国民主権の原理には、「正当性の契機」と「権力性の契機」の二つの要素が含まれている。
①「正当性の契機」:国家権力の正当性が国民にあるとする原理。
意味:国家権力の行使は最終的には国民に由来すること。
②「権力性の契機」:国家権力は国民自身が行使するとする原理。
意味:国家の政治のあり方を最終的に決定する権力を国民自身が行使するということ。
★国民主権の「国民」とは、「全国民主体説」を意味するのか、「有権者主体説」を意味するのかの問題がある。
この問題に対して、花見常幸・藤田尚則著の「憲法」 【改訂版】では、『基本的には、主権者たる国民とは国家の構成員である一切の自然人の総体であると捉え、国民主権とは全国民が国家権力の源泉であり、国家権力の正当性を基礎づける究極の根拠である。このように、主権の保持者が全国民であると捉えるならば、主権は権力の正当性の究極根拠を示す原理となるが、憲法改正権が国民にあることからすれば、有権者たる国民が国の政治のあり方を直接かつ最終的に決定するという権力的契機も同時に密接不可分に結合していると考えるべきであろう。』