見て見ぬ振り。

見て見ぬ振りは役立つこともあるけれど
見ないで見た振りは役に立たない。









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塵。

陽が差し込めば

塵も輝く


水を纏えば

雨粒となって地を潤し


氷を纏えば

比類なく優雅で完璧な結晶をもつ雪のひとひらとなる


光を纏った塵は

虹となって啓示すら伝えるだろう。







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犠牲者を演じる。

暗闇の中でも光を見いだしたなら

光を感じられたなら

そこに真実があると思えたなら

光が照らす道を一歩ずつ歩むだけだ

たとえ足許が覚束なくても新しい一歩を踏み出す

それだけだ

過ちとか

間違いとか

意味がないとか

無理だとか

そんなもの

決めつけられるわけない

最後に知るのは

自分しかいないから

それすら知らなければ

犠牲者を演じる人生になってしまうじゃないですか





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居場所。

関心をもってくれるのを待つんじゃなくて

関心をもつんだよ

居場所はそこから生まれるから







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年老いて

年老いて鏡を失くし顔もいらなくなり

自分の名さえ忘れる時が来たとしても

それだけを思い出すにちがいない

あのやわらかな感触の芝草山は

姿のやさしい母のようだから

抱かれるような思いで目に浮べるだろう。


しかもあの山はふところ深く火をかかえ

ふんわりした肌の下の肉体を

頑固に岩石でかためている

八方を脾睨する目を持っている。

それなのに

さりげなく七色の虹を遊ばせる山なのだ。


霊妙不可思議なあの山の虹を見ると

大宇宙に溶けこんでしまった魂までも

魅せられて寄って来るのかと思う。



沢木隆子　詩誌「ハンイ」より






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