The Free Design
1967
Produced by Enoch Light
ソフトロック論を書いた次にフリー・デザインってのはあまりにも安易だ、と思ったマニアな方もいるとは思いますが、実は、これをアップしたいがために、“ソフトロック”という言葉を紹介したようなものでして
ソフトロック音楽の頂点の一角を担うフリー・デザインは、ファンには定番過ぎる感もありますが、一般には、、、一生彼らの音楽を聴かずに終わることも有り得ますね(笑)。
何てたって売れなかった
①のエラく微妙なランキングは、実は彼らの唯一最高のランク・イン何てこったい
売れなかった理由の一つは、彼らのレコード会社、プロジェクト3が、そもそもメディア戦略費用が少なく、その分を、音質を上げることや、レコードの包装を頑丈にすることに使う、頑固で職人気質な会社だったからです
もう一つの理由、それは彼らの音楽が難しかったこと
きっと別の会社でも大ヒットはなかったのでは?と考えたくもなる
メンバーのデドリック(Dedrick)一家は音楽ファミリーで全員が正規の音楽教育を受けているという
これは凄いですよ
そんなポップ・ミュージシャン、滅多にいねぇし
とりあえずは、長男のブルース(Bruce)・次男のクリス(Chris)・長女の(Sandy)という三人でデビュー
柱となったのは、クリスで、ポップな曲を自作し、世に出そうと懸命に広報活動をします
いくつかのレコード会社が興味を示したようですが、実はさっきの“頑固”会社、クリスがその中から選んだんですよ
どうやら端から超高度な音楽作りがしたかったようです
注:プロデューサーのイーノック・ライト(Enoch Light)さんは、そのプロジェクト3のオーナー
“こだわり”の人
彼らは計6枚ほどアルバムを発表しますが、何とほとんど捨て曲0という、とてつもない実力派です
…反面、飛びぬけて良い曲が少ないとも思いますが
全体的にビートが少ないのが特徴です
さて、このアルバムですが、今まで紹介してきた作品の中ではぶっち切りの名盤です一家に一枚ってアルバムだと思ってます
彼らの最高傑作は4作目と言われますが、まずはやっぱコレでしょう
このアルバムで得られる快感は、他では得られないなぁと、いつ聴いても新鮮です
長女のサンディと長兄のブルースとの3人で、驚異的なコーラス・ワークを披露し、東海岸の優秀なミュージシャンが抜群の演奏をし、強力スタッフ陣が超高音質でお届けしてます
① Kites Are Fun C.Dedrick :US #114
この1曲にノック・アウト(笑)という方は多いでしょうね
僕も初めてこれを聴いた時、しばらくメロディが頭から離れず、サビ直前のコーラスを思い出しては身震いしてましたよ
デビュー・シングルにして最高傑作と言って良いような、究極の1曲ではないでしょうか
お洒落なギターで始まり、リコーダー(クリスの専攻とあって、抜群の使われ方をする)が合いの手を入れ、それこそ笛の音色のようなサンディの歌声が入り、それがハモりになった途端に、何と転調
ポップなメロディが始まって「へぇ~っ」て聴いてたら、サビの直前のアレはなんなんだ
ユニゾンから抜群の3声コーラス
兄弟の声質が似ているってことは、やっぱ良いですね
ベースやパーカスも本当に素敵
午前が似合う曲。
② Make the Madness Stop C.Dedrick - S.Zynczak - S.Dedrick
誰かが、フリー・デザインのハーモニーを“氷点下の美しさ”と言っていたが、大納得
凍えてしまいそうです
この歌も「Wow wou what..」という、力強くも可憐なハーモニーは身震いものです 快心のアップテンポ。
ちなみに、共作者のズィンクザックさん、私はこれまで大変な誤解をしておりました
ジョー・ズィンクザック(Joe Zynczak)という人物が、フリー・デザインに惚れ込み、曲を共作したり、しまいには、彼らの曲の所有権まで持っているということは何となく理解していたつもりです。
んで、この「S」の付くズィンクザックさんは誰なのか分かっていなかったのですが、実は、長女のサンディーなんですね
サンディーは、クレジット上では、常にサンディー・ズィンクザックなんだそうなんです。・・・って皆さん、知ってました??
つまり、サンディーは、ジョー・ズィンクザックとご夫婦ってことで良いのでしょうか?
するって~と、その後ろの「S」の付くデドリックは誰? となる訳ですが、これは末妹のステファニー(Stephanie)な訳ですよ。メンバーに加わることはなかったけど、曲を提供し続けた控えめな妹さん。
いやはや、何はともあれ、私が間抜けだっただけですが、色々すっきりしました 特に⑩。
③ When Love Is Young S.Zynczak - S.Dedrick
サンディの歌の上手さが光ります
④ Proper Ornaments C.Dedrick
これにも完全にやられました(笑)
素晴らしい出来栄え
キャッチーな前奏に「Papapa-pa-pa」ってコーラスが良いわぁ
特に、三人がバラバラの歌詞を歌ってハモる箇所なんて、怖いくらいです…これを聴くまで、こういうコーラス・ワークはビーチ・ボーイズしか出来ないだろうなんて考えてましたよ(笑)。
楽器は、ハープシコードでしょうかリッチな歌詞にピッタリ
⑤ My Brother Woody C.Dedrick
これなんてまさにマイナス温度の美しさです
エンディングなんて、何度聴いても新発見というか、素晴らしいに尽きますね
こんな曲を聴くと、初期の頃は、彼らはフォーク・ロック的な味をしているなーと思います
PP&M(ピーター・ポール&マリー)が好きらしいですしね
⑥ 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy) P.Simon
さぁ、レコードA面のラストはサイモン&ガーファンクルの定番曲
フリー・デザインは、アルバム内に必ず、かなりの数のカヴァーを入れてきますが、全体的に選曲がタイムリーです
これなんかも、66年10月発表の『パセリ・セージ・ローズマリー&タイム』の曲です
しかも、ほぼ同時期にハーパース・ビザール(Harpers Bizarre)が、複雑なアレンジをかまして、大ヒットさせてますしね
そちらも意識したことはほぼ間違いなさそうです。
いや、それにしてもこれは凄い
初めて聴いた時は「この出だしはどうかなぁ」って程度の感想だったのですが、綺麗な追っかけコーラスに引き込まれ、終盤に行くに連れて厚くなる音の、心地良さに、メロメロになっておりました
原曲とは違う楽しみ方が出来ます
⑦ Don't Turn Away C.Dedrick
少し空気の違う曲。
でも次のアルバムとか聴くと、本当はこういう曲の方がやりたかったのかな、とも思う
穏やかな曲ですが、コーラスが重なりだすと、楽器と共に音が大きくなっていくのが、とても盛り上がります
特に間奏明けのホルンっ
こちらも専攻楽器だったそうですが、いやはや、圧巻です
⑧ Umbrellas B.Dedrick
兄も書けるんですね面白い曲
キラキラしてるのはトライアングルなんでしょうか?
コーラスの入り具合はまたしてもも怖い(笑)。
んでもってサビの遠くで踊ってるようなホルンも変だよな~。
ドラムまで凝ってますが、冒険曲なのでしょう
「Paya paya」
⑨ Michelle J.Lennon - P.McCartney
これもタイムリーなカヴァー
発表こそ65年12月だが、66年のグラミー作曲賞ノミネートですからねあ、もちろんビートルズです。
いやぁ、中間部の不協和音スレスレ(ってか不協和音?)のハーモニーは強烈なインパクト
忘れられないッス
彼らはカナダ出身らしいので、フランス語の発音も得意なんでしょう。
⑩ Never Tell the World S.Zynczak
かつて、ここのクレジット見て、「ズィンクザックって書いてあるのに、ライナーノーツ見ると、サンディが末妹のステファニーに応援されながら作り、クリスが仕上げたと書いてあるのは何でだ?」
と混乱していたのですが、サンディー・ズィンクザックという存在が分かれば、まったくもって納得の説明でしたね
“表情豊かなスピード”なんていう、不思議な言葉が思い浮かんでしまうほど、魅力的なスピード感です
⑪ Man and a Woman P.Barouh - J.Keller - F.Lai
何かのCMでもお馴染みの曲
「ババダバダ」ってやつ(笑)。
⑫ Stay Another Season C.Dedrick
オルガンって今まで使ってましたっけか??カッコ良く目立ってます
これも実験的なんでしょうかね。
クリス自身も、初めて詞から先に作ってみたので曲が長くなった、とか言ってるし
いずれにせよ、デビュー・アルバムとは思えないほどのクオリティを維持している、光り輝くような好盤です
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