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本と音楽とねこと

路上のX

桐野夏生,2021,路上のX,朝日新聞出版.(7.8.24)

一家離散によって幸せな生活を失った女子高生の真由。義父の虐待から逃れ、街で身を売るリオナ。二人は運命的に出会い、共に生きる決意をする。ネグレクト、DV、レイプ、JKリフレ。最悪の暴力と格闘する少女たちの肉声を物語に結実させた傑作長編小説。

 本作は、解説を書いている仁藤夢乃さん等に取材し編まれた作品だ。

 「あいつらは何とも思ってなくて、こっちは死ぬほど傷付いている。すごい不公平」
 「男もレイプして怖い目に遭わせてやればいい、という女たちがいるよ」
(中略)
 「レイプする男たちは、あたしたちを馬鹿にしてるんだよ。女なんか大嫌いで、自分たちよりずっと劣るものだと思ってる。だから、ばれなきゃ、いくらでも酷いことをする。差別そのものなんだよ」
 リオナが静かな声で言った。十七歳と思えない、大人びた言い方だった。
 「そうだよ。言うこと聞かなきゃ、一発ぶん殴ればいいと思ってるんだ」
 ミトが悔しそうに付け加えた。
 「それはあんたの元彼でしょ?」
 リオナに言われて、ミトがはっとしたようにリオナを見てから言い返した。
 「殴るのもレイプするのも、同じじゃん」
 その通りだ、と真由は思う。力で抑えつけていることには変わりがない。
(pp.222-223)

 女の子をカネで買う、買おうとする醜悪な男たちの描写、人物造形が巧い。

 ただ、後半部分はやや中だるみ。
 冗長すぎる。

 実在する女の子をモデルにしたこの手の小説としては、鈴木大介さんの里奈の物語の方が、強度、濃度ともにすばらしく高く、お薦めだ。


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