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本と音楽とねこと

ジンセイハ、オンガクデアル──LIFE IS MUSIC

ブレイディみかこ,2022,ジンセイハ、オンガクデアル──LIFE IS MUSIC,筑摩書房.(6.10.24)

 『アナキズム・イン・ザ・UK』を紹介したときも引用したのだが、「底辺託児所」のアナキーな子どもたちの描写にはあらためて笑ってしまう。

 ようやく立てるようになった赤ん坊の両足を思い切り踏んではぎゃあぎゃあ泣かせ、「なんでそんなことをするの?」と尋ねたら、「俺のすることに理由はない」「理由のないことをするのは楽しい」などとアナキーなことを答え、いきなりわたしの髪を引っ摑んで十本ほど根こそぎ抜いていきやがった四歳の凶暴児ジェイク。
 椅子の背中に紐をくくりつけて赤ん坊の人形を逆さに吊るし、それをめがけて玩具のナイフを連投しながら「醜い禿頭の小人は永遠に地獄で殺され続けるのだ」などと呟きつつ、完全にイッてる目つきでへらへら笑っている戦慄のゴシック・トドラー、レオ(五歳)。
 「Thank you」と言ってごらん」「FUCK」「スナックの前は手を洗おう」「FUCK」「みんなとお絵かきしよっか」「FUCK」「オムツからうんこはみ出てるよ」「FUCK」と暗い目をして世のすべてのものを否定する一歳の反逆児デイジー。
(pp.27-28)

 まったくもってこのガキどもにはミゼラブルさの欠片もない。どんなに未来が有限だろうが可能性が閉ざされていようが、いつ如何なる時にも頼もしいほど邪悪で、暴力的で、反抗的である。
 「人の髪を引っ張るのはやめなさい」「何で?」「痛いでしょ、引っ張られた方が」「他人が痛がることは楽しい」「でも赤ちゃんが怪我したらどうするの」「禿頭の小人は永遠の闇の中で罪の痛みにもがき続ける」「FUCK!FUCK!」「あっ。デイジー、・・・・・・FUCKはいいけどあんた背中に下痢便が出て来てんじゃん、くっさーい」「禿頭の小人は悪臭漂う地獄の池で永遠に死に続ける」「デイジーおいで、オムツ替えに行こう」「FUCK!FUCK!FUCK YOU!」
(p.31)

アナキズム・イン・ザ・UK、ヨーロッパ・コーリング、ブロークン・ブリテンに聞け

 ブリットポップ大好きが昂じて渡英したみかこさん、わたしもブリットポップ大好きなんで、とくに音楽ネタは楽しく読ませてもらった。

 ザ・ストーン・ローゼズ、Acoustic Ladyland、スリーター・キニー、スリーフォード・モッズ、メルト・ユアセルフ・ダウン、ジェイク・バグ・・・みかこさんお薦めのミュージシャンのアルバムを、目下、若干の懐古とともにヘビロテ中だ。

Lonely Hours

 背筋がぞわっとする。いい曲だ。

Eric Idle - "Always Look On The Bright Side Of Life" - STEREO HQ

♪Always look on the bright side of life♪
♪Always look on the light side of life♪

♪Life's a piece of shit♪
♪When you look at it♪
♪Life's a laugh and death's the joke, it's true♪

 Life's a piece of shit. 
 それでも、わたしたちは生きていく。

貧困層の子どもたちが集まるいわゆる「底辺託児所」保育士時代の珠玉のエッセイ。ゴシック文学的言葉を唱え人形を壊すレオ。「人生は一片のクソ」とつぶやくルーク。一言でわたしの心を蹴破ったアリス。貧窮、移民差別、DV。社会の歪みの中で育つ、破天荒で忘れがたい子どもたち。パンクスピリット溢れる初期作品。『アナキズム・イン・ザ・UK』の一部に大幅増補。映画・アルバム評、書評を収録。

目次
第1章 「底辺託児所」シリーズ誕生
フレンチ・ブランデー
Life Is A Piece Of Shit―人生は一片のクソ
子ども。という名の不都合
人が死ぬ
愛の減少感。預金残高も減少しているが ほか
第2章 映画評・書評・アルバム評
映画評
書評
アルバム評


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