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日本の憲法 Vol.11 長沼ナイキ基地事件

2017年09月10日 | Weblog


昭和42年3月に閣議決定された第3次防衛力整備計画に基づき、北海道長沼町に航空自衛隊第3高射群のミサイル基地が設置されることになった。これに反対する原告等は、同基地建設のための国有保安林の指定解除処分を違憲として出訴した事件。

第1審の札幌地裁判決では、請求を認容し国側の敗訴判決となった。
この訴訟の争点は、①平和的生存権の存否、②司法審査の限界内の事件か否か、③憲法前文の解釈、④憲法9条の解釈、⑤自衛隊及び自衛隊法は違憲か否か。
ここでは④⑤の憲法9条の解釈をどのように判事したのかを述べてみます。
憲法9条2項にいう、「陸海空軍」とは「『外敵に対する実力的な戦闘行動を目的とする人的、物的手段としての組織体』であるということができる。このゆえに、それは、国内治安を目的とする警察と区別される。『その他の戦力』は、陸海空軍以外の軍隊か、または、軍という名称を持たなくとも、これに準じ、または、これに匹敵する実力をもち、必要ある場合には、戦争目的に転化できる人的、物的手段としての組織体をいう」。「外部からの不正な武力攻撃や侵略を防止するために必要最小限の実力」は、戦力ではないという被告・国のような考え方に立つと、「現在世界の各国は、いずれも自国の防衛のために必要なものとしてその軍隊ならびに軍事力を保有しているのであるから、それらの国々は、いずれも戦力を保持していない、という奇妙な結論に達せざるをえない」と判事して、自衛隊は、9条に違反するとした。(札幌地判昭48・9・7判時712号24頁)。

2審の札幌高裁判決では、「憲法9条2項前段は、一義的に明確な規定とはいえない。自衛戦力の保有の是非に積極、消極の2説があっていずれの説も一応の合理性を持つ」と判事して、第1審判決を破棄、自判して原告の請求を却下した(札幌高判昭51・8・5行裁例集27巻8号1175頁)。

最高裁判決では、自衛隊の合憲性についてはまったく触れず、訴えの利益なしとして上告を棄却し原告の敗訴が確定した。(最判昭57・9・9民集36巻9号1679頁)。