林業女子会@みえ

「消費者目線で 楽しく 明るく♪」
マイペースに森林・林業について学び、現場で見てきたことを発信しています。

wood specialist ~木遣いの仕事@みえ~vol.15 晃榮林業

2017-02-09 05:08:42 | イベント情報
「晃榮林業株式会社」

濱口 千穂さん
所在地 〒519-4563 熊野市飛鳥町小阪680
℡&fax 0598-84-0100




林業という職業につきまとうマイナス・イメージ『3K』。
キツい、汚い、危険の3つのKであるが、
熊野市の晃榮林業株式会社を見学させてもらって、
私はそこにプラスのKをたくさん見つけることができた。



取締役の濱口千穂さんにまず案内してもらった土場の印象は、
『キレイ』。
公道沿いの広い土場には、架線の元となる線尻と集材機が設置され、
プロセッサで玉切りされた丸太と梢端+根元+枝葉が分けて積まれている。
そこに一切の無駄がないばかりか、
集材機の周辺には「安全第一」の旗が掲げられているとともに、
作業員さんたちが休憩するときなどに出るゴミが袋にきちんと分別され、
使わないワイヤもきれいに輪にして並べられていた。



現場がキレイであることは、作業の効率上、
そして作業員の安全上とても重要であることは言うまでもない。
「わたしがうるさく言うから。」
と濱口さんは言われるが、土場を見ただけでも、安全管理が徹底されていることが想像できた。



この日は3人の作業員さんが集材・玉切り・造材作業をされていた。
1人(30代)が林内で伐倒木にワイヤをかけ、
1人(20代)が集材機を運転して土場まで木を出し、
1人(50代)が土場の木をプロセッサで玉切り・造材する。



その職人さんたちの仕事がとても『かっこいい』のである。
重機好きの私は特に、そのベテラン作業員さんのプロセッサさばきにしばらく見惚れてしまい、
濱口さんの貴重な話を聞きそびれてしまうほどだった。



濱口さんの安全「意識」管理の徹底は、職場の作業員にとどまらない。

毎月『会報』を発行し給料袋に同封することで、『家族を巻き込む』のが千穂さん流だ。
多いときには4~5枚にも及ぶという会報には、
林業における事故の実態や安全作業に関する情報はもちろん、
木材の市場価格や林業関係の各種補助金などの情報も載せるようにしているという。

うちのお父さんがどんな業界でどんな状況下でどんな仕事をしているのかを
奥さんや子どもに知っておいてもらってこそ、
本当の安全が確保できるという発想は、さすが女性ならではである。



濱口さんのご実家である花尻家で昼食をいただいたときに、
濱口さんは「本物の林業女子です。」とお母さんを紹介してくれた。
代々この地で素材生産業を営んできた花尻家では、
男性が山に行く間、女性は里で苗木を育てたり、足場材の皮むきをしたり、
木材生産に付随する仕事をすべて担ってきた。
「うちだけじゃなくて、昔はここらへんの人はみーんなそうやった。」
その言葉が意味するのは、女性も男性と一緒になって熊野の林業を支えてきた、
などという大げさなことではない。



ここに林業という十分な仕事が当たり前にあり、
男性も女性もそれぞれの仕事を当たり前にやってきた、
ただそれだけである。
お互いに愚痴を言い合って大笑いしながら皮むきをする女性たちの姿が目に浮かび、
にわか林業女子である私は、その「当たり前」に羨ましさを感じずにはいられなかった。

昼食後、晃榮林業が行っている「パッチワーク施業」の現場を実際に見せてもらった。
この施業方法は、ひとつの山を数ヘクタールずつのエリアに分け、
エリアごとに植林する年を変えるというもので、いろいろな林齢のエリアが縦横に並ぶ山は、
なるほどパッチワークのようである。



そして、最も印象的な熊野の林業のK、
それは、そこには確かに『神が居る』ということである。



最後に案内してもらったのは、
濱口さんが職員の無事故を感謝し祈願するため毎月2回必ず訪れるという飛鳥神社。
「ぜひ見てほしい」と勧められたこの地区の氏神様は、
失礼ながらどこの地区にもありそうな神社なのであるが、
その境内の祠の奥には、おそらくここにしかないもの―四本杉―が在った。
四本杉は、4本の杉が根元で1本になっている巨樹で、市の天然記念物に指定されている。
この杉が御神木であることは間違いなく、
むしろこの杉を祀るために祠が建てられたのではないかと勝手に思ってしまうほどの存在感である。



しかし、四本杉に、飛鳥神社に、山々に、熊野という土地に神を感じることはあっても、
そこに神が居るというのとは少し違う気がする。
では神はどこに居るのか?
これはあくまでも私個人の理屈であるが、神は人の心に居るのである。
濱口さんの心に確かに神が居るために、彼女の言葉を通じて、
私も熊野のあちこちに神を感じることができるのである。

いささかスピリチュアルな話になったが、ここまで自然に神を感じられることは、
熊野の林業、少なくとも晃榮林業の特徴の1つに数えなければならないだろう。

以上のように、晃榮林業さんの見学を通して、
私は林業のステキなKをたくさん発見することができた。



濱口さんをはじめ晃榮林業の皆さん、ありがとうございました。

熊野ツアー(その3 野地木材工業㈱)

2017-01-28 09:58:43 | イベント情報
野地木材工業株式会社

熊野ツアー3件目は、首都圏や関西方面の、こだわった木の家を作っている工務店向けに
熊野の木の製品を製造、販売している野地木材工業です。



熊野の海沿いから狭い山道を車で15分くらい登ったところ、
こんな山奥に構造材や内装材を挽いている製材工場があるんだろうか?
っと不安に感じてしまうくらい、山を登ったところに
野地木材工業の本社工場がありました。




「なぜ、この紀伊半島の南の端の山の中の工場から、全国に向けて熊野の木の製品が売れるのか?」
野地専務からいろいろなお話を伺いましたが
熊野の木をただ製材して売るのではなく
例えば、カンナがけが苦手な大工さんには、カンナ仕上げをした製品を届けるなどして、
製品に付加価値をつけて、エンドユーザーのニーズに合わせた商品を届ける工夫をしているそうです。




また、「のじもくま」と言ったキャラクターを使用したり
ホームページには、熊野の美しい風景や、温かい人柄が伝わってくるような画像を使ったり
大きくて見やすい文字や、わかりやすい表現を使うなど、
エンドユーザーでもある施主さんを意識していました。

そして、熊野市内の製材所で自社製品を製造してもらったり、使わなくなった倉庫を利用するなどして
熊野市内に元々あった施設や機械を有効利用しているそうです。

その他にも、熊野の観光協会と連携して
工務店を通じて施主さんを対象とした「のじもくツアー」を開催したりと
熊野の魅力を熊野の木を通じて全国に発信して、熊野の産業の起爆剤になっているように感じました。



熊野ツアー(その2 熊野原木市場)

2017-01-27 05:14:55 | イベント情報
~熊野原木市場~

平成29年1月24日熊野ツアー
2か所目は熊野原木市場です。

熊野原木市場の栗須さんからお話を伺いました。




熊野原木市場では、毎月2回、市があるそうですが
最近は県外からも、たくさんのお客さんがきて、熊野の木を買っていくそうです。





土場には、比較的太い木もたくさんありましたが
直径50センチを超えるよな特殊な木は、宮大工さんが買われたり
お寿司屋さんのカウンターを作るために買われるそうです。

これらの木が、県内外の製材所で挽かれて、どんな人がどんなところに使うんだろうか?
っと考えると、なんだかワクワクしてきます。



「昔に比べるとお客さんが減った。」
と言う栗須さんですが、顧客確保のため、
県内外の製材所などにも営業に行って熊野の木をPRしているそうです。



熊野ツア(その1 晃榮林業)

2017-01-25 05:15:43 | 活動報告
~晃榮林業㈱~

昨年10月に三重県林業技術普及協会主催で開催されました
「森林座談会~女性の視点から見た林業の魅力・木の魅力~」で
私たちメンバーと一緒に、林業や木の魅力について意見を交わさせていただきました
三重県熊野市で林業を営んでいる濱口千穂さんから
「ぜひ、熊野に来てください。」と声をかけていただいて
今回、思い切って三重県の南端にある熊野に行くことになりました。


地元の熊野農林事務所の山本林業普及指導員の案内で
まずは晃榮林業さんの架線集材の現場からスタートです。



エンドレスタイラー式の架線を使って
4人の作業員で間伐した杉の木を土場に出しているところでしたが
木の1本・1本がとても大きくて、迫力がありました。




作業土場はとてもきれいに整理整頓してあって
安全啓発の旗や看板もあって、とてもクリーンなイメージを受けました。




また、太いスギの木を切り倒す様子も見せていただきました。
長い刃のついたチェンソーを起用に使って伐倒や枝払いをする姿を見て
「やっぱり、林業をする人の背中はカッコいい!」なんて感じました。




お昼休憩の後には、新植した現場を見せていただきました。
現場はとても急な斜面で、岩場も見えていて、
伐採跡地を地ならしして、鹿よけの柵を張り、苗木を植える作業は
とても骨の折れる仕事だろうと感心しました。

また、熊野では尾鷲のようにヒノキを過密植栽するのではなく
スギを4,000本/ha程度の密度で植えると聞いて驚きました。
尾鷲と熊野では林業のやり方も、文化や人柄も違うようです。



その後、飛鳥神社の4本杉を案内していただきました。
樹齢約1,300年の、4つ又になっているスギの木ですが
とても厳粛な空気と時間が流れているように感じました。



そして、晃榮林業の濱口千穂さんからたくさんのお話を伺いましたが
「山に入る前には手を合わす。」と言います。
熊野の山や自然に逆らわず、恵みを分けていただきながら林業させていただいている。
そんな姿が印象的でした。

wood specialist ~木遣いの仕事@みえ~vol.14

2016-10-09 04:43:13 | 活動報告
「武田製材有限会社」

代表者 武田 誠
住所  〒519−2505
    三重県多気郡大台町江馬158
TEL 0598-76-0023 FAX 0598-76-0818




武田製材さんを訪れてまず驚いたのは、多種多様な材の豊富さ。
所狭しと材が積まれています。
地元の宮川木材のスギ・ヒノキももちろんあるのですが、
私たちが驚いたのはなんといっても広葉樹です。

樹種を挙げると、
チドリ、ニッキ、ヤマモモ、フジキ、リンゴ、ジンダイ、カラスザンショウ、
ホウノキ、イヌマツ、ライデン木、アベマキ、などなど

初めて聞く名前のなんて多いこと。



私が印象的だったのはフルーツウッドと呼ばれる林檎や柿など果実がなる木です。
色がとても綺麗でアクセアサリーなどに使われるそうです。

それから、バクテリアなどで珍しい模様が出来た材も扱われていました。



このような広葉樹を求めて来られるのは、クラフト作家さんだそうです。
関東など遠方から来られる方もいらっしゃるとか。
武田さんも松本や姫路の全 国的に有名な大規模なクラフト展などに行かれて営業なさるそうです。


スギやヒノキなどの建材に使われる針葉樹の市場はたくさんあるのですが、
家具やクラフトなどに使われる広葉樹の市場というのはほとんどないと言ってもいいのが現状です。
ですから武田製材さんはとても貴重な存在と言えます。



乾燥方法にもこだわりがあり、油分が抜けやすい高温乾燥はせず、
自然乾燥にこだわっているとのことです。

武田さんの説明を聞いていると、本当に木が好きで、
どんな木も無駄にしたくないという思いが伝わってきます。

「雑木というものはない。人が雑に扱うだけ」

という武田さんの言葉からも、武田さんの木への愛情が伝わってきます。



私たち林業女子で
こういう材料を求めている方と武田さんを繋ぐことができたらいいのにと思いました。

今女子会では家具作家さんの取材をしていて、
材料の入手先がほぼ名古屋にある市場に限られていることを多くの作家さんから聞いていたので、
ぜひ家具作家さんたちにこの武田製材さんをご紹介したいと思いました。



今回武田さんのご好意でいろんな樹種のオガクズもいただきました。
そのオガクズを煮出して8月末に美杉町で行われた「美杉なあなあ祭り」にてコースターを染めてみました。

キハダは木の皮も入れたからか、本当に鮮やかな黄色に染まりました。
建材でおなじみのスギは淡い茶色に染まり、優しい色に染まりました。
ニッキは色だけでなく匂いも付き、シナモン風味のコースターになりました。



草木染めはよく聞きますが樹木で染めるのは珍しいので、いろんな機会で紹介出来ればいいなと思いました。