだが、イエスが弟子の足を洗ったことにちなんで、「洗足木曜日」とも呼ばれる。
この日、フィレンツェではPan di ramerino(ローズマリーパン)を食べる。

当時はその理由が分からなかったのだが、発見した。
中世、ローズマリーは悪い精神を遠ざける特別なものと考えられ、現在ミサなどの宗教行事で使われているお香の代わりに使われていただけでなく、厄除けや葬式の時にも使われていた。
古代ギリシャ人やのちのキリスト教徒は、ローズマリーを不死の魂の象徴と考えていた。
伝説では、聖母マリアとヨセフがエジプトへ逃避している時、聖母のマントがローズマリーの木の上に落ち、その時からローズマリーの花は白から青に変わったと言われている。

写真:Wikipedia

ぶどうと小麦は、いつの時代も人生の象徴で、12世紀頃からキリスト教にとっては特別な存在となった。
パンはキリストの肉体、ぶどう(ワインだが)はキリストの血を表す。
Pan di ramerino(ローズマリーパン)は中世には誕生していたと考えられるが、当時は小麦、ローズマリー、zibibbo(ズィビッボの干しぶどう)、オリーブオイルで作られ、非常に香り高い特別な食べ物だったことが想像できる。
次第にレシピは改良され、砂糖が加わるようになった。
その後小さな丸パンになり、上には十字の切り込みが入れられるようになった。
これはもちろん発酵を助けるためだったが、信仰のパンとしても特徴でもあった。
現在では一年中フィレンツェのパン屋で見られるこのローズマリーパンは、昔は復活祭の時期だけのもので、今でもフィレンツェ人はこの日にこのパンを食べるという。

昔は、売り子が"coll'olio"と大きな声で叫びながら街を周り、聖木曜日(giovedì santo)で教会へ向かう女性たちにミサの間中配っていたという。

参考:https://www.fiorentininelmondo.it/

Venerdi santo(聖金曜日)は天気が悪くて実際見ていないのだが、この日は「受難」の日。
ローマではVia Crucis(十字架の道)が行われる。
この日キリストは十字架を背負ってゴルゴダの丘まで歩かされた受難の日で、それを追体験するような行事が各地で行われる。

写真:http://www.sienafree.it/archivio/89296-la-via-crucis-del-venerdi-santo-ad-acquaviva

Sabato Santo(聖土曜日)はこちら


と、謝肉祭が何か?から本題に入る前にこんなに長くなってしまった。
ということで、本題は次回ということにいたします、はい。



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
2021年 カーニバル (カンサン)
2021-02-08 19:44:14
fontanaさんへ、今年のカーニバルは各地で中止になるのでしょうね。どうしようもありません。
最近、ルネサンスの世渡り術(壺屋めり著 芸術新聞社 刊 2018年)を読みました。ブルネレスキとギベルディのコンぺについてやティツィアーノが自分の年齢をごまかして、売り込みしているとか書かれていました。4こまマンガも描かれて解説しています。
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おもしろそうですね。 (fontana)
2021-02-09 18:42:27
カンサンさん
世界中のイベントを以前のように行える日が早く来るといいですね。
面白そうな本ですね。
安田作兵衛の槍、NHKニュースで見ました。
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