(東洋経済オンライン)
前回は、ジダン選手が怒りをコントロールできずに失った名誉、フェデラー選手が怒りをエンジンにして得た勝利を例にあげて、怒りの感情とのつき合い方の巧拙を比較した。
今回は、私たちが実際にスポーツに携わる場面で有効となるアンガーマネジメント的思考法や具体的なテクニック活用法を紹介したい。これら情動のコントロール技法は、適切なパフォーマンス発揮へきっとつながる。
負の記憶を引きずらない
スポーツに失敗はつきものだ。
失敗は、自分に原因があるときもあれば、他人のせいのときもある。
私たちは、他人の失敗に寛容になれず、しつこい「思い出し怒り」に振り回され、苦しむことがある。
こうした状況を改善するために、アンガーマネジメントでは、ソリューション?フォーカス?アプローチ(解決志向)が、思い出し怒りの感情をコントロールする上で有益だと説いている。
アンガーマネジメントでは、基本的に問題の原因追究を重視しない。
怒りの問題を解決できないままでいるのは、発生した「問題原因」にばかり焦点を当て過ぎているからだ。
問題の原因に戻れば、怒るに至った背景がよみがえり、再び「こいつが悪い」「あいつだけは許せない」と、さらに思い出し怒りの感情が増幅していく。
悪者探しは建設的ではない。パフォーマンスの発揮にも支障を来たすし、ソリューション(問題が解決された状態)に至る最短距離とはいえないだろう。
「過去は変えられない」と考え、事実を粛々と受け容れて、今やれること、できることに集中する。
解決志向で考えると、「なりたい理想」に近づくために、現状と理想のギャップを埋める努力をするようになる。
例えば、あるアスリートが、以前指導を受けたコーチの教え方が合わなかったために、フォームを崩して成績不振に陥ってしまったとする。
この選手は、コーチを恨み、文句を言ったところで何の解決にもならない。
「なんで、あんなフォームにしたのか、あんたのせいで……」と過去を振り返って怒りをぶつけたり、コーチに報復措置をとって何がうまれるだろうか。変えられない過去は受け容れ、「今後どうしたら、自分の理想のフォームに戻れるのか」という未来像を探すほうが賢明だ。
その後の努力によって、身に着けた理想のフォームで好成績をあげたときには、昔のコーチへの負の記憶など、もう消えているのかもしれない。
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