The Free Design
1968
Produced by Enoch Light
忘れ切った頃に、フリー・デザインのセカンドを紹介
フリー・デザインの作品は、そもそも滅多に評価されることはありませんが、ソフトロック関連の書籍の中で論じられる時、“地味”という単語で表現されやすい本作品
確かにファーストのような、インパクトはないかも知れませんが、僕はこのアルバム、かなり好きなんですよね~~
“地味”なんて言ったら、次作の方がよっぽど地味だと思うんだけど
まぁ、地味とか、インパクトがない、とかはフリー・デザインの特徴とも言えますしね
ほとんどの曲に陰鬱さが隠し味されていますし
本作から、コーラス・ワークがさらに素晴らしいことに
4人目のデドリック、妹のエレンが参加
デドリック一家って、声が似ていると言えば似ているのですが、それなりに個性があるんですよね
そこが持ち味。
基本的にはマニアックな存在の彼らですが、(確か)本作から、エンジニアリングを、あのフィル・ラモーンが担当します
・・・これってなぜかあまり書かれていないんですが、確かセカンドからいるはずなんですよ
後にビリー・ジョエルのプロデューサーとして、一世を風靡するフィル・ラモーンですが、当時はジャズ畑のエンジニアでとして有名
ジャズ・ポップとも称されるフリー・デザインとの関わりは、彼のキャリアにおいても、重要だったのかも知れませんね。
① You Could Be Born Again C.Dedrick
静かでシンプルな前奏から、ジワッと厚い音に膨らんでいく出だし部分が、メチャクチャお洒落なタイトル・チューン。
・・・オシャレに徹しすぎてて、グイグイとサビに迫ってくるパートなんて、ドラムとベースでも効かせたら相当ナイスなロックだったのですが、その辺りはご愛嬌
いずれにせよ、魅力はまさにそのサビにかかるブリッジ部分
加入したばかりのエレンが効果的に盛り上げています
歌詞の魅力もその部分が素敵
“歌を歌うことで蘇る”という、音楽賛歌のようですが、よく聴くと2番では、人種差別を乗り越える愛を歌っているようです。
But I find all love to be easy once more
Like a child who does not care who how why what for
と登ってきて、
Begi---in to si---ing aga---in
と来るとゾクって来ます
② A Leaf Has Veins C.Dedrick
「葉脈」って邦題が存在しなくって良かった(笑)
これまた歌詞が特徴的
Ellen, Bruce, Sandy and Chrisって、メンバーの名前を並べ、“あてもなくブラブラしたけど、それが良いよね”と2回繰り返すだけの変な曲。
他は「Da da da da-- da-da」とスキャット・ハーモニー。
ほとんど歌詞がないくせに、最後のワンフレーズが、“たくさんの言葉が、良い曲を作るきっかけになる”と来るので、ガクッと来ます
③ California Dreamin' J.Phillips
ママス&パパスの代名詞を、迫力満点の、アップテンポ・カヴァー
日本のフォーク・グループがやりそうなブラス・アレンジがにくい演出
間奏のソロは拍手もの
ドラムの演出もカッコイイ
アップテンポってことを抜きにしても、複雑重唱をウリにする本家をも上回る、巧妙な追っかけハーモニーが、グルーヴ感を強烈に盛り上げてきます
2番でかます「Ca--lifornia dreamin'」と「such a winters day」とを続けるパートなんて、見事な解釈
一瞬、ママパパがどうやって歌っていたのか、忘れてしまいそうなインパクト
④ Windows of the World B.Bacharach - H.David
ディオンヌ・ワーウィックの代表曲。
バカラック作品をカヴァーさせると、凄いことになるんですよね、彼ら
こちらは、原曲の空気を最大限に活かしつつも、1分28秒辺りから見せる、優雅なハーモニーは、自家薬籠中のもの
⑤ Eleanor Rigby J.Lennon - P.McCartney
カヴァー作品を2曲誉めちぎりましたが、この曲がフリー・デザインの数あるカヴァーのうち、最高傑作でしょう
若干のパーカスとベース音のみで、氷点下のダバダバ・コーラス
そもそもビートルズも弦楽四重奏のみをバックにしていたので、充分に裸な音だったのですが、それを狂気的に上回る、身の毛もよだつような、アカペラ・ハーモニー
スキャットのみならず、「Where do they all belong?」の箇所の「do」を変幻自在に上下させる辺りも、その美しさに背筋が凍ります
⑥ Quartet No 6 in D Minor C.Dedrick
こんなタイトルのポップス、絶対に許されまい
「四重唱六番ニ短調」
なんてこったい
邦題っぽくしたら「悲しき四重唱六番ニ短調」。全然駄目だな。
ニ短調とありますが、転調してますよね??
クラシックとかでも、そういうもんなんですか?
アップテンポと幻想的なスロー部分と、2つのパートから構成されていますが、クリスはどうもこの曲を、いっぺんに仕上げたようですね。
こういうのって別々に作られやすいですが
中間部の空白が不思議感を高めてくれます
クリスの美的センスの良さが伝わってくる、好曲
⑦ I Like the Sunrise (From the Iberian Suite) D.Ellington
リアルタイムなカヴァーが得意な彼らですが、こちらはデューク・エリントンの古い定番ジャズをピックアップ
こういうのが得意なんでしょうね。
上手さが光ります
⑧ I Found Love C.Dedrick
代表曲の一つ
フリー・デザイン作品の中でも一番の“可愛らしさ”を持つ、ウキウキした仕上がりがキャッチー
いったい何がイメージされているのかというと、祭りや路上で演奏される、ストリート・オルガン
人形がグルグル回っているような、アレです
なるほど。人形たちの踊りが目に浮かぶようです。
シンプルで分かりやすい曲ながら、バカラック作品のような気品を感じさせている、“ライター”クリス・デドリックの本領発揮です
⑨ Daniel Dolphin C.Dedrick
こちらも前奏からバロック調に
強弱入り混じるコーラスが表情豊かで、とっても優しく仕上がっています
優しさのベストな瞬間は後半からのリコーダー
彼らも自身作だったようで、後に「カイツ・アー・ファン」と一緒に、別のアルバムに再収録されます。
ところで、このダニエルってのは、イルカ好きで有名だったシンガー・ソングライター、フレッド・ニールを指しています
⑩ Happy Together C.Bonner - A.Gordon
たぶんだけど、フリー・デザインの数多くのカヴァー作品の中で、一番無難にカヴァーされている曲じゃないですかね
前年に全米で超特大ヒットとなったタートルズの代名詞
ブルースがこの曲のファンなんだとか。
アレンジは無難ですが、これを選曲していること自体は流石ですよね~
サビの特徴だった「パーパッパ パッパーパ」を冒頭から取り入れ、ご機嫌な一曲です
⑪ Ivy on a Windy Day C.Dedrick - S.Zynczak
このアルバム、このラスト2曲が暗いんですよ(笑)
まずこちらは始まり方がすごい。
アカペラチックな薄い音でも、サイケなサウンドが作れるんですね。
思わず、ライナーノーツも“ゴーストライク・ヴォーカル”なんて書いてます
ちょうど真ん中あたりにも、サイケ・アカペラが登場して、その霧のようなハーモニーがフェイドアウトしてくと、急にスウィングしだします
そう、この曲は前半と後半がリズムがくっきり違うんです
その見せ方が上手い。後半に浮かび上がってくるアコギの音色なんか、フリー・デザインお得意の世界
⑫ An Elegy C.Dedrick
こちらはテーマが大変に重い。
タイトルの意味は“哀歌”。
誰へのかと言うと、ベトナム戦争でなくなった、彼らのイトコに対する哀歌なんだそうです。
クリスは音作りが“詩人”ですよね
オルガンやホルンの暗さ、ヴァイオリンの悲しさ、多くを語ってくれます。
中間部のアップテンポでも効かせます
跳ねる楽器が“生”を感じさせる、非常に良いパートだと思います。
とまぁ、大変に重たい感じで終わるアルバム
アーティストというより“音楽家”という言葉が似合う作品で、らしさが輝いています
ちなみにこの年、クリスマス・アルバムも出しています
・・・怒りの未CD化作品なんですけどね
これだけ残っています
しかも、よりによってVANDA(には頻繁にあることです)が、こんな未CD化作品に限ってべた褒め
そのクリスマス・アルバムから、バージョン違いでシングル・カットされたA面とB面は、この『You Could Be Born Again』のCDのボーナスに入ってて、これがまた素晴らしいんですよ
・・・何とかCD化されることを願いつつ
本年も、よろしくお願いいたします。
いつもご訪問、ありがとうございます。
今年も、ちまちま更新していきまーす
1968
Produced by Enoch Light
忘れ切った頃に、フリー・デザインのセカンドを紹介
フリー・デザインの作品は、そもそも滅多に評価されることはありませんが、ソフトロック関連の書籍の中で論じられる時、“地味”という単語で表現されやすい本作品
確かにファーストのような、インパクトはないかも知れませんが、僕はこのアルバム、かなり好きなんですよね~~
“地味”なんて言ったら、次作の方がよっぽど地味だと思うんだけど
まぁ、地味とか、インパクトがない、とかはフリー・デザインの特徴とも言えますしね
ほとんどの曲に陰鬱さが隠し味されていますし
本作から、コーラス・ワークがさらに素晴らしいことに
4人目のデドリック、妹のエレンが参加
デドリック一家って、声が似ていると言えば似ているのですが、それなりに個性があるんですよね
そこが持ち味。
基本的にはマニアックな存在の彼らですが、(確か)本作から、エンジニアリングを、あのフィル・ラモーンが担当します
・・・これってなぜかあまり書かれていないんですが、確かセカンドからいるはずなんですよ
後にビリー・ジョエルのプロデューサーとして、一世を風靡するフィル・ラモーンですが、当時はジャズ畑のエンジニアでとして有名
ジャズ・ポップとも称されるフリー・デザインとの関わりは、彼のキャリアにおいても、重要だったのかも知れませんね。
① You Could Be Born Again C.Dedrick
静かでシンプルな前奏から、ジワッと厚い音に膨らんでいく出だし部分が、メチャクチャお洒落なタイトル・チューン。
・・・オシャレに徹しすぎてて、グイグイとサビに迫ってくるパートなんて、ドラムとベースでも効かせたら相当ナイスなロックだったのですが、その辺りはご愛嬌
いずれにせよ、魅力はまさにそのサビにかかるブリッジ部分
加入したばかりのエレンが効果的に盛り上げています
歌詞の魅力もその部分が素敵
“歌を歌うことで蘇る”という、音楽賛歌のようですが、よく聴くと2番では、人種差別を乗り越える愛を歌っているようです。
But I find all love to be easy once more
Like a child who does not care who how why what for
と登ってきて、
Begi---in to si---ing aga---in
と来るとゾクって来ます
② A Leaf Has Veins C.Dedrick
「葉脈」って邦題が存在しなくって良かった(笑)
これまた歌詞が特徴的
Ellen, Bruce, Sandy and Chrisって、メンバーの名前を並べ、“あてもなくブラブラしたけど、それが良いよね”と2回繰り返すだけの変な曲。
他は「Da da da da-- da-da」とスキャット・ハーモニー。
ほとんど歌詞がないくせに、最後のワンフレーズが、“たくさんの言葉が、良い曲を作るきっかけになる”と来るので、ガクッと来ます
③ California Dreamin' J.Phillips
ママス&パパスの代名詞を、迫力満点の、アップテンポ・カヴァー
日本のフォーク・グループがやりそうなブラス・アレンジがにくい演出
間奏のソロは拍手もの
ドラムの演出もカッコイイ
アップテンポってことを抜きにしても、複雑重唱をウリにする本家をも上回る、巧妙な追っかけハーモニーが、グルーヴ感を強烈に盛り上げてきます
2番でかます「Ca--lifornia dreamin'」と「such a winters day」とを続けるパートなんて、見事な解釈
一瞬、ママパパがどうやって歌っていたのか、忘れてしまいそうなインパクト
④ Windows of the World B.Bacharach - H.David
ディオンヌ・ワーウィックの代表曲。
バカラック作品をカヴァーさせると、凄いことになるんですよね、彼ら
こちらは、原曲の空気を最大限に活かしつつも、1分28秒辺りから見せる、優雅なハーモニーは、自家薬籠中のもの
⑤ Eleanor Rigby J.Lennon - P.McCartney
カヴァー作品を2曲誉めちぎりましたが、この曲がフリー・デザインの数あるカヴァーのうち、最高傑作でしょう
若干のパーカスとベース音のみで、氷点下のダバダバ・コーラス
そもそもビートルズも弦楽四重奏のみをバックにしていたので、充分に裸な音だったのですが、それを狂気的に上回る、身の毛もよだつような、アカペラ・ハーモニー
スキャットのみならず、「Where do they all belong?」の箇所の「do」を変幻自在に上下させる辺りも、その美しさに背筋が凍ります
⑥ Quartet No 6 in D Minor C.Dedrick
こんなタイトルのポップス、絶対に許されまい
「四重唱六番ニ短調」
なんてこったい
邦題っぽくしたら「悲しき四重唱六番ニ短調」。全然駄目だな。
ニ短調とありますが、転調してますよね??
クラシックとかでも、そういうもんなんですか?
アップテンポと幻想的なスロー部分と、2つのパートから構成されていますが、クリスはどうもこの曲を、いっぺんに仕上げたようですね。
こういうのって別々に作られやすいですが
中間部の空白が不思議感を高めてくれます
クリスの美的センスの良さが伝わってくる、好曲
⑦ I Like the Sunrise (From the Iberian Suite) D.Ellington
リアルタイムなカヴァーが得意な彼らですが、こちらはデューク・エリントンの古い定番ジャズをピックアップ
こういうのが得意なんでしょうね。
上手さが光ります
⑧ I Found Love C.Dedrick
代表曲の一つ
フリー・デザイン作品の中でも一番の“可愛らしさ”を持つ、ウキウキした仕上がりがキャッチー
いったい何がイメージされているのかというと、祭りや路上で演奏される、ストリート・オルガン
人形がグルグル回っているような、アレです
なるほど。人形たちの踊りが目に浮かぶようです。
シンプルで分かりやすい曲ながら、バカラック作品のような気品を感じさせている、“ライター”クリス・デドリックの本領発揮です
⑨ Daniel Dolphin C.Dedrick
こちらも前奏からバロック調に
強弱入り混じるコーラスが表情豊かで、とっても優しく仕上がっています
優しさのベストな瞬間は後半からのリコーダー
彼らも自身作だったようで、後に「カイツ・アー・ファン」と一緒に、別のアルバムに再収録されます。
ところで、このダニエルってのは、イルカ好きで有名だったシンガー・ソングライター、フレッド・ニールを指しています
⑩ Happy Together C.Bonner - A.Gordon
たぶんだけど、フリー・デザインの数多くのカヴァー作品の中で、一番無難にカヴァーされている曲じゃないですかね
前年に全米で超特大ヒットとなったタートルズの代名詞
ブルースがこの曲のファンなんだとか。
アレンジは無難ですが、これを選曲していること自体は流石ですよね~
サビの特徴だった「パーパッパ パッパーパ」を冒頭から取り入れ、ご機嫌な一曲です
⑪ Ivy on a Windy Day C.Dedrick - S.Zynczak
このアルバム、このラスト2曲が暗いんですよ(笑)
まずこちらは始まり方がすごい。
アカペラチックな薄い音でも、サイケなサウンドが作れるんですね。
思わず、ライナーノーツも“ゴーストライク・ヴォーカル”なんて書いてます
ちょうど真ん中あたりにも、サイケ・アカペラが登場して、その霧のようなハーモニーがフェイドアウトしてくと、急にスウィングしだします
そう、この曲は前半と後半がリズムがくっきり違うんです
その見せ方が上手い。後半に浮かび上がってくるアコギの音色なんか、フリー・デザインお得意の世界
⑫ An Elegy C.Dedrick
こちらはテーマが大変に重い。
タイトルの意味は“哀歌”。
誰へのかと言うと、ベトナム戦争でなくなった、彼らのイトコに対する哀歌なんだそうです。
クリスは音作りが“詩人”ですよね
オルガンやホルンの暗さ、ヴァイオリンの悲しさ、多くを語ってくれます。
中間部のアップテンポでも効かせます
跳ねる楽器が“生”を感じさせる、非常に良いパートだと思います。
とまぁ、大変に重たい感じで終わるアルバム
アーティストというより“音楽家”という言葉が似合う作品で、らしさが輝いています
ちなみにこの年、クリスマス・アルバムも出しています
・・・怒りの未CD化作品なんですけどね
これだけ残っています
しかも、よりによってVANDA(には頻繁にあることです)が、こんな未CD化作品に限ってべた褒め
そのクリスマス・アルバムから、バージョン違いでシングル・カットされたA面とB面は、この『You Could Be Born Again』のCDのボーナスに入ってて、これがまた素晴らしいんですよ
・・・何とかCD化されることを願いつつ
本年も、よろしくお願いいたします。
いつもご訪問、ありがとうございます。
今年も、ちまちま更新していきまーす
フリー・デザインは60年代音楽好きでしたら、ワンアクセントとして、是非聴いていただきたいグループですね。
今年もよろしくお願いいたします!!
この2ndアルバムはまだ聴いておりませんが、なかなか良い内容みたいですね♪
今年はイギリスものばかりではなく、アメリカものも多く聴いてみたいと思います。
本年も宜しくお願い致します!