♪Tin Pan Alley♪

50~70年代のロック・ポップス、ソフトロック周辺についてのブログです

Pet Sounds :US #10 /UK #2

2007-09-06 | 1曲ずつ一言
The Beach Boys
1966.5
Produced by Brian Wilson

音楽好きの方でしたら、僕のブログがどうして緑色の背景になっているか、何となく分かりますよね???
そう、愛する『ペットサウンズ』のジャケットから取っているんです

つい最近の『レココレ』でも、60年代のアルバム100選で堂々1位に輝いたビーチボーイズの最高傑作『ペットサウンズ』ブライアンの、じゃない理由はこちら

2年ほど前の『ロッキンオン』で行われた、アーティストへのアンケートによる「偉大なアーティスト・ランキング」の中で、並み居る大アーティストたちに混じって、売り上げ枚数総計では実に凡庸なビーチ・ボーイズが上位に食い込んでいた理由も、大半はこの『ペットサウンズ』という存在のおかげでしょう

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そんな“音楽財産”と私がどのように出会ったかを書かせてください。
恐らく、『ペットサウンズ』を以下のように聴き始めた人間は世界で僕ぐらいではなかろうかと思います

以前に書きましたが、僕は洋楽を“英語の勉強”としてのみ聞いておりました
ですので、このアルバムもその1つだったのです

確か、クリスマス・アルバムと前後して、“ロック・ポップスの金字塔”という帯を見て、「まぁ、これくらいは聞いておこう」と思い買ったんだと思います

…この時点での僕の手元のビーチ・ボーイズは、ベスト盤・クリスマス・ペット~、の合計3枚。他のリスニング用には、ビートルズの赤と青があるだけ(笑)。
今思うと凄いな、この状況

ちなみに、当時の英語の勉強方法についてご紹介いたします

①耳に慣らすため、通学時間(片道1時間ちょい)を使って、最低1週間は同じCDのみを聞く
②これを繰り返す。1つのCDを聴いている週は、滅多に他の音楽は聴かない。
③耳に慣れた曲から、1日1曲のペースで暗記に取り掛かる
④暗記方法はこんな感じ目で追うだけ小声でささやく低音で歌う原曲キーで歌う歌詞を見ないで歌う。

ここでのポイントは①と②です
そう、僕は『ペットサウンズ』を感想の善し悪しと無関係に聞き続けたわけです(笑)。

では、僕の『ペットサウンズ』への感想はどうだったかと言うと、それはそれは落第点でした
明るいアップテンポ好きな少年に、あの空気とテンポは、ちょっとホーリー過ぎて(笑)。
“まぁ、良い芸術ってこんなもんなんだろうな”程度に軽く考え、1週間経ったら交換しようと思っておりました

ところが、1週間の最後の日の帰り道、いつものようにCDを聴いていて、ふと“2週連続で聴いてみよう”と思ったのです
これ自体はそんなに珍しいことではないのですが、少し、『ペットサウンズ』のメロディが心地良く感じ始めていたようで、、、
結局、僕は中々CDを交代させず、週末のみにCDチェンジをさせるスタイルも手伝って、1月半以上『ペットサウンズ』のみを聴くという、超マニアのような音楽スタイルを実行してしまったのです(笑)

完全にハマっておりました
何が良かったのか、今でも説明はつきませんが、結果として、この『ペットサウンズ』だけを聴き続ける経験が、僕を“60年代ポップス好き”に導いていったことは間違いないですね
音楽の楽しさと奥深さ、美しさと力強さ、一気に教わりました。僕の音楽の師匠。
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今でこそ現役アーティストが「『ペットサウンズ』で音楽の全てが変わったよね」なんて発言しても、平気で雑誌に載りますが、再評価は90年代頃から

いや、僕が聴き始めた頃も、まだ厳しかったと思いますね

ある歌手がインタビューで「好きなアーティストはビートルズとビーチボーイズ、特にブライアン・ウィルソンかな。『ペットサウンズ』がさ」
みたいに答えていたのに、日本人インタビュアーは
「好きなアーティストはビートルズなどだそうです」
って翻訳していたのが一番衝撃的だった(笑)。

あまりに愛されたアルバムですが、その極地は、このアルバムのみを扱ったボックス・セットまで登場したということでしょうね
・・・ペットサウンズ関連のものに10万円以上つぎ込んでいる人、挙手こういう人絶対にいるはず(笑)。

有名な話ですのではしょりますが、出た当初は割と不評でした
海なし、女の子賛歌なし、アップテンポもほとんどなし、従来のビーチボーイズ・サウンドと決定的に毛色が違うのはこの辺でしょう
パーカス多い、ベースラインが目立つ、意外な楽器が登場、この辺はこれまでもチラチラ見せておりましたし

思うに音楽面の変化は、『トゥデイ』『サマーデイズ』の流れから言えば、長足飛びの変化とは言いがたいと思うのですが、イメージ部分を変えすぎたんですよ
せっかく『サマーデイズ』はジャケ写真とアルバムのタイトルで、ポップス万歳の内容を誤魔化していたのに、今回はジャケ写真もアルバムのタイトルもまるで“夏と海”を守っていない(笑)
・・・このアルバムにも夏の写真と夏のタイトルが付いていたら、ちょっと位置づけが変わったかもしれませんね~

もう1つ、このアルバムのために専属作詞家をつけたことも異色ですね
その人の名はトニー・アッシャー
ロジャー・ニコルスとも組んで大仕事をする人物
マイク・ラヴでも、ゲイリー・アッシャーでも、ロジャー・クリスチャンでも、もちろん自分の詞でもない、新しい世界を求めていたんですね

トニーはブライアンの期待に応えまくったと思うんですが、これ以降ほとんどお付き合いがないのが逆に不思議ですね

決定的に『トゥデイ』や『サマーデイズ』と異なる(ある意味『パーティ』とは少し近い)、このアルバムの異色性といえば、それは“コンセプト”という要素でしょう

ビートルズの『サージェント~』と並び称される、“初の”コンセプト・アルバムという肩書きですが、、、ちょっと違和感がなくもない

コンセプト・アルバムとは、後のプログレ系のアルバムもそうですが、テーマや設定など、一つ貫くものを持っているアルバムです。
例えば『サージェント~』の場合、“架空のバンドによる演奏”をテーマに、サイケ全開な曲たちをまとめあげています

では『ペットサウンズ』は何を持ってコンセプチュアルとされているのでしょう??
・・・実は、その音楽的“雰囲気”のみではないでしょうか?

とあるビートルズファンがネットで、
「『ペットサウンズ』はコンセプトの度合いが『サージェント』に遠く及ばない」
と、ビートルズの方が優れていると仰ってましたが、、、
“音楽”のみでコンセプトを感じさせたビーチ・ボーイズの方が圧勝していると思う

アルバム1枚を、一つの空気で支配した最初の作品、それが『ペットサウンズ』

※※※
あまり流布していない説ですが、よく見ると『ペットサウンズ』にも貫かれるテーマがあるみたいなんですよね

それは“喪失感”です。

結婚の幸せを歌うトップバッターから、徐々に自信なさげ、強がり、開き直り、自棄、、、様々なマイナスの姿勢を見せ、最後に強烈な喪失を演出していますなるほど。

中山さんでしたかね、この話されてたの??
この説はかなり説得力ありますよね
結果論っぽくもありますが

例えば、「え?スループ・ジョンBは?」と思いますでしょ?
でも、これはちゃんとその1曲前で脱線を宣言しているんですよ(笑)

ただ、タイトル曲がいまいち当てはまってくれないのですよね

従来アルバムの花形とも言うべき、タイトル曲が、あんな位置で、あんなインストで登場すること自体、ちょっと期待外れなんですが

※※※

ビーチ・ボーイズが他(含・ビートルズ)を突き放すほど世の先端を走っていた時期の“答え”として辿り着いた、“美”の究極の形『ペット・サウンズ』、一家に一枚以上(笑)いかがでしょうか?
本当にいるんですよね、ペットサウンズを家用、車用、職場用の計3枚持ってる人とか(笑)。

・・・書きすぎましたので、一曲ごとの紹介は次回やります


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