♪Tin Pan Alley♪

50~70年代のロック・ポップス、ソフトロック周辺についてのブログです

You Could Be Born Again

2010-01-09 | 1曲ずつ一言
The Free Design
1968
Produced by Enoch Light

忘れ切った頃に、フリー・デザインのセカンドを紹介

フリー・デザインの作品は、そもそも滅多に評価されることはありませんが、ソフトロック関連の書籍の中で論じられる時、“地味”という単語で表現されやすい本作品

確かにファーストのような、インパクトはないかも知れませんが、僕はこのアルバム、かなり好きなんですよね~~

“地味”なんて言ったら、次作の方がよっぽど地味だと思うんだけど

まぁ、地味とか、インパクトがない、とかはフリー・デザインの特徴とも言えますしね
ほとんどの曲に陰鬱さが隠し味されていますし

本作から、コーラス・ワークがさらに素晴らしいことに
4人目のデドリック、妹のエレンが参加

デドリック一家って、声が似ていると言えば似ているのですが、それなりに個性があるんですよね
そこが持ち味。

基本的にはマニアックな存在の彼らですが、(確か)本作から、エンジニアリングを、あのフィル・ラモーンが担当します
・・・これってなぜかあまり書かれていないんですが、確かセカンドからいるはずなんですよ

後にビリー・ジョエルのプロデューサーとして、一世を風靡するフィル・ラモーンですが、当時はジャズ畑のエンジニアでとして有名
ジャズ・ポップとも称されるフリー・デザインとの関わりは、彼のキャリアにおいても、重要だったのかも知れませんね。

① You Could Be Born Again C.Dedrick
静かでシンプルな前奏から、ジワッと厚い音に膨らんでいく出だし部分が、メチャクチャお洒落なタイトル・チューン。

・・・オシャレに徹しすぎてて、グイグイとサビに迫ってくるパートなんて、ドラムとベースでも効かせたら相当ナイスなロックだったのですが、その辺りはご愛嬌

いずれにせよ、魅力はまさにそのサビにかかるブリッジ部分
加入したばかりのエレンが効果的に盛り上げています

歌詞の魅力もその部分が素敵

“歌を歌うことで蘇る”という、音楽賛歌のようですが、よく聴くと2番では、人種差別を乗り越える愛を歌っているようです。

But I find all love to be easy once more
Like a child who does not care who how why what for
と登ってきて、
Begi---in to si---ing aga---in
と来るとゾクって来ます

② A Leaf Has Veins C.Dedrick
「葉脈」って邦題が存在しなくって良かった(笑)

これまた歌詞が特徴的

Ellen, Bruce, Sandy and Chrisって、メンバーの名前を並べ、“あてもなくブラブラしたけど、それが良いよね”と2回繰り返すだけの変な曲。
他は「Da da da da-- da-da」とスキャット・ハーモニー。
ほとんど歌詞がないくせに、最後のワンフレーズが、“たくさんの言葉が、良い曲を作るきっかけになる”と来るので、ガクッと来ます

③ California Dreamin' J.Phillips
ママス&パパスの代名詞を、迫力満点の、アップテンポ・カヴァー

日本のフォーク・グループがやりそうなブラス・アレンジがにくい演出
間奏のソロは拍手もの
ドラムの演出もカッコイイ

アップテンポってことを抜きにしても、複雑重唱をウリにする本家をも上回る、巧妙な追っかけハーモニーが、グルーヴ感を強烈に盛り上げてきます

2番でかます「Ca--lifornia dreamin'」と「such a winters day」とを続けるパートなんて、見事な解釈
一瞬、ママパパがどうやって歌っていたのか、忘れてしまいそうなインパクト

④ Windows of the World B.Bacharach - H.David
ディオンヌ・ワーウィックの代表曲。
バカラック作品をカヴァーさせると、凄いことになるんですよね、彼ら

こちらは、原曲の空気を最大限に活かしつつも、1分28秒辺りから見せる、優雅なハーモニーは、自家薬籠中のもの

⑤ Eleanor Rigby J.Lennon - P.McCartney
カヴァー作品を2曲誉めちぎりましたが、この曲がフリー・デザインの数あるカヴァーのうち、最高傑作でしょう

若干のパーカスとベース音のみで、氷点下のダバダバ・コーラス
そもそもビートルズも弦楽四重奏のみをバックにしていたので、充分に裸な音だったのですが、それを狂気的に上回る、身の毛もよだつような、アカペラ・ハーモニー

スキャットのみならず、「Where do they all belong?」の箇所の「do」を変幻自在に上下させる辺りも、その美しさに背筋が凍ります

⑥ Quartet No 6 in D Minor C.Dedrick
こんなタイトルのポップス、絶対に許されまい
「四重唱六番ニ短調」
なんてこったい
邦題っぽくしたら「悲しき四重唱六番ニ短調」。全然駄目だな。

ニ短調とありますが、転調してますよね??
クラシックとかでも、そういうもんなんですか?

アップテンポと幻想的なスロー部分と、2つのパートから構成されていますが、クリスはどうもこの曲を、いっぺんに仕上げたようですね。
こういうのって別々に作られやすいですが

中間部の空白が不思議感を高めてくれます
クリスの美的センスの良さが伝わってくる、好曲

⑦ I Like the Sunrise (From the Iberian Suite) D.Ellington
リアルタイムなカヴァーが得意な彼らですが、こちらはデューク・エリントンの古い定番ジャズをピックアップ

こういうのが得意なんでしょうね。
上手さが光ります

⑧ I Found Love C.Dedrick
代表曲の一つ

フリー・デザイン作品の中でも一番の“可愛らしさ”を持つ、ウキウキした仕上がりがキャッチー

いったい何がイメージされているのかというと、祭りや路上で演奏される、ストリート・オルガン
人形がグルグル回っているような、アレです
なるほど。人形たちの踊りが目に浮かぶようです。

シンプルで分かりやすい曲ながら、バカラック作品のような気品を感じさせている、“ライター”クリス・デドリックの本領発揮です

⑨ Daniel Dolphin C.Dedrick
こちらも前奏からバロック調に

強弱入り混じるコーラスが表情豊かで、とっても優しく仕上がっています
優しさのベストな瞬間は後半からのリコーダー

彼らも自身作だったようで、後に「カイツ・アー・ファン」と一緒に、別のアルバムに再収録されます。

ところで、このダニエルってのは、イルカ好きで有名だったシンガー・ソングライター、フレッド・ニールを指しています

⑩ Happy Together C.Bonner - A.Gordon
たぶんだけど、フリー・デザインの数多くのカヴァー作品の中で、一番無難にカヴァーされている曲じゃないですかね

前年に全米で超特大ヒットとなったタートルズの代名詞
ブルースがこの曲のファンなんだとか。

アレンジは無難ですが、これを選曲していること自体は流石ですよね~
サビの特徴だった「パーパッパ パッパーパ」を冒頭から取り入れ、ご機嫌な一曲です

⑪ Ivy on a Windy Day C.Dedrick - S.Zynczak
このアルバム、このラスト2曲が暗いんですよ(笑)

まずこちらは始まり方がすごい。
アカペラチックな薄い音でも、サイケなサウンドが作れるんですね。
思わず、ライナーノーツも“ゴーストライク・ヴォーカル”なんて書いてます

ちょうど真ん中あたりにも、サイケ・アカペラが登場して、その霧のようなハーモニーがフェイドアウトしてくと、急にスウィングしだします

そう、この曲は前半と後半がリズムがくっきり違うんです
その見せ方が上手い。後半に浮かび上がってくるアコギの音色なんか、フリー・デザインお得意の世界

⑫ An Elegy C.Dedrick
こちらはテーマが大変に重い。
タイトルの意味は“哀歌”。
誰へのかと言うと、ベトナム戦争でなくなった、彼らのイトコに対する哀歌なんだそうです。

クリスは音作りが“詩人”ですよね
オルガンやホルンの暗さ、ヴァイオリンの悲しさ、多くを語ってくれます。

中間部のアップテンポでも効かせます
跳ねる楽器が“生”を感じさせる、非常に良いパートだと思います。



とまぁ、大変に重たい感じで終わるアルバム
アーティストというより“音楽家”という言葉が似合う作品で、らしさが輝いています

ちなみにこの年、クリスマス・アルバムも出しています
・・・怒りの未CD化作品なんですけどね
これだけ残っています

しかも、よりによってVANDA(には頻繁にあることです)が、こんな未CD化作品に限ってべた褒め

そのクリスマス・アルバムから、バージョン違いでシングル・カットされたA面とB面は、この『You Could Be Born Again』のCDのボーナスに入ってて、これがまた素晴らしいんですよ

・・・何とかCD化されることを願いつつ



本年も、よろしくお願いいたします。
いつもご訪問、ありがとうございます。
今年も、ちまちま更新していきまーす


2 コメント

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Unknown (POPOSUKE)
2010-01-09 12:10:41
ベンジャミンさん あけましておめでとうございます。

この2ndアルバムはまだ聴いておりませんが、なかなか良い内容みたいですね♪
今年はイギリスものばかりではなく、アメリカものも多く聴いてみたいと思います。

本年も宜しくお願い致します!
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>POPOSUKE様 (ベンジャミン)
2010-01-10 01:55:39
どもです!

フリー・デザインは60年代音楽好きでしたら、ワンアクセントとして、是非聴いていただきたいグループですね。

今年もよろしくお願いいたします!!
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