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#生涯子供なし

福山絵里子,2024,#生涯子供なし,日経BP.(7.7.24)

《「#生涯子供なし」…なぜ日本は無子化・少子化のトップランナーとなったのか。SNS上で大きな反響を呼んだ特報を起点にその背景へ迫る。》
〇「生涯子供なし、日本突出 50歳の女性の27%」
経済協力開発機構(OECD)が発表したデータベースによれば、1970年に生まれた女性の50歳時点の無子率を比べると、日本は27%と先進国で最も高い。このことを報道した日本経済新聞の記事はSNS上で大きな反響を呼び、ハッシュタグ「#生涯無子」「#生涯子供なし」を添えてさまざまな声があふれ出した。この記事を起点に、日本で急速に進む未曽有の「無子化」「少子化」について多角的な視点から向き合う。
〇本書では、あまり知られていない足下の現実をわかりやすく提示するとともに、こうした状況が到来した複雑な社会背景、女性と子どもをとりまく歴史的経緯、さらに海外での「独身税」をはじめとした最新の議論などにも触れ、私たちが今後どのような社会を構築していくべきかを検討していく。
〇本書の特筆すべき点のひとつとして、「無子化」「少子化」を語る際にとりこぼされがちな個々人の視点を丁寧に汲み取ることも試みていることが挙げられる。
「マクロの数値から無子化の全体像をつかもうとすると、それだけでは語れない個々人の人生が思い浮かぶ。個々人の人生を追いかければ、その多様性故に全体像を語ることの意味について考え込んでしまう。」(「はじめに」より)
無子化を「問題」として扱うことも慎重に問い直しながら、「問題」として取り組むことをしなければ、子供を持たない人の増加の背景にある社会的な構造を見落とす可能性があると筆者は警鐘を鳴らす。
―日本の「無子化」は突出している。それはなぜ?
この先、日本は、女性の3~4割、男性の4~5割程度が生涯にわたって子供を持たない国になると推計されている。その時、日本社会はどうなるのか。人々の生活はどう変わるのだろうか。独自の視点で検討を試み、従来の類書とは立場を異にする。子供の有無にかかわらず、現代の少子化問題に疑問を持つ方々に読んでいただきたい1冊。

なぜ日本は「無子化・少子化」のトップランナーとなったのか。日本で急速に進む「無子化・少子化」について、とりこぼされがちな個人の視点を中心に据えたデータや取材をもとに独自の視点から考察。従来の少子化論とは一線を画する立場から、私たちが構築すべき社会の在り方を問う。

「生涯無子率」今の日本の20代男の5割、女の4割は生涯子無しで人生を終えるかもしれない未来

 少子化問題を考える際、(生涯)無子率(50歳時点の無子率)の概念は重要だ。

 無子率と(合計特殊)出生率は必ずしも逆相関しない。

 日本は、無子率が高く出生率が低い典型的なケースであるが、英国の場合、高学歴の女性の無子率が高く出生率が低い一方で、10代で第一子を出産した女性がその後も第二子、第三子を出産し、それが、移民一世の女性のケースともども、出生率の向上につながっている。


(p.142)

 このグラフでも明らかのように、米国、英国、ドイツ等では無子率が上げ止まる(米国は減少)傾向にあるのに対し、日本、スペイン等では、無子率が急上昇している。

 日本の場合、高階層は子を生まないが、低階層がたくさん子を生むという状況ではないので、無子率の上昇が続けば、出生率もさらに低下することになる。

 産まない女性には、何か人生でするべきことをしていないかのような視線が投げかけられ る。一方で、産めば重い「自己責任」を負わされる。産んでも罰を受け、産まなくても罰を 受けてしまう。そんな構造が日本社会の底にある。
(p.225)

 「男は要らないが子どもはほしい」という女性は少なくない。
 シングルマザーでも無理なく子育てができる環境にしないと、出生率の上昇など、見込めるはずもない。

 鍵は、最低賃金の引き上げと、児童手当の拡充だ。

 最低時給を2,000円に引き上げ、里親手当並の児童手当を実現すれば、実際に産み育てるのは経済的に無理と諦めている女性が、妊娠、出産に踏み切ることができるだろう。

 財源は、法人税、所得税(の累進税率)の引き上げ、金融取引税の導入等で引き当てれば良い。

 わたしたちが、国の少子化対策を不快に感じるのは、妊娠、出産というプライベートなことがらに、権力が介入することを嫌悪するからだ。
 これまで虐待と暴力の無法地帯となってきたドメスティックな私生活領域に権力が介入するのは、被害者救済と加害抑止のために必要なことではあるが、妊娠、出産はそれとはちがう。

 「子をもつことの不幸」と「子をもたないことの不幸」の両者を緩和する政策が求められている。

目次
第1章 「子供を持たない人たち」の実像
#生涯子供なし
仕事か子供か、二者択一を迫られた
5000人以上の声から浮き彫りとなった現状
「そもそも子供を望まない」3割の無子思考集団
教育費や時間貧困…子供を持つことの不安におびえる人々
子供を持ちにくい社会構造
第2章 「無子化」と「少子化」を考える
無子化=少子化とは言い切れない
紀元前から存在する少子化対策
人口政策と人権
人口減少社会の行きつく未来
現代日本の少子化対策
第3章 世界の無子化と日本の無子化
50歳女性の4人に1人が子供を持たない日本
世界各国の景色にうつる無子の歴史
子を持たない人、子を持てない人
人が「子供を持たなくなるわけ」をどう説明するか
日本の少子化・未婚化・無子化の歴史
近年の世界動向
どのような人たちが子供を持たないのか
そもそもセックスしたくない?
第4章 無子化と私たちの未来
社会保障はどうなる?
高齢者の身元保証はどうなる?
子供を持たない生き方と心の問題を考える
子供のいない男性の姿は
0と1の間にあるもの


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