
Pickettywitch
1970.11
Produced by John Macleod
・・・プロデューサー、ジョン・マクレオドがクレジットされているのは多分、本国UK盤のみ。
曲順の違うUS盤のプロデューサーは謎です。
以下の曲順はUK盤、のはず。B面のラスト2曲が入れ替わる説もある(笑)。
11月リリースはあっていると思います
ってな訳で、久しぶりに情報の少ないアーティストをご紹介
ジョン・マクレオドが盟友、トニー・マコーレイ(Tony Macaulay)と共に押し出した、UKポップの変化球、ピケティウィッチです
メイン・ヴォーカルを務めるポリー・ブラウン(Polly Brown)の色っぽいのにどこか無垢な歌声と、豪華なハーモニーが魅力
「マコーレイ&マクレオド」サウンドも魅力的なのですが、自作曲も一定レベルを保っていて、隠れた名ポップ・アーティスト
今回は、彼らの最初で最後のアルバムを中心に、前後のシングルもご紹介~。
グループ名の由来は、ポリーの妹がそういう名前の村の近くを通った時にインスパイアされた、なんて話が記録されているのですが、最近それは否定されているらしいですね~
そういう名前のパブならあったけど、村なんてなくない?みたいな。
毎度、マイナー・グループのメンバー変遷など、ほとんど意味のないことではありますが(笑)、、、
元々はポリーとギター担当のデイヴ・マーター(Dave Martyr)、ベースのマーチン・ブリッジーズ(Martin Bridges)、ドラムのキース・ホール(Keith Hall)、キーボードのボブ・ブリトゥン(Bob Brittain)、さらにヴォーカルのクリス・ウォレン(Chris Warren)も加えた状態で、アピール活動を続けていたんだそうな。
そんな中で、ジョン・マクレオドに見出され、おなじみパイ(Pye)レコードへ
● You Got Me So I Don't Know (J.MacLeod)
そして69年7月に出したシングルがこちら
前奏の魅力的なメロディはさすがマクレオド
バブルガムっぽさの中にも、程よい憂い加減がミックス。
ブリッジ部分なんかは、同時代にマコーレイたちが関わっていたファウンデーションズ(The Foundations)っぽさも。
ヒットこそしませんでしたが、鍵盤楽器とストリングスを巧みに組み合わせ、軽快なポップス・ドラムも弾けて、この後の快進撃の方向性を感じさせる仕上がり。
テレビ出演もしたんだとか
● Solomon Grundy (E.Allendale)
B面は、それこそファウンデーションズのカヴァーで、作者もその一人、エリック・アランデール(Eric Allendale)。
なんとなく陳腐さが漂うのですが、そこがまた良いと思わせてくれます(笑)。
ソロモン・グランディーってのは、マザー・グースのでしたかね。
この曲聞くと、「ドレミファソラシドってどんな音だったっけ?」って考えたくなる
魅力十分なスタートではありましたが、せっかくのメジャーデビューが不発だったので、マネージャーが撤退。
ついでに、ギターのデイヴ・マーターが去り、ベースだったマーチン・ブリッジーズがギターに、新たにマイク・トミック(Mike Tomich)って人がベースになりました。
かなりどうでも良いでしょうけど(笑)。
● That Same Old Feeling (J.MacLeod - T.Macaulay) :UK #5 /US #67
去った方々は可哀想に
ってな訳で、同年11月リリースのセカンド・シングルで早速大ヒットが来ました
モータウンを思わせる、メロディアスな前奏は、この頃のマコーレイの得意技
ストリングスも素晴らしいですが、控えめに全体を支えているオルガン? メロトロン?が効果的。
ピケティウィッチの名曲って、どこか涙を誘うんですよねー。ポリーの声の魅力でもあると思いますが。
これまたファウンデーションズの方が先だったのですが、完全にピケティウィッチの代表曲となりました。
揺れ動いていた時期だったためか、グループ名義ではなく、ポリー・ブラウンのソロ名義って案もあったようで。
この時のチャートは、1位にサイモン&ガーファンクル、3位にビートルズ、7位にプレスリー、9位にジャクソン5がいたそうで、ピケティウィッチ連中の喜びはいかばかりか、といったところでしょう
● Times (K.Hall - C.Warren)
そして、売れ行きこそ中途半端でしたが、実質の最高傑作であるサード・シングルの下記②もリリース。
これはそのB面。
冒頭にもちょっと書きましたが、彼らの自作曲ってのは中々捨てたもんじゃないんですよね
これが好例
もう一人のフロントマンであるクリスと、ドラムのキースとが共作したウキウキポップス
もちろん、マクレオドのアレンジが効いているんでしょうけども
・・・いや、つくづく素晴らしいミュージシャンだと思うわ、ジョン・マクレオド。
間奏のギターも彼ららしくてグッド。
「トゥトゥットゥートゥトゥ」とか「ドゥリュッリュッリュー」ってコーラス(笑)は、実はいろんな曲に満載で、ほとんど彼らの代名詞的サウンド
このポップス万歳な路線に、ギターのマーチン・ブリッジーズ、ベースのマイク・トミックがギヴ・アップ
ギターにはピート・ホーキンス(Pete Hawkins)、ベースにはブライアン・スチュワート(Brian Stewart)が加入。
彼ら2人は、直後の下記シングルでB面、アルバムで①を飾る曲を書き上げるという、大変な即戦力だったようです
● Baby I Won't Let You Down (G.Stephens - L.Reed) :UK #27
レス・リード(Les Reed)とジェフ・スティーヴンス(Geoff Stephens)(の多分書き下ろし)作品が、4枚め。70年10月リリース。
確かに、このコンビの代表曲「There's a Kind Of Hush (All Over the World)」風味のナイス・ポップス
ここまではヒット曲連発
この最盛期に、アルバムも出した訳です。デビューらしく、アーティスト名と同じタイトル。
全体的にには作曲者もバラバラなのですが、しっかりとしたマコーレイ&マクレオド・サウンドをしていて、まさに胸キュンポップス(笑)、好盤だと思います
① Please Bring Her Back Home (P.Hawkins - B.Stewart)
上述通り、加入したばかりのメンバーが提供した曲を、いきなりトップバッターに
アルバム冒頭っぽい曲という訳ではないのですが、哀愁を帯びながらもキャッチーで、アルバムに期待感を持たせてくれます
ブリッジにはちゃんと「ドゥルッドゥッドゥー」
どうでも良いことですが、女性ヴォーカルでヒット曲を連発したグループが、デビューアルバムの一作目に、男性(クリス・ウォレン)ヴォーカル曲を持ってくるか、普通??(笑)
② Sad Old Kinda' Movie (J.MacLeod - T.Macaulay) :UK #16
これが話題のサード・シングル
ポリー自身も、これが最高のレコーディングだったと語っており、ぶっちぎりの名曲でしょう
バカラック風というかA&M風というか、マコーレイ&マクレオドはこの頃は何でも出来ちゃうんですね。
しかし、メロディもいいですけど、このポリーの歌い方というか息使いというか、最高のパフォーマンス。
ところが、その歌い方で一悶着あったようで、トニー・マコーレイが、ライヴでのポリーのアレンジに不快感を示し、ピケティウィッチに非協力的になっていったんだそうな
・・・どんな歌い方だったんでしょうね。スタジオのとは違ったようなんです。
うーむ、ひょっとしたら、彼女らの運命の分かれ道になったのかも知れませぬ
③ Take Away The Emptiness Too (J.MacLeod - T.Macaulay)
ちなみに、私のベストトラックはこちら
やっぱりマコーレイ サウンドは開始5秒で心をつかむスタイルこそ真骨頂ですよね
ファウンデーションズも録っていますし、パイ・レコードのティナ・トット(Tina Tott)というマイナーアーティストもシングルで出していますが、個人的にはピケティウィッチのが一番好き。
とりわけ、サビで「Only take away the emptiness too」を、2回目に歌う時に流れるストリングス
この「ピーーーーーーーーーン」が本当にキレてると思う乗せに乗せてくる。
ピケティウィッチは、僕の音楽鑑賞人生の割りと初期に聴いている曲なんですが、オーバーな話、この曲の影響で、ポップスの中でのストリングスの効果について見方が変わったと思います。
追っかけハーモニーも分厚くて、本当に趣味にストライク
それにしても、合いの手が入る、「And I」とか「That's fine」とかの箇所、ポリーの歌い方は完全にファウンデーションズを上回っていると思う
④ Then It Will Be (B.Brittain - P.Brown)
さあ、来ました自作曲。今度はポリーと、キーボードのボブ。
・・・よく見ると、きちんとペアが決まっているんですね、自作する時は、
フルートが印象的で、電子ピアノ(?)も心地よい。
彼女らの曲、概ね楽器数が多いよね。
⑤ Shame Shame (J.Kilbourn)
フライング・マシーンの時にも登場したこの作者、ジャネット・キルバーンさんと言うそうで、これと⑪以外にもPyeで1曲ほど提供しているようですね。
マクレオドの趣味なのか、マコーレイのかは分かりませんが、彼らって意外にギター・ソロ入れるんですよね。ポップスっぽく。
いかにもアルバム収録曲ですが、悪くないハーモニー・ポップス
⑥ The Sound of Silence (P.Simon)
A面最後は意表をついたカヴァー。
ポリーが歌手として歌いたかったのか、それともマクレオドが職人として録ってみたかったのか
冒頭、ポリーが一人で、もしくはクリスと2人だけでハモっている時は、割りと原曲に忠実。
特に意味のないカヴァーだなーなんて思ってましたが(笑)、徐々に楽器が増え始め、「Hear my words and I might teach you」のコーラス以降は、完全にピケティウィッチのテイストを出してきます。
全然ありです
この重厚な後半を思うと、やっぱりマクレオド側から提案したのではないでしょうかね。
⑦ I'll Say Bye Bye (P.Hawkins - B.Stewart)
何とアルバムB面の冒頭も彼らの作品が飾りました
・・・ここまで来ると、加入の条件にでも入れていたのではなかろうか
いや、でも中々な仕上がり。相変わらずキャッチーなメロディしています。
今回もリードはクリス。ポリーの声はコーラスに回っても存在感ありますね
間奏のスキャット・コーラスも好感度高い。
⑧ Days I Remember (B.Brittain - P.Brown)
ポリー自作曲の中で、本人もお気に入り曲
歌い方にも熱がこもっています。
でもまあ、どうしても地味に聴こえてしまいますよね、職人さんたちの作品に囲まれると
⑨ Two Hearts Are Better Than One (J.MacLeod)
ってな訳で、もういっちょマクレオド ナンバー
これまた開始5秒から攻めてきます楽しい
バブルガムっぽい声質のクリスが、優しく力強く。
(耳コピ歌詞ですが)「And say that I'm lonley you've only got to phone me」って歌詞の“音”がすごく好きです
珍しくコーラスなし。サビのメインパートに(多分)ダブルトラッキングして厚みを持たせています。
⑩ There He Goes (J.MacLeod)
フライング・マシーンなど、割りとパイ連中には定番の曲~。
僕的にはちょっと地味なテイスト
ポリーにH音を発音させると本当に素敵
⑪ Maybe We've Been Loving Too Long (J.Kilbourn)
一節によれば、これと⑫が入れ替わるようなんですが、一応この案を採用
これまたフライング~と被ってます。
いわば、マコーレイ&マクレオド ファミリーという感じなんでしょうか
弾むベースが心地よく、コーラスも分厚いアップテンポ
・・・キルバーンって言われると、つい死神の印象が強い世代です(笑)。
⑫ This Day (B.Brittain - P.Brown)
どうもこの曲はあんまり記憶に残らない(笑)。
どちらがアルバムの最後に相応しいか、中々判断に悩むところですな
ポリーはこういうしっとり系の曲の方が好きなのかというと、後のソロ作品を思えば、必ずしもそうではなさそうなんですけどね。
いずれにせよ、このアルバム自体は本当におすすめです。ぜひご一聴を
● Waldo P. Emerson Jones (J.Barry - A.Kim)
次のシングル(5枚目)も71年2月リリースと、旬を逃さないよう、精力的に活動
ヘンテコな歌詞と、冗談めいたメロディのこの曲を出すのは、ポリーが結構嫌がったそうですが、会社から押し切られ、出してみたらやっぱり失敗だった。。。ってポリーが書いてますね。
確かに、ハッキリとした下り坂は、アルバムのセールス失敗と、このシングルでの失敗からですしね。
・・・実は、70年だけ活躍したんか
でも割りとこの曲好きなんですよね、私
と思ったら、ジェフ・バリーとアンディー・キムという、お馴染みのポップス職人コンビ
要はこれ、アーチーズ(The Archies)のカヴァー曲な訳です。本家のも中々楽しい
ところで、このタイトルのウォルド・P・エマーソン・ジョーンズって誰なんですかね
何かWikipedia見ると、グラムリング州立大学という大学の2代目学長がこれとほとんど同じ名前なんですが、ちっとも歌詞内容と重ならない(笑)。
● Summertime Feeling (J.MacLeod - M.Redway)
● Dreamin' (J.MacLeod - M.Redway)
6枚目のシングルはマクレオドが、マイク・レッドウェイって人と組んで。71年6月。
このマイクさんは、60年代前半から歌手として活動していた方のようですが、売れなかったようでして
親しみやすさの中にも小洒落た感じがあって、悪くないカップリングなんですよ。
人気ある内だったら中ヒットぐらいしたんじゃないですかね~~~
ってな訳で、大ヒットした「That Same Old Feeling」路線の曲でも挽回ならず
A面の、「Feel so good, feel so fine」の空気は、ポリーならではの歌唱ですね
● Bring A Little Light Into My World (J.MacLeod - T.Macaulay)
3ケ月後の7枚目のシングルは、個人的にはピケティウィッチの必殺ナンバー
久々のマコーレイ作品は、彼の70年代バラードを象徴するかのような、極上メロディ
若干強引さも感じるサビへの入り方ですが(笑)、これが魅力的に響くところがマコーレイ・ナンバーの素晴らしさ。
涙すら誘う盛り上がりは、コーラスの入り具合も絶妙
ヒットしなかったのが本当に残念
この頃から、ポリー・ブラウンはソロ活動を現実的に考え始めたんだとか
実はこのタイトル、歌詞とは合っていないんですよね。
歌の中では常に「~your world」で、「私」ではなく「あなた」の心に小さな明かりを灯す、ってなっているんですよ
間違いなのか、意図があってのことなのか、真相は謎です
● Dream World (C.Warren)
これはそのB面。クリス頑張ります。本当に最低限のクオリティは提供してくる(笑)。
「バッ バババ バッバー」って合いの手が可愛らしい。
● Number Wonderful (I.Levine - L.Russel Brown)
そしていよいよ、ポリー在籍最後のシングルが72年2月に
ロック・フラワーズ(The Rock Flowers)というグループが同年に小ヒットさせているR&Bで、多分ピケティウィッチの方が後。
作者は、「幸せの黄色いリボン」Tie A Yellow Ribbon Round The Ole Oak Treeで有名なコンビですね
アーウィン・レヴィン(Irwin Levine)とラッセル・ブラウン。
ですんで、曲が悪いわけがない
ピケティウィッチらしい、チェンバロっぽい音もメルヘンな空気を作ってくれます。
ここまで来ると、ドラムのキース・ホールってすごくポップス向きな良いドラマーに思いますね
バブルガムっぽいというか(これが褒め言葉なのかどうかは別ですが・・・)
● Point Of No Return (J.MacLeod)
タイトルは、「引き返せない場所」の意味。
・・・ジョン・マクレオドから、ポリー・ブラウンへの惜別の歌、という意味合いなんでしょう
ピケティウィッチっていうのは、まさしくジョンとポリーのグループ。
ポリーが述懐していますが、ジョンがピアノに座り、パイプくゆらせながら、素晴らしいメロディを「どう?」ってピケティウィッチのメンバーに聴かせる、そんな光景が、彼女たちのあっという間の活動期間の中で、一番鮮明に残っているんだそうな。
この曲も、ポリーにとってはとびっきり思い出深い、大好きな曲とのこと
この曲を最後に2人が去りますが、ピケティウィッチ名義のシングルはもう少しだけ出てて、それはクリス・ウォレンがリードを執っています。何とも霞んだ印象です。
ポリーはソロ活動で中々な成功を収めます
またいつか言及するかも。
後、今出回っているピケティウィッチのCDでは、デビュー当時にクリスが作った「Fugue」って曲がボーナスで入っています。
これはかなり楽しいナンバー。
憂いのある前半と勢いのあるサビ。
特に中間部分を中心とした豪華ハーモニーは一聴の価値ありです
と言う訳で、捨て曲の少なめな好ポップ・アーティスト、ピケティウィッチでしたー
お久しぶりです。
フランキー・ヴァリ&フォーシーズンズが来日しますね!
本当にもうお祭り騒ぎな気分です
超嬉しいです
今のところは東京公演だけっぽいですが、お客の入りはどんな感じになりそうか。。。