♪Tin Pan Alley♪

50~70年代のロック・ポップス、ソフトロック周辺についてのブログです

The Beach Boys' Christmas Album :US #6

2005-12-08 | 1曲ずつ一言
The Beach Boys
1963.10
Produced by Brian Wilson

・・・えぇ、まぁ、ついでですし。彼らの7作目が丁度これですから。さっさと6作紹介しといたのは確信犯ですけど

ブリティッシュ・インベイション幕開けの64年に、何とか奮闘したアメリカのグループよろしく、年の締めにはクリスマス・アルバムをもって来ました(同時にライヴ・アルバムも出しますが)

ブライアンも、信仰心の発露として、スペクターへの憧憬として、何としても作りたいアルバムだったようです

“一年中聴けるクリスマス・アルバム”なんてうたい文句、冗談だと思うかもしれませんが、騙されたと思って一度これを手にしてみることをお勧めします
サーフィン・ホットロッドの延長線ってのが絶妙なスパイス何より、ロック・コーラス・グループの歌うクリスマス・ソングってのは、中々ないですよ

半数近くがオリジナル・ソング…大した量見てませんが、クリスマス・アルバムとしては珍しいですよね??翌年に出すスプリームズは頑張ってましたっけ?前年のフォー・シーズンズはもっとオリジナルが欲しかった~。

メンバーにとっては伝統曲の収録も、キャリアの上で大きな意味があったようで、初のフル・オーケストラとの共演なんですよ
指揮を執る、アレンジャーのディック・レイノルズは、ビーチ・ボーイズのコーラスのルーツ、フォー・フレッシュメンも手がけていた人。

ちなみに、ランクは、全てクリスマス・チャートという、クリスマス関連作品のみを対象としたランキングでのお話です。

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以下は元気いっぱい余談です。
私にとって、このアルバムは最高に思い入れが深いのです。
高校三年の時、受験勉強の良い休憩になると思い、音楽で英語力を鍛えようとることにした僕は、適当にビートルズの赤盤・青盤を買い、毎日少しずつ歌詞の暗記をしてました。
それらが完全に終わると、飽きてしまい(笑)、別の音楽でもやってみようと思いました。そこで、父の車中にあった、オムニバスの洋楽CDで気に入っていた「サーフィンUSA」を歌っている連中に興味を持ち、ベスト盤を適当に買ったのです。
ところが、僕はこれに激ハマリをしてしまい、毎日聴くことおよそ一ヶ月。…英語の勉強って姿勢だけは貫いた、そんな受験生。

周りに「すげぇ良い×2」を連発していると、ある日友達が「貸してよ」と言うので、確か10日間ほど貸したのです。
・・・ところが三日目辺りで僕は禁断症状(病)。聴きたくて聴きたくてしょうがなく「何か買おう!」と発心し、地元のCDショップへ。12月だったので、クリスマス・アルバムを注文すると、「明後日にはボーナスが入った完全盤が出るよ」と言うのです。仕方が無いので、更に2、3日待ちました。

ビーチ・ボーイズのコーラスに餓えることおよそ5日目、大急ぎで店に行き、更なる大急ぎで家に帰り、慌てて包装を外し、デッキにかけました。
CDの回転音に続いて、ドラムとピアノの前奏が入り、待ち望んでいた以上に美しく感じる、ブライアンとマイクの「ウーーーー」ってハーモニーが。。。。
・・・悲惨な言い回しで恐縮ですが、“ハイになる”ってあんな感じなのでしょうか?直後、僕は泣いているのか笑っているのか、訳の分からないテンションになり、部屋を飛び出て廊下に走り出し、また部屋に走り戻るという、人生でたった一度の奇行をしました(爆)。兄妹が見ていなくて良かったです。
でも何故かそのくらい感動したし、聴けて本当に良かった!と心の底から思えたのです。

近年のブライアン・ウィルソンのライヴで、皆様にならって「サンキュー、ブライアン!」と叫んでいた時の僕は、いつもこの恥ずかしい思い出を心に浮かべていました。

トラック・バイ・トラック

① Little Saint Nick B.Wilson - M.Love :US #3
私を奇行に走らせた出だしの「ウーーーー」は、世界中ここにしか存在しない「ウーーーー」でした。意味不明。いや、でもそれほど完璧

サーフィンと車の歌ばかりを歌っていたバンドが、どんなクリスマス・ソングを出すのか、と思っていたら、小さいけど速くて格好良い、ソリを歌いやがりましたあんたら最高
ベース音など、様々な面で「リトル・デュース・クーペ」が下敷きとしてあるのでしょうが、いや、絶妙なアレンジです

63年に、鈴の音などを施したヴァージョンでシングル・カットそのヴァージョンはボーナスで入ります。
僕はなぜか、こっちの“鈴なし”が好きです

② Man With All the Toys B.Wilson - M.Love :US #3
飛んでもない高さからのブライアンのファルセット、友達は引いてたなぁ(笑)。
「オ」といっているのでしょうか?合いの手もハーモニーも抜群で、控えめな演奏も、後半のオケーケストレーションのことを考えるとなおさら、魅力的でもあったり。

こちらは本アルバムと同時にシングル・リリーススペクターが売れなかったことに比して、これは凄い売り上げ状況ですよね

…僕は“天才”ブライアンが一番素晴らしい点は、“キャッチー”で“一般受け”する点だと思ってます。
「彼は“玄人受け”する、マニアックな天才だ」との一部のブライアン・ファンの方々のご意見、理解できるのですが、そんな天才なら割りといるんじゃないのか?…って思ったり

③ Santa's Beard B.Wilson - M.Love
このアルバムの魅力の一つは、コーラス・スタイルのレパートリーの豊富さと面白さではないでしょうかこれのスタイルなんて、どう言えば良いんだ???楽しいなー

んでもって歌詞がメチャクチャ面白いですよね、どれも。
“ビーチ・ボーイズがクリスマスを歌うとこうなるんだ”
って色がハッキリ出てます若者の目線を、露骨に歌詞にした草創期である60年代に相応しいクリスマス・アルバム

終盤、ダブルトラックのリード・ヴォーカルが、例によってずれているのですが、僕は妙にそこが好きなんですよ。そんな方いませんか??

④ Merry Christmas, Baby B.Wilson
冒頭のブライアンの掛け声は雑音?やけにハマってます

これまたコーラス・スタイルが良いっ「Wu------du du du, du du du du-dudu」ってもうホントに最高(アホ)。子供たちで真似したり、一緒に歌ったりしたんかな~。

歌詞が、クリスマスの日にフラれてしまう男性のお話なんですが、そう考えると、マイクの「Just for Christmas」の「グリ~ィスマス」という情けない歌い方(笑)、演出なんでしょうね

⑤ Christmas Day B.Wilson
ブライアンの自信作のようです何とリードは初めてアル・ジャーディンが執ります。歌い方がブライアンに似てるんで最初は気づかなかった~。

このベースラインはどう考えても後の「ヘルプ・ミー・ロンダ」…これの発展系が、あんな曲になるもんなんだろうか

ほのかなハーモニーをバックに、うっとりするようなメロディえっ、ここで終わるのって気分で終わります(笑)。…って思いませんか?

⑥ Frosty the Snowman
多くの方が指摘する「ブライアンはもう1曲オリジナルでいきたかったに違いない」ってのは、そうでしょうねーーー。つまり、レコードA面をオリジナルで、B面を伝統曲で、って素晴らしいコンセプトでいきたかったのでしょう。
時間がなかったんですね

という訳で、A面ラストのこの曲以降、管弦楽団を引き連れ、トラディショナル・クリスマス・キャロル
いやぁ、このコーラスには度肝を抜かれましたそんじょそこらの合唱団でもここまでは出ねぇべ(失礼)。ブライアンとマイクの呼吸も素晴らしいし、少し低音に寄ってるコーラスも心地良い。

ちなみにこっからは、ディック・レイノルズがコーラスのアレンジも主導したようです。伝統スタイルでも本当に力強く美しいハーモニー

⑦ We Three Kings of Orient Are
割りと地味な曲がB面の1曲目。…君ら本当にロック・バンドなのか?見事な合唱です

⑧ Blue Christmas
若干22歳のブライアン・ウィルソンたっての願いで、プレスリーも歌ったこの曲を、ソロで歌います
上手い。本当に上手いわー。魅力的。
と同時に、後のソロ曲、「ドント・トーク」や「キャロライン・ノー」ともまた違う歌い方だなぁとも思います。ディックの指示?

⑨ Santa Claus Is Comin' to Town
久々に明るい曲
「…comin' to town」の直後に入る、コメディの“落ち”のようなメロディ、マイクの間抜けな歌い方、どう考えても子供用

オープニング、しっとりと、完璧にコーラスしている辺りも非常に効果的に感じます。

⑩ White Christmas
こちら、一般的には明るいアレンジのを耳にしますけど、ここではとっても幻想的なハーモニーで

…これと⑨はスペクターと選曲が被ってますからね。考えてみると、極端にアレンジが違うのは、同じにならないよう意識したからかも知れませんね

⑪ I'll Be Home for Christmas
んでもってこちらもしっとり、白人ジャズ・コーラスって感じです。
綺麗ですが、陽気な曲好きな僕にとっては、若干退屈な終盤~(笑)。オリジナルはもう一曲作りたかった説、この⑩と⑪のつなげ方からも、そんな気がしたりするッス。

⑫ Auld Lang Syne
日本では卒業式に1番と2番が歌われる「蛍の光」(どうでも良い話だが、3番と4番は出征を称える歌詞なんですよね)
欧米では年末の歌だそうですね。腕を交差して手を繋ぎあい、輪になるんでしたっけ?

自家薬籠中の、とも言うべきアカペラ本当に綺麗で真似したくなりますわ。
途中からデニスの年末のご挨拶が入ります…これがリーダー格のブライアンでもマイクでもなく、女の子の人気No1の次男坊、デニス・ウィルソンだってのが凄い話

やっぱビーチ・ボーイズにとって、64年は良い年だったよなぁなんて、そん時はまだ影も形もない僕ですが、しみじみしてしまいます。


あ、言い忘れです。このアルバム、最初の余談でも少し触れたように、様々なボーナスと、77年にお流れになったクリスマス・アルバム収録予定曲などを含んだ、26個もトラックのあるCDがお勧めです
・・・最近、25曲分のが出てややこしくなったが、98年に出た26曲のが良いですよ。


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